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Vol. 211「安心して産めない?!」川崎市議会に請願書を出しました

医療ガバナンス学会 (2010年6月16日 15:00)


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「クローバーの会」應家洋子
2010年6月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

稲田助産院は、多くの母親達に同じ目線で寄り添い、地域に密着し、暮らしのなかで命の大切さ教えてくれる場で、年間約180件以上の分娩を抱えておりました。出産したあとも不安なことがあると相談できる助産婦さんがいて、お母さん仲間が自然と集まる人気のお産場所です。
そんな稲田助産院で出産した母親たちのグループ「クローバーの会」が、どうして2010年3月に川崎市議会に請願書を提出することになったのか。

稲田助産院では、昨春、分娩予約が一切できない時期がありました。地域のお母さんの間では不安が広がりました。「稲田助産院は潰れるの?」「お腹の赤ちゃんは稲田助産院で産めないの?」
理由は、嘱託医が見つからなかったからでした。それまで契約関係にあった嘱託医が、分娩業務を取りやめることになったので、急遽、医療機関16件に依頼するも、いづれも不可能、断りの返事で無回答の病院もありました。新しい嘱託医が見つかるまで、分娩予約を一時打ち切る事態となったのです。

行政にも知らせなければと川崎市長、多摩区長、産科医師会、神奈川県産科婦人科医会、川崎市健康医療部地域医療課、オンブズマンなどに現状を知らせしました。でも、本当に聴く耳をもって聞いてくれる人がいないのです。市長の返事は「個々の民間事業所との契約事項に行政が係ることは難しいことにご理解お願いします」という、自助努力せよという冷徹な言葉です。各会派議員に「公開質問状」も送り、返答を求めたりもしました。

幸い、東京都立川市の産婦人科が受け入れてくださり、嘱託医となってくれましたが、私たちには疑問が残ります。
なぜ他の地域に頼って、わざわざ遠方の病院なのか? 目の前に市立病院、聖マリアンナ医科大学病院があるのに、嘱託医が立川の病院だと緊急搬送時に杏林大学病院や東京都の周産期ネットワークにお願いすることになる矛盾。なぜ川崎市の医療機関は受け入れをしてくれないのか? 小さいお産場所でも、医療機関と助産院が手を取り合うことができれば、大病院への集約化を防ぐことができるのではないか?多摩区に限っていうと、ここ数年でお産場所が6カ所から4カ所に減少しました。開業医2カ所、市立病院、助産院しかありません。市立病院で年間400件の出産数、助産院で180件ということは、助産院がつぶれたら近隣の病院がもっと混雑するのは目に見えているはずなのに。
根本的な産科医不足は全国的な問題でもあるけれど、個人の力ではもうどうにもならない。命に関わるこの問題は行政も立ち入って、解決していかなければいけないんじゃないかと疑問はますます膨らむばかりでした。

勉強会などを重ねるうち、分娩施設1カ所当たりの人口が全国平均35,000人に対して川崎市は45000人と施設にかかる負担が大きく産む所が少ないこと、救急搬送が川崎市はワースト1であることが分かりました(2008年東京都消防庁調べ)。東京都と横浜市では周産期ネットワークのなかに「助産院」の位置づけがあるのに川崎には見当たらない。横浜市ではお産場所をこれ以上減らさないように独自のネットワークを整備し、嘱託医を探している助産所と提携医療機関に奨励金として年間最大120万の助成を行う、潜在助産婦を掘り起こすセミナーを実施するなど、小さいお産場所を活用して守っていこうという姿勢が見られます。全国の出産件数のうち平均約1%が助産院出産に対し、川崎市の助産所は、5.1%(2009年県の調査)と横浜の2.6%よりも高いのに活用されていないことが浮き彫りになりました。
もう助産院だけの問題ではなく、これから妊娠する女性、家族すべての人達に知らせなくては安心安全に子どもを産めなくなってしまうことだと改めて気がつきました。

川崎市議会議員、全会派からの署名をもらい、請願書提出。それから賛同者を集めて健康福祉委員会が開催されるまで各議員へのロビー活動、審議会当日の追加のために署名活動。朝日、毎日、東京、神奈川新聞、タウンニュースなどマスコミなどで大きく取り上げてもらい、審議会を前に急遽、総合周産期ネットワーク検討会が開催されたことは大きく揺れ動いた一歩でした。
平成22年5月21日の健康福祉委員会の審議会では、傍聴席にはお母さんと子ども達でいっぱいにしようと総勢44名(うち子ども13名)。こんなに子どもがたくさん来たのは初めてだったようです。審議中、騒ぐとすぐ退室を繰り返し、言葉ではないプレッシャーを審議会参加者に与えながら、始まりました。まず最初に健康福祉局から川崎市における周産期医療の現状説明があり、議員が市側に質問回答。私たちがロビー活動して、資料説明した請願主旨を各議員さん達が訴えてくださり、質問してくださいました。特に局長は妊婦搬送の問題や産み場所の活用について、請願項目で定義された問題を重要視する発言を展開し、問題解決の意欲があることが分かりました。
「なぜ嘱託医、医療機関にならないか」といったアンケートを早急に実施し、回答結果から内容の検討、活用を分析して反映できるものがあれば実施していく方針とのこと。
2時間以上かけて審議の結果全会一致で「趣旨選択」となりました。この請願は5月31日から始まる本会議で審議をされ、6/17に採択されます。今後の動向に注目してください。

*くわしくは、「クローバーの会」のブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/CLOVERnoKai/

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