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vol 12 「「ハーバード公衆衛生大学院留学体験記 その2」

医療ガバナンス学会 (2007年6月20日 15:52) | コメント(0) | トラックバック(0)

公衆衛生のプロフェッショナルの役割とは何か?」

                   石川 善樹

 
 

 本稿では、ハーバード公衆衛生大学院の紹介をしながら、「公衆衛生のプロフェッショナルの役割とは何か?」という大きなテーマの一端をご紹介したいと思います。

●ハーバード公衆衛生大学院

 1912年、ハーバード公衆衛生大学院は、米国初の公衆衛生を専門的にトレーニングする機関として発足しました。

 "Advance the public's health through learning, discovery, and communications"

 というミッションを掲げ、数多くの人材と研究成果を世に送り出してきました。特に教育機関としてのハーバード公衆衛生大学院は、US News and World Reportのランキングでも、Johns Hopkins大学と並び毎年上位に位置づけられるなど、高い評価を得てきました。


●学生のバックグランド

 ハーバード公衆衛生大学院では、約1,000名近い学生が日夜学んでおります。そのうち約60%の学生は、修士以上の学位を既に取得しており、その中の多くは、博士号(MD)を取得しています。僅かに約5%の学生のみが、学部からの直接入学であり、また約6%はメディカル・スクールの3年次を終えております。学生の平均年齢は32歳であり、約60%は女性、また約30%を占めるのは、世界40カ国を超える地域から集まった、国際色豊かな留学生達です。留学生の中で人数が多いのは、中国(28人)、カナダ(25人)、インド(23人)などで、日本人留学生は、年によって変動がありますが、約10人前後です。


●教育改革が進む、ハーバード公衆衛生大学院

 「・・・米国の歴史において、人々の健康を守り、推進するという理念が、これほど政府や人々の間で共感を得たことはない。コミュニティの健康を増進するために、我々は質が高く、よりよく教育された公衆衛生のプロフェッショナルが必要である。」

 2002年11月、IOM(Institute of Medicine)のCommittee on Assuring the Health of the Public in the 21st Centuryが出した上記の勧告は、ハーバード公衆衛生大学院だけでなく、米国における多くの公衆衛生大学院の教育方針を根本から見直しを迫るものでした。

 ハーバード公衆衛生大学院でも、研究職養成に偏りがちであった従来の教育の見直しがすすめられており、2008年度より、リーダーシップ教育に重点をおいた、新しい教育プログラムがスタートすることが予定されています。

 

●公衆衛生のプロフェッショナルの役割

 そもそも公衆衛生学とは、20世紀初頭、米国のウィンスローらによって臨床治療とは別に独立した学問体系と捉えられ、その考えはロックフェラー財団などの財政的援助を背景に、世界に広められました。公衆衛生学における対象者は「個人」ではなく、「集団」を対象とする点が臨床医学と異なり、また対象とする集団によって母子保健、産業保健などに分かれます。

 対象が広い分、公衆衛生のプロフェッショナルとして、対処しなければならない問題は数多くあります。この点に関して、2006年12月5日、ハーバード公衆衛生大学院で行われた特別講義で、K. Srinath Reddy氏が非常に興味深いエピソードを紹介しています。

 「それは心臓発作のように思えたが、何故X氏は45歳で亡くなったのか?1)」

 K. Srinath Reddy氏は、この思考実験に対して以下の様に答えます。

 「臨床医なら、急性心筋梗塞と診断するかもしれない。疾病分類学者なら、冠動脈性心疾患と公文書に記すかもしれない。疫学者ならタバコに言及するであろうし、社会学者なら死亡原因を教育や収入、機会やソーシャル・ネットワークにおける格差に言及するかもしれない。経済学者なら、国内あるいは国と国の間の所得格差をあげるかもしれない。公衆衛生のプロフェッショナルは、"全て"と答えるだろうし、全てに対して対処する必要がある1)」


●連載の構成

 本連載は、単なる留学体験記でもなく、また公衆衛生学についての詳細な解説を目的とするものでもありません。臨床医学を学んだ方に、公衆衛生に関する浅く広い知識を持っていただくことが目的です。連載の中では、主に以下の3点に着目し書いていきたいと思います。

1 公衆衛生とは何か?
2 公衆衛生が社会に果たす役割とは何か?
3 臨床医が公衆衛生を学ぶ意義は何か?

 浅くなりがちな内容については、本連載でご紹介する文献や、専門書を参考にされるよう、お願い申しあげます。

 ハーバード公衆衛生大学院日本人会HP:http://hsph.jp/about.htm

 参考文献
 1) Harvard Public Health NOW. January 5, 2007.


 著者紹介
 石川 善樹
 1981年2月27日 広島県生まれ
 東京大学医学部健康科学・看護学科卒業、
 同大学院医学系研究科修士課程修了
 2007年現在、ハーバード大学公衆衛生大学院留学中

 著書:「健康学習のすすめ」日本ヘルスサイエンスセンター

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