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Vol.107 このコロナ禍脱出の早道は、感染症ムラ解体に他ならない

医療ガバナンス学会 (2021年6月7日 06:00)


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伊沢二郎

2021年6月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

「三密回避・五本柱・七項目、語呂合わせ程度の発想か・・」

2020年度のGDPは▲4.6%となった。統計を取り初めて最悪と言われる。今年1-3月期実績から、四期全体は▲5.1%と更に悪化する見込みです。東アジアで新型コロナを抑え込んできた国々程、差は大きい。

よく分からないファクターXのおかげで、欧米に比べ感染者数は桁違いに少ないのに何故、三度も緊急事態宣言をしなければならないのだ。その上解除の見通しもままならない。
これ全て大甘な入国管理の上、抜本対策もせず無症状の感染者を野放しにし、足して二で割るような中途半端な対策に終始し続けた結果だ。

●この期に及んでも未だ、無症状の陽性者対策をやろうとしない感染症ムラ。オリンピック開催の為なら出来るのに・・・

先般、菅総理の緊急事態延長会見の折りに尾身茂・分科会会長は緊急事態中の対策七項目の一つとして、広島県での大規模検査結果を受け、体調不良が有る人に対して抗原検査キットを用いて検査すると、取って付けたように言った。この程度の対策で効果が有るなら、とっくにコロナ禍は終息していることだろう。

オリンピック時の感染対策として、毎日6万件のPCR検査をすると言う。民間機関を使うそうだが国が進めることだ、感染症ムラの人達は出来るのに何故やろうとしない。東京は民間検査数が多いと云う、都民に影響が無いとは言えない、これも医療資源の内枠だ。集められる医療従事は尚のことだ。

昨年10月分科会が、無症状者を対象にPCR検査をしてコロナ流行が抑制されたエビデンスは無いと表明した記憶がある。この考えの下にやって来た結果が、東アジアで最悪の1万2千名を超えるコロナ死亡者、2020年経済は前述の通りだ。改めて言う必要も無いが、これら全てが無症状者への検査が要ることの反面エビデンスだ。毎日6万件のPCR検査もエビデンスがないとかたずけられるのか。

この人達がどう考えようが、市中の無症状の感染者を見い出し保護しない限り感染の連鎖は止まらない、改めて証明するする必要も無い事だ。“自明の理”にエビデンスは要らない。昔から決まっていることだ。

●感染症ムラの人達のレベルが奈辺にあるかは分からぬが、少しは他に学ぼうとする気持を持ったらどうだ・・・

この“自明の理”をメディエコ研究開発株式会社 槇 和男氏が先般、本ガバナンス学会に投稿(Vol.088 )され数字を以て分かり易く説明してくれた。比較対象は従前から広範な検査をやっている北九州市・広島市と福岡市です。
その内容は、感染発症日・隔離(=陽性日)迄の日数・二次感染する確率の相関を、「発症日と二次感染した日数分布」により、「発症日から隔離する迄の日数」から二次感染確率の低減度合いが導かれる手法を用いて、既に公表されているデータを参考に解析し比較しています。

この手法で導かれた結果は、福岡市と広範なPCR検査をしている広島市それぞれの隔離迄の平均日数は、4.7日と3.7日となり再生産数の縮小比率は7%です。1.0を跨いで増えるか減るかの議論に在って影響は大きいのではないか。

福岡市と北九州市とでは隔離迄の平均日数は略同じだが、陽性者の中で無症状者の比率が高い為に再生産数は低下している、としています。これも北九州市が広範な検査により感染者を発症2~3日より前により多く捕捉出来ているか、元々不顕性の感染者を見いだしていると云うことでしょう。
投稿された槇 和男氏の言葉を借りれば、長期間の行動自粛は無理だがそれ同等の効果が期待できる。因って、不自由を押し付けることも、営業時短要請に係るコストも要らないと言うことだ。

この他にも広範な検査が要ることを示す調査結果が、世田谷モデルを指導する児玉龍彦・東京大学教授から報告された。(BS-TBS報道19:30出演時)
以前より世田谷区では児玉教授指導のもと、高齢者施設の利用者と従事者へのPCR検査を行っている、この中から78名の無症状の陽性者が見い出されているが、高齢者のスーパースプレッダーもいたそうです。更に驚くべきはミスト状(0.01ml)でも感染力を持つこのような人が35%もいたことです。
この人達は免疫により徐々にウィルスは生滅し陰性に向かうと言うが、その間にどれ程多くに感染することか。番組ではウィルス量に着目した感染対策を示唆している。

既にこのような考えを元に広範な検査を行っている鳥取県でのクラスター調査は、濃厚接触者に始まり周辺関係者へは、感染力が無いと判断できるウィルス量の人に至る迄ピックアップするとのこと。
そのような中先日、Ct値が11と云うスーパースプレッダーの更に外側に位置する感染者が見いだされた。しかしウィルス量に着目した広範な検査が奏功しクラスター発生には至ってないようだ。
これが感染症ムラがやっている後追いのクラスター調査に止まっていたとしたら、結果は火を見るよりも明らかだ。

以上三つの事例、これがコロナ禍を解決する為の科学的アプローチと云うことだ。

●平時はともかく、このコロナ禍の緊急事態に国民の健康を守ってこそ、その存在価値が有ると言える。感染症ムラはその最低限の責務を果たしていると言えるのか・・・

政治は結果だ。よく言われることだが、国民生活に直結する行政なら尚のことだ。
この緊急事態時、国民の近くでその任に当たる保健所は、責務を果たしていると言えるのか。

練馬区、わだ内科クリック 和田眞紀夫医師の投稿(Vol.089)は、眼前の紛れもないコロナ患者や家族の生死に係わる医師として、保健所の対応の不出来・不作為に怒りが収まらない様が文面を通して伝わってきました。

併せてこの投稿では行政検査を牛耳っていたいが為に民間を活かし切れず、その弊害として患者の保護が遅れ悪化するリスクに晒すことや、訴えに即応しないことを嫌い民間検査に片寄ることで、東京の感染実態が見えにくい傾向になっていると言います。それもこれもPCR検査を保健所ルートに絞った為だが、感染経路不明が多くなると手に負えないからと、肝心な疫学調査を早々に放棄する保健所長も出る始末だ。

この体たらくに危機感を覚えたのでしょう、身内であるはずの首都圏の保健所職員である保健師から、二度に渡り本ガバナンス学会に、クラスター調査のいい加減さを“虚構”とまで言い、内部告発文が寄せられている。
もちろんこれらの事に一般の担当者に責任は無い、住民ではなく感染症ムラ上層部しか見ない保健所長の責任です。

ただし住民の健康を守る為に奮闘する、西塚 至所長が率いる墨田区保健所のような善い保健所もあることを書き添えます。
雲泥の差とはこのような事を言うのでしょうが、善い保健所に隠れて“泥”の部分が見えにくいのが気になる。感染症ムラの方針を体現しているのが保健所で在るが、対応の酷さ故の弊害は住民が被る。人災を呈するこの様、メディアが伝えるべき視点ではないのか、メディアの責任ではないのか。

●感染症ムラの人達よ、自ら招いた政策の失敗の大きさに慄き、責任を痛感しないのか・・・

ワクチンは出来たがもう既に、効果が減退すると言われる二重変異株が出現している。二重があるなら三重、四重の変異を言う専門家もいる。
上 昌広先生は遅々として進まないワクチン接種の進捗が、新たな変異株を生む可能性に触れています。(週刊朝日)
抗生物質や抗がん剤を使った治療では、一気にやらないと耐性を獲得したウィルスが出現することは、良く知られているとのことです。
その矢先(5/23)、ネットニュースがイギリス・フランスで新たな変異株が出現したことを伝えている。ワクチン接種進行中に在って、変異の早さには驚くばかりだ。
ワクチンは出来ても不確定要素が尽きない限り有効な治療薬が登場する迄、やるべき事はそう変わらないのではないか。

三波迄は従順な国民性により何とか感染爆発を起こさずに済んだがこれからは、変異が先かワクチン開発が先かの闘いになるのだろうから、今まで以上の広範な疫学調査は必須だ。

このコロナ禍は厚生・薬事行政の至らなさを浮き彫りにした。一般社団法人 医療法務研究協会 平田二朗副理事長はこの事について投稿(Vol.087)された。この一年数ヵ月、何故PCR検査を増やそうとしないのか・何故世界に冠たる日本の医療が逼迫したか・何故ワクチン開発が後れを取ったかや、今後の対応の要点について分かり易く解説してくれている。

「医師免許とは言うものの臨床経験を積んでこその医師であり、その研鑽は医師を終える迄続くことでしょう。我々から見てお医者様、とはそう云う方々のことです。医系技官などと云う、アクセサリー程度の医師資格の者が感染症に携わった結果、公衆衛生の問題に止められず、入院さえもできずに亡くなる方を出す程に医療を逼迫させ、1万2千名を超える死亡者を出した。それもこれも感染症ムラに、予算や研究費に名を代えた村益を生む、行政検査という楯を守らんが為の行為のなれの果てだ」この提言を読んだ一番の感想です。

おこがましくも更に言わせて頂ければ、この村益とは性格は異なりますが、厚生・薬事行政を一貫するコスト第一主義。国の利益にはなっても国民には不利益になってはいないか。
報道ベースではあるがこのコロナ禍、日本と欧米各国の医療への国の直接或いは間接的関与の違いを見ることになった。
やり方は色々であろうが、医療は“公共の財産”の視点が在って然るべき。この投稿から感じたもう一つです。

何れかの時期に民間調査会によりコロナ禍全体の総括が為されることでしょうが、調査会の皆さんには総括とも言えるこの提言に是非着目して頂きたいと思う次第です。

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