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Vol.22077 ロシアのウクライナ侵攻と日本のコロナ対策における国民行動に見える類似性の恐ろしさ

医療ガバナンス学会 (2022年4月11日 06:00)


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東京理科大学基礎工学部名誉教授
山登一郎

2022年4月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

今コロナ第七波か、と騒がれている。BA.2への置き換わりによると喧伝される。しかし、これまでも政府自治体専門家報道たちはその不作為を誤魔化すために、デルタ株、オミクロン株そしてBA.2亜種などに責任を押しつけてきた。毎回同じことに見える。

どんな不作為なのか。日本では、ずっと検査及びマスの療養施設準備をサボってきた。本メルマガ上、何度も繰り返して、日本のコロナ対策における市中感染状況情報の収集開示不備を批判してきた。
2月24日プーチン・ロシアのウクライナ侵攻に際し、的確詳細な情報開示が最も重要であることが示されたと思う。現戦況は予断を許さないが、ウクライナ側の即時詳細な情報公開に、国内国際社会は敏感に反応している。国際社会からのロシア排除傾向は加速されている。
3月17日Vol.22061で、その素晴らしいウクライナの情報公開と比較して、日本のコロナ対策における検査情報公開の不備を批判指摘した。ここでまた同じことの繰り返しだが、再度その不備とそれに対する日本国民の反応の鈍さを批判する。

ウクライナによる戦況情報の詳細な公開はご存じのことと思う。一方、ロシアでは国内の情報統制により、SNSやインターネットへの接続も制限され、国民の多くは国営放送の政府発表情報だけにしか触れることができないために、政府見解を信じてしまっていると報道されている。そのため、4月6日ブチャの惨劇報道に対して示す国際社会の大きな衝撃と反対大合唱とは対照的に、何とロシア国内の世論調査では80%がプーチンのウクライナ侵攻支持だとか。

さて日本のコロナ対策における検査体制を再確認しておく。ご存じの方はスルーして下さい。
一昨年の当初は37.5度以上4日以上発熱で保健所に連絡して受検できた。その受検制限は批判され、発熱外来などで医師に相談して保険適用検査を受けられるようになった。それら検査陽性者周りの濃厚接触者も定義され、彼らは保健所が検査した。以上の各種検査結果が厚労省発表の日々の公表新規感染者数情報として公開されている。
一昨年6月第一波が終わり、夏前にはJリーグやプロ野球などでのPCR検査が認められ、それぞれの競技がスタートした。その検査陽性者は、上記保健所経由の行政・保険適用検査を再受検して陽性確定される。こうした非感染・無症状者対象の検査は民間検査として有償だ。その後こうした民間自費検査は高齢者施設などでも広く行われるようになった。また一昨年12月には、一般市民に対しても市中民間自費検査センターがスタートして、多くの市中一般人が陰性確認のために受検するようになった。ただし、これら民間自費検査の検査結果、検査数も陽性者数も陽性率もどこにも収集されず、公開もされなかった。

一昨年の暮れから昨年の正月の第3波急増に際し、この民間自費検査情報が“見えない化”されていることに気付き、各所に訴えて批判した。しかしどこも取りあげなかった。そこで本メルマガ2021年4月12日Vol.069&070にそのことを訴えた。それ以降度々本メルマガで、この同じこと、つまり市中感染状況を知るための民間自費検査情報の収集公開を訴えた。
公表新規感染者数は上記説明のように、基本的には発熱有症者を中心とした陽性者数を示す。ところがこのコロナ感染では、無症状者が多いことも当初から知られていた。その無症状者は本人に症状が出なくとも、感染拡大させることが知られ、隔離されるべきとされる。そうした市中無症状者も特定するため、欧米や韓国などでは“誰でもどこでもいつでも”検査を街中で行っている。それらすべての検査結果である検査件数、陽性者数などを公開している。これで国民一人一人が、市中ではどの程度の感染者がいるのか、感染状況を把握できる。ところが日本ではその情報がないのだ。

昨年末オミクロン株への置き換わりで感染拡大し、マン延防止等重点措置が発令された。政府はその際市中無症状者対象無料PCR検査を行うと発表、暮れから大阪や東京でスタートした。やっと市中無症状者の無料検査が始まった。その陽性率は正月には大阪6%、東京3%と報告された。丁度都で1万人程度の公表新規感染者数の時で、14百万人人口の3%、40万人の市中無症状感染者の存在が推定された。ところが1月末には検査資材の不足が言われ、検査をしないでも濃厚接触者への医師の診察だけで陽性確定するという“みなし陽性”もスタートし、厚労省も当初検査情報収集体制の放棄を宣言することになってしまった。そして無症状者対象無料検査情報も結局意味のないものになってしまった。3月末には当のマン延防止等も全面解除され、無料検査も停止状態である。

日本では、情報統制もされていない。ネットを通じて、欧米や韓国の検査体制もそこでの検査結果にもアクセス可能である。もちろんコロナでは無症状感染者がいることも当初から知られている。そして、日本では行政・保険適用検査の結果だけを公表新規感染者数情報として公開していることも知られている。結局市中無症状感染者の検査も積極的に行わず、その検査結果である市中無症状者の感染状況情報が収集も公開もされていないことも知っていることになっている。国民はそれでいいのか?
市中の感染状況は結局明らかにされていない。それでどうしてどんなコロナ対策を打てるというのだろうか。国民も、自らの行動を律するに、何を根拠に行おうというのだろうか。
検査体制を提案したのは、厚労省や専門家・分科会などだ。もし国民の健康を第一に考えたなら、当然市中感染状況の時々刻々の詳細な情報を収集公開すべきと期待する。何故そのような情報収集公開をサボり、市中無症状者感染状況を隠蔽しようとするのか、何らかの意図があるのか分からない。ただ、その収集不作為の説明もずっとされないまま3年にもなろうとしている。
ある分科会メンバーは、感染者の3割が無症状者だとの報告があり、一方公表新規感染者数のうちの3割程度が濃厚接触者からの陽性判明者であることから、まるで公表新規感染者数で日々の有症無症すべての新規感染者を網羅しているが如き説明をする(2021年8月31日、Vol.167)。そんなデタラメを誰が信じるのか。丁度今般、ロシア高官がブチャ惨殺現場動画をウクライナの演出でフェイクだと主張するのに重なって見える。あのメンバーは本当にそう信じているのか。まるで戦中の御用学者に重なる。

ロシアにおいて、ロシア国民がウクライナで行われている現実を知らずにプーチンの暴挙を支持しているらしいと日本人の多くは批判するようだ。でもロシアでは情報統制で、ウクライナの情報を入手するには、ロシア国民は相当の努力を払わなければならないのが現状だと推察する。
日本では情報統制はない。諸外国の状況にもフリーにアクセスできる。各種情報を入手も可能だ。でも上に述べたように、日本では市中感染状況は分からないままだ。そのことに、日本の政府自治体報道国民がほとんど全く注意を払わない。もちろん厚労省なり感染症専門家が何らかの意図で隠しているというのなら、その説明を是非聴きたいと思う。そして国民がこの自由な日本で、厚労省の提案する不備な検査制度を易々と信じ、何の疑いも持たずに従っていることが、ロシア国民の状況よりもずっと危ないのではないかという大きな危機感を持っている。あの太平洋戦争の戦前戦中、参謀本部・大本営支持の一億総玉砕の叫びをまた聞いてしまうことになるのではないかと恐ろしい。

日本のコロナ流行では、失う必要のなかった多くの命・健康、医療従事者等の逼迫状態、緊急事態宣言などによる国民の自由の制限・経済的損失、補償や医療などにおける税金の無駄遣いなどなど、的確な情報の非収集・非開示のために、国民は多大なる被害を被った。
是非自由とは何か、民主主義とは何かをしっかり考え、目を見開いて欲しいと願う。ロシア国民と同様な状況に陥っていないか、心配だ。情報統制も無くネットアクセスも自由なのに、厚労省の今般の情報操作により、戦中の言論統制時と同様な状況に丸め込まれているように思えて恐ろしい。21世紀の国民はもっと自由で平等なヒトを目指すべきだと期待する。
目を見開いて真実を見いだして欲しい。見いだせたなら、口を閉ざさず、声を上げ続けて欲しい。プーチンやその指導層にはロシア国民の指導を任せられないと思う方が世界中大多数だと思う。日本でもそれと同じことが言えるようだ。現在の厚労省分科会専門家報道がコロナ対策の中心に居座り続けるべきではないと、国民の多くに早く気づいて欲しいと願う。

 

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