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Vol.095 感染症法等の緊急抜本再改正を行うべし

医療ガバナンス学会 (2021年5月20日 06:00)


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この原稿は塩崎やすひさ『やすひさの独り言』(5月3日配信)からの転載です。
https://www.y-shiozaki.or.jp/oneself/index.php?start=0&id=1358

衆議院議員
塩崎やすひさ

2021年5月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

昨日も、全国の新型コロナ感染症の新規感染者が6000人に迫り、第3波のピークの8割程度まで来ている。新規死亡者は、医療現場の頑張りのお陰様で、前回ピークの半分程度にとどまっているものの、それでも急増中だ。また変異株の影響か、重症者数は既に第3波ピーク並みだ。大阪府では、重症患者用病床数以上の重症患者数となり、十分な治療を得られないままお亡くなりになったり、自宅待機のまま急変して入院先が決まらないまま亡くなられるケースの報も聞く。今後の広範な医療崩壊が強く懸念され、とりわけ、関西圏のような深刻な事態が東京都でも起きかねず、早急な「有事対応」が必要だ。「平時の発想」では、最早乗り切れない。

4月25日から5月11日までの予定で始まった4都府県での緊急事態宣言や、わが愛媛県を含むまん延防止等特別措置につき、今週中には方針を決定しなければならないが、見通しは極めて厳しい。

緊急事態宣言発出を決定した23日(金)の記者会見において、総理は、容易に逼迫してしまうわが国の医療供給体制について、「医療関係者に対する政府の権限は、お願い、要請ベースでしかない。それが現実だ」としつつ、「国は病院に対し(コロナ患者を受け入れさせる)権限はない」と率直に認められた。さらに、緊急事態に対応できるための法改正が必要であることも、「痛切に感じています」と明言された。

その解決のためには、私たちが昨年6月の自民党行革本部提案(注1)や、10月の自民党コロナ本部ガバナンス小委提案(注2)、さらには本年1月に「感染症法改正の追加すべき主要条文案のイメージ」(1月29日、注3)、「『薄く、広く』から『選択と集中』へ」(1月30日、注4)などで訴えたように、感染症の有事に限っては、国が司令塔となる強力な指揮命令系統の下で都道府県が統一的な危機対応が可能な体制を構築するとともに、公衆衛生と地域医療(かかりつけ医)を有機的一体化して国民を守ることが必要不可欠だ。

そして、大学病院等、各病院の対応能力に応じたコロナ患者受け入れをし、医療崩壊を回避しなければならない。重症患者受け入れに関する、厚労省の余りにも遅い最新公表情報(何と、2月24日現在が最新の数字!)を見ても、相変わらず、「10人以上」の重症患者を受け入れている400床以上の大病院は、たった4病院しかない。「4人以下」しか受け入れていない400床以上の大病院が124病院もあり、非効率極まりない。

そのためには、厚労大臣と知事に重症患者等の受け入れ要請・命令権限等を司令塔として付与し、都道府県内に止まらず、広域調整可能な体制も構築し、整備すると同時に、重症患者受け入れなどの情報を積極的に公開するような医療崩壊が起きないしっかりとした体制整備を昨年秋の臨時国会や今通常国会で急ぎ成立させるべきだったと思う。

ましてや、今到来しつつある第4波を克服するために、法改正なくして確固たる体制は取れない。病院への「お願いベース」では、急増する重症患者への対応は全く不十分だからだ。同じ国会で同じ法律を改正しない、との「一事不再議」の考え方を克服し、第4波のピーク対応に間に合うよう、今国会での成立を期し、迅速な法改正をすべきだ。

しかし、4月23日の総理会見では、政府として今は目の前の緊急事態対応に専念すべきで、法改正を含む抜本改革は、「落ち着いたら、緊急事態の際の特別措置を作る」、すなわち「平時の時に法律を作る」との考えが示されたのだ。これでは事態が終わってから対処策を作る、ということになってしまい、遅過ぎ。救える命も救えない事となる事必至だ。是非、考え方を変えて頂きたい。

今は有事であり、コロナとの戦争中なのだ。いつまでも「平時の発想」のままで、この深刻さを増す「有事」を解決しようとしても、難しい。

例えば、これだけ変異株の中でも懸念が強まっている「インド株」への対応でも、インドが「変異株流行国」として追加指定されたのは4月28日であり、入国後3日間強制隔離・検査義務等を行う措置の施行は、5月1日0時からだったという。「有事」の対応としては、遅過ぎる。

目下の懸念材料の一つは変異株だが、私は「水際対策」が「平時の発想」のままであり、弱過ぎると考える。改善すべきは、第一に、現在検疫では昨年7月から検査結果判明までの待機時間が短縮できるとして「PCR検査」から「抗原定量検査」に切り替えてしまったが、現下の状況では見落としリスクを少しでも削減するため、早急により感度の高い「PCR検査」に戻すべきだ。第二は、「変異株流行国」からの入国者は「3日間隔離」の制度が始まっているが、残りの10日余りについて、実効性に欠く「自主隔離」ではなく、豪州、ニュージーランド並みに「14日間強制隔離」とし、PCR検査義務も1回から2回とすべきだ。第三に、陽性検体に対する全ゲノム解析については、新手の変異株の流入を阻止するためにはスピードと高品質解析が必要であり、感染研だけに任せることなく、大学医学部等との連携を強化し、水も漏らさぬ体制で、国家としての水際スクリーニングとサーベイランスを徹底すべきと思う。

事程左様に、一刻も早く本格的「有事」体制に移行し、救うことのできる命はしっかり救うべきだと、改めて強く感じる。
(注1)「自由民主党 行政改革推進本部 8チームの提言」(令和2年7月2日)

(注2)「新型コロナウイルス関連肺炎対策本部 感染症対策ガバナンス小委員会 提言」(令和2年10月6日)

(注3)「感染症法改正の追加すべき主要条文案のイメージ」(令和3年1月29日)

(注4)「『薄く、広く』から、『選択と集中』へ」(令和3年1月30日)

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