最新記事一覧

Vol.22005 コロナ感染者の急増に伴って、社会の動きを止めないためのコロナ対策の抜本的な見直しが今求められている

医療ガバナンス学会 (2022年1月11日 06:00)


■ 関連タグ

わだ内科クリニック
和田眞紀夫

2022年1月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

1.アメリアはコロナ感染者の隔離期間を短縮した

現在アメリカではあまりにも急激にコロナ感染者が増大してしまって、病気の治療ばかりでなく感染者と濃厚接触者の隔離義務のために働き手が不足するという事態に直面している。特に医療現場や航空関連、その他企業への影響は甚大で、社会を動かしていくことが難しくなってきた。そのためCDC(疾病対策センター)はコロナ罹患後の隔離期間を10日から5日間に短縮する決定を行った(12月27日)。ほかの人に最も感染させやすいのは症状が出る1-2日前から発症後2-3日というデータがあり、発症後5日間隔離すれば感染の90%を防ぐことができるという科学的な根拠に基づいている。付帯条件としては、始めから無症状か、症状があっても5日目の時点で症状がなくなっていること(熱が出ていたら解熱して24時間以上経過、嗅覚味覚異常などの症状は除外)と、隔離解除後も5日間はマスクを装着することなどが求められている。
https://www.cdc.gov/media/releases/2021/s1227-isolation-quarantine-guidance.html

ただしこの決定に対しては異を唱える専門家もいて、この基準変更が感染拡大を助長しないという保証はなく、5日目に迅速コロナ抗原検査で陰性であることを必須条件に加えるべきだと主張しているが、抗原検査キットの不足の問題が起きているために条件から除外された経緯がある。それでも特に医療関係者などで重篤な合併症のある患者さんと接する機会がある場合などは抗原検査での陰性を確認することが望ましいとされている。
https://jp.reuters.com/article/analysis-covid-us-idJPKBN2J9056?rpc=122

さらに濃厚接触者の隔離は原則的には必要なしとされている。ただし、コロナワクチンの接種をしていないか、接種を受けていても2回目の接種から6か月以上経過していてブースター接種を受けていない場合は5日間の隔離が必要である。付帯条件として、これらの条件の如何に関わらず、濃厚接触者は10日間のマスク着用が必要なことと、5日目に抗原検査で陰性確認をすることが望ましいとしている。

2.働き手の不足が早くも日本で起き始めている

年が明けてから日本中にコロナ感染が急拡大する様相を呈している。特に沖縄県での感染拡大は爆発的であり早くも医療従事者の不足が問題になり始めた。
1月8日の時点では1日の感染者数は1700人を超えているが、沖縄県では1万人以上の医療関係者がすでにブースターワクチン接種を終えているにも関わらず、重点医療機関など21の医療機関でのブレイクスルー感染などにより437人の医療従事者が欠勤している。スタッフ不足のために病棟を封鎖したり、一般外来の制限や手術の延期、救急部門の一部停止などの医療逼迫が起こり始めているとの報道があった。沖縄での感染主体はオミクロン株に置き換わっていて、医療従事者のブレイクスルー感染例が多いということはいかにこのオミクロン株の感染力が強いかということを物語っている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/77ef7a0a5869d4a155ba690b0d7e086881e0b2cf
https://news.yahoo.co.jp/articles/300a091f4b262610da575ada94cf517312535b99
https://news.yahoo.co.jp/articles/3b3d308dbef1f9e78e963a128fb5dd3e2bbdeca8

3.オミクロン株の感染性について感染研が速報で報告した(1月5日)

オミクロン株の感染者は1月4日の時点で全例入院措置が取られ、退院基準も厳格に規定されていて、PCRもしくは抗原検査で連続2回陰性とならなければ退院できない規定となっていた(1月5日に基準を緩和)。このため国立感染研は12月22日までに確認されたオミクロン株感染例21例におけるウイルス排出期間を明らかにする目的で、経時的にリアルタイムRT-PCR(原文)およびウイルス分離試験で追跡して解析をおこなった。21例の内訳では驚くことにワクチン未接種の未成年者2例を除けばそれ以外のすべてが2回のワクチン接種を受けているブレイクスルー感染であることだ(さらにこのうちの2人はブースター接種も受けていた)。無症状は4例と少なく、残りの17例は軽症ながら症状がある症例だった(ただし、2回目のワクチン接種から6か月以上経過しているかどうかの記載はない)。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/10880-covid19-66.html

解析結果では診断日および発症日のどちらから起算しても10日以降はウイルスが分離されず感染性がないという結果だったが、PCR検査では14日以降でもRNAが検出された。この結果はオミクロン株以前のコロナ感染の特徴と大きな変わりはない。注目すべきは診断後7日以上経過した時点(「7-9日目」のグループ)でウイルスが分離されたのは2例(11%)のみであったことだ。つまり89%の症例ではウイルスが分離されるのは6日目までということになる(「3-6日目」を同一グループとして解析しているので、5日目を境にした統計は不明)。この結果は「感染の成立は5日目までで90%」というCDCのデータとほぼ一致している。

4.社会の動きを止めないためのコロナ対策の抜本的な見直しが必要

日本ではオミクロン株が出現してもなお2年前と何ら変わらない、思考停止のコロナ対策が漫然と繰り返されている。市中感染が明らかになったらその時点で厳しい検疫は意味がなくなり、検査で確定された感染者は氷山の一角でしかなく、そのような感染者の一部に対してだけ入院隔離政策を徹底しても焼け石に水だ。しかも早くも入院隔離のキャパシティーがなくなる見通しで、それを理由に宿泊施設や自宅隔離にシフトせざるを得なくなっているのが現状だ。感染者が爆発的に増えてしまった段階では、罹患者には必要最低限の期間だけ自宅待機をしてもらえばいいし、症状のない濃厚接触者まで長い期間拘束して社会活動を抑制しなければいけない理由はどこにもない。日本でも感染者および濃厚接触者の隔離期間を短縮することを考慮すべき段階に来ているのではなかろうか。可能であるならば迅速抗原キットの増産や市販キットの認証を急いで、検査が陰性であったものから隔離を解除したらいい。

これからのコロナ対策で大事なことは検査を受けたい人がスムーズに検査を受けられ、診察や入院が必要な人が速やかに医療の恩恵を得られるようにすることで、医療体制の整備の必要性が叫ばれているのに一向に改革する気配がない。また、国民の行動規制を強化してもそれで得られるものは少ないことを認識すべきだ。感染経路の主体は家族、友人、職場の同僚であって、飲食店での感染の割合はむしろ少ないことがわかってきているにも関わらず、家族や友人との接触や職場の同僚との接触を断つような指示は出せないから、行政として規制できる唯一の対象として飲食店が規制の集中攻撃を浴びているのが今の状況だ。

また、コロナが流行し始めた当初、多くの高齢者が命を落としたが、その半数以上が高齢者施設や医療施設等に入所・入院している人達だった。現在これらの施設でほとんどクラスターが発生していないことが重症・死亡者が少ない理由の一つであって、何もウイルス毒性の変化だけで議論するのは片手落ちだ。若年層ではほとんどが無症状か軽症で、重症化するのは高齢者(および疾病を抱えてるひと)であるということは今に始まったことではない。

若年層は普通の経済活動に戻って、インフルエンザに対する対応(発症後5日間の自宅待機)と同様にひとたび感染した場合は検査で確認して最低限の自粛をするという構図にしたらいいし、そのためにも検査体制のさらなる拡充を図ることが絶対条件となる。長く検査ができない状態が続いたために検査をしないことに慣らされてしまっていたり、強い隔離政策が検査を受けるモチベーションを低下させていることも大きな問題で、このことに対する改善策が必要だ。大切なことは肝となるポイント(高齢施設への感染を防ぐ対策~ブースター接種、入所者・スタッフのルーチン検査)だけは怠りなく励行することだ。

社会の動きを止めないためのコロナ対策の抜本的な見直しが今求められている。

MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ