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Vol.251 「医師の勉強会」インフルエンサーも登壇…意外な講師の顔ぶれ

医療ガバナンス学会 (2020年12月17日 06:00)


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この原稿は幻冬舎ゴールドオンライン(10月31日配信)からの転載です。
https://gentosha-go.com/articles/-/29915

医療ガバナンス研究所
趙 天辰

2020年12月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●あえて「別分野の講師」を招く、医師の勉強会

現在、私は研究員として、医療ガバナンス研究所に所属している。そこでは、研究の傍ら、月2回ほどの勉強会の開催も担当している。「プラチナ勉強会」というものである。

プラチナ勉強会は、医療ガバナンス研究所の理事長である上昌広先生が、東京大学医科学研究所の特任教授に就任した際に、従来行ってきた「虎の門勉強会」を改名したものとなる。「プラチナ」という名前は、医科研の前にあるプラチナ通りからとったものである。

この勉強会は、記録を辿る限り2006年11月からずっと続いてきたもので、今年で10年以上の歴史を有する。私は2019年8月より事務担当を引き継ぎ、月に2回のペースで、2020年10月現在まで24回ほどの勉強会を開催してきた。

プラチナ勉強会は基本的に平日の夜に行われ、1時間半の講演、30分のディスカッションで構成される。また、勉強会が終われば会場を飲食店に移動して、希望者のみで懇親会を行ってきた。2020年新型コロナウイルスが流行して以来、オンライン開催などで懇親会を行えない回も何回か生じてしまったが、この勉強会+懇親会の流れは従来から変わっていない。

本稿では、勉強会を主催して得られた経験をもとに、なぜこのような会を開催するのか、なぜ勉強会という形式か、またその裏方での苦労やノウハウについて説明していきたい。

プラチナ勉強会では、様々な分野で活躍している人々を講師として招き、その方のご所属やご自身が抱えている問題や関心について双方向で語ることができるような会にしている。

テーマも講師の自由としているため、医学のみならず様々な分野に対する知識に触れることができる。今までの講師の一例として、各大学の教授、新聞社長、SNSインフルエンサー、ジャーナリスト、医師、国会議員、官僚、オリンピック内定選手などを招いてきた。

勉強会の参加者もその時々で様々で、プラチナ勉強会のメーリングリストに登録している医師を中心に、企業の方、弁護士、官僚、医学生などがいる。希望者は誰でも参加できるようなオープンな勉強会にしているため、この機会に興味を持った人はぜひ参加してほしいと思う。
●異分野間の交流が起こす「新しい化学反応」

勉強会を行う最大のメリットとして、私は様々な分野の人々が、お互いに交流できることにあると考える。1770年代、エジンバラで月一回、満月の晩に集まった会合がある。「月光協会(ルナー・ソサエティ)」と呼ばれるものである。

この会のメンバーとして、酸素の発見者であるプリストリー、蒸気機関の発明者であるワット、有名な陶芸家であるウェッジウッドなどがいる。その中心的存在は医師のエラズマス・ダーウィンで、進化論のチャールズ・ダーウィンの祖父である。こうした人々がお互いの研究・実験・調査結果や知識、見聞を活発に交換しながら、科学技術、製造、企業経営、公共事業、教育等様々な領域で大きな成果を生み出してきたといわれている。

プラチナ勉強会も、いわばこの「ルナー・ソサエティ」を目指すべきだと考えている。新しい思考を生み出すためには、同一分野の専門家を集めて議論するよりも、めいめいが別々のことを専門とする人々の方が知的創造力は上がるといわれている。できるだけ違った分野の人々と、勉強会で議論し、さらにお酒を交えた懇親会にまでもっていくことは、その人と仲良くなれる絶好の機会であり、新しい化学反応を生み出す場でもあると私は感じる。長い付き合いへと発展できるのである。

たとえば、ジャーナリストの鳥越俊太郎さんは春の勉強会の講師として来てくださり、その後もSNS上で交流を持ち続けている。また、競輪選手である新田祐大選手は夏に来てくださり、同じ福島出身であることで話が盛り上がり、福島でも同じことをしようと、今後の予定も立てている。

今年の11月7・8日、私が所属している医療ガバナンス研究所が主催するシンポジウム「現場からの医療改革推進協議会」が開催される。私も7日に発表することになっている。このようなシンポジウムに参加することにって、新しい人と知り合うことができ、勉強会の講師を見つける場にもつなげている。ネットワークを形成するには、いろんな場所での出会いを大切にしなければと思う。
●コロナ以降、急激に変わった「勉強会」の形

もちろん、このような勉強会を主催するにあたり、困難や苦労も少なからず存在する。今までで私を一番悩ませたのは、2020年から世界的に流行した新型コロナウイルスである。

それまでは、勉強会は基本的に現地会場に来て参加するものであり、オンライン開催という概念すら持っていなかった。しかし、日本でも4月7日に緊急事態宣言が発令され、人々が自粛ムードになる中、プラチナ勉強会を月2回、参加者を募って開催することは非常に困難になった。

そんな中Zoomをはじめとするオンラインツールが台頭し、いつしかミーティングや飲み会でさえオンラインで代替されるようになった。プラチナ勉強会ももちろん、例外ではない。Zoomツールを使おうと、有料会員にも登録した(無料会員だと1回のミーティングが40分までであるため)。

実際にオンラインで勉強会を開催してみて、最初はやはり一筋縄ではいかなかった。ほとんどの参加者がオンライン参加といっても、会場にも講師や、スタッフなどのメンバーが数人参加する。そのため、従来と比べて気に掛ける点がただ増えただけであったのだ。

会場で講師用のパソコン、参加者の席、配布資料などを準備する傍ら、Zoomに入ってくるオンライン参加者の承認もこなした。そこでZoomがうまくつながらないと、問い合わせが来るときはもう大パニックになる。もちろん、その都度手伝ってくれるスタッフや学生インターンも多くいる。自分がいっぱいいっぱいの時に仲間が助けてくれることは非常にうれしいことである。

また、質疑応答セッションもかなり労力がかかる。私は進行もしなければいけないため、違うZoomアカウントで参加する。同じ部屋にいるとハウリングが起こってしまうため、質疑応答時は必ず違う部屋に移動する。そうすると、会場の様子が分からなくなり、会場参加の質疑はまた他のスタッフにお手伝いしてもらわなければならない。何かいい方法はないかと、未だ模索中である。

また、講師の講演の音は聞き取りやすいが、会場全体の質問やディスカッションは聞き取りづらいと、初期のころは意見が多かった。その対策としては半径3~5mをカバーできるような会議スピーカーを買って対処した。このような会議用スピーカーもコロナ以降、便利なものがかなり多く出てきたと感じる。時代の変化である。

このようにして、少しずつではあるが、プラチナ勉強会は時代の流れに適したより良いものとなっていると実感している。
●勉強会がなければ得られなかった「ご縁」

私は現在、出身地である福島県でも週の半分働いている。福島県立医科大学放射線健康管理学講座の坪倉正治教授の元、講座研究員という役職である。6月21日に赴任したばかりであるが、プラチナ勉強会の経験をもとに、ここでも勉強会を月1回ほど開催しなければならないと考えてきた。

たくさんの関係者ご協力のもと、10月14日に初めてそれは大学院セミナーという形で実現された。記念すべき第1回の講師には、元財務事務次官である佐藤慎一さんに来ていただくことができた。

佐藤さんは、まさにプラチナ勉強会を通して知り合ったご縁である。彼が勉強会の聴衆として参加した際、懇親会でお話しさせて頂いて仲良くなれたからこそ、今回の福島にまで繋がったのである。

当日、今回の勉強会がきっかけで初めて福島に来たと本人に言われた。また、福島医大側でも、元財務事務次官ほどの方がセミナーの講師としていらっしゃることは貴重であると、参加者のほとんどが勉強会に大変満足していた。

福島に初めて来た佐藤さんは、勉強会後の懇親会で、11月に再度福島に来てくれると約束してくれた。ここでもやはり、懇親会の大切さを実感する。お酒を交えた会合では、どんな人とも一気に仲良くなれると感じている。佐藤さんが福島と定期的に交流を図ることになったことは今回の勉強会において最大の収穫ではないかと思う。

このように、まだ福島に来たことがない人々を、出身地である福島につなげること。それによって互いによりよい関係を築き、化学反応を起こすこと。自分が関わることができないような分野の専門家にも積極的に出会えること。これが東京と福島の2地域で働いている私だからこそ、勉強会をやらなければいけない使命であると感じている。

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