医療ガバナンス学会 (2021年12月8日 06:00)
秋田大学医学部医学科5年
鈴木智也
2021年12月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
そのような経歴の私が医学部入学以来、医学教育の特殊さを受け入れられず、疑問を抱いてきました。それがきっかけとなり、この度「現場からの医療改革推進協議会第16回シンポジウム」の医学教育部門で5分間、「ここがヘンだよ、医学教育」というタイトルで発表しました。内容は医学部編入して以来抱いている医学教育への疑問と医療ガバナンス研究所で書いている論文の概要についてです。貴重な機会をくださった医療ガバナンス研究所関係者の皆様にはもう一度感謝申し上げます。その感謝の意味も込めて、こちらのMRICでは秋田大学の医学教育に関して、個人的に魅力だと思っており、かつ、世間的にはあまり知られていないことをお伝えしたいと思っております。
結論を先に申しますと、秋田大学の進級試験は「統一試験」という名の試験で、学期の全ての科目が一冊にまとまって、6割クリアすればいい制度になっております。例えば、一冊275問中、神経内科が15問、脳外科が15問といった形式です。そして、最大のメリットは神経内科が0点でも、合計で6割あれば進級できるということです。実際に、秋田大学では神経内科の試験が鬼門と言われており、優秀な方でも点数が取りにくいと言われているため、私も優先順位を決めて、ほぼ勉強しませんでした。これが講座別の進級試験であれば、留年していたと思います。東北地方だと、あくまでも噂ですがH大学やY大学など1~2人の厳しい教授の試験に落ちたため、20~30人留年するという噂を聞いたことがあります。秋田大学もかつてはそういう時代があったそうですが、統一試験が導入されて以来、あり得ません。ユニークだとは思いませんか?
また、教員が作成した試験問題も、試験担当の教員が目を通し、悪問、難問、良問など、正答率などすべてデータ化し、問題作成側にフィードバックされています。更に、学生が問題の間違いを探して、意義を申し立てる制度「疑義申請」という制度もあります。実際に、私や仲の良い友人が3年時の試験(17科目、275問)に落ちそうになったとき、疑義申請を仲間と協力して「30問」作成しました。私がかつて得てきた人脈、事務能力、コミュニケーション能力を総動員させて、勝手に暫定的に「疑義委員会」を作成し、各講座に突撃して「この問題はおかしいから、疑義申請しますが、疑義を許可してください、お願いします」という流れで頭をさげて周りました。その結果、私も友人も点数がアップし、無事進級しました。医学部ではコミュニケーション能力とネットワークが大事ということを学びました。
この「統一試験」ですが、もちろんデメリットもあります。それは、科目への好き嫌いや理解度にばらつきが生じるという点です。実際、私は神経内科をよく理解せず、今に至ります。確かに当時は勉強しませんでしたが、今は当時勉強しなかったから、勉強しなければならないという危機感を抱いており、むしろ積極的に予備校講座等で勉強しようと思っております。
以上、長々と秋田大学医学部のユニークな試験制度「統一試験」について、私の実体験をもとに紹介させていただきました。この試験制度は他の大学ではあまり聞かないので、ユニークな制度なのではないでしょうか?私は一般受験について詳しくないのですが、どうやら秋田大学は偏差値的には入りやすいと言われております。ですが、入ってからの進級や国家試験合格率もトップクラスです。これには秋田大学医学部の上層部の方々の学生への思いやりから来ております。秋田は辺鄙だ、雪が大変だ、などと世間的には思われているかもしれません。しかし、意外と秋田大学は全国の地方大学にしては立地もよく、卒業後の進路も様々で、地域に残れという圧力を感じたことはありません。
他大学の皆さんは、ご自身の大学はいかがですか?また、高校生の皆さんも読まれているなら、是非秋田大学の受験を検討してみてはいかがでしょうか?秋田は素敵な地域でもありますが、一方で少子高齢化、自殺、低賃金など、日本の課題が詰まっており、そういう意味でも6年間、都会の大学よりは現場での学びが深まると思います。
秋田大学医学部医学科について、もし何か質問等ありましたら遠慮なくご連絡ください。