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Vol.22097 「医師の働き方改革」を正しく理解していない病院管理者の廃業を勧める

医療ガバナンス学会 (2022年5月16日 06:00)


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一般社団法人全国医師連盟理事
中島恒夫

2022年5月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

日本病院協会は、2021年9月18日の理事会で「宿日直許可」について議論した。相澤孝夫会長は「宿日直許可が認められるか、地域によって差があるようだ。許可が出ないと地域の救急医療、産科医療など人数が厳しいところは医療崩壊が起こるのではないかという不安の声も出た」と、同年9月21日の記者会見で述べたと報じられた(https://www.m3.com/news/iryoishin/967034?category=report)。

はっきり言おう。「何を、今さら!」である。

働き方改革関連法案が2019年から施行された。病医院では非医師職員に「働き方改革」が導入された。医師に関しては5年間もの猶予を設けてもらいながら、何もしてこなかった怠慢の結果が、上述の「体たらく」である。
この猶予期間中に病院管理者が画策していたことは、

「自分の病院が潰れると困るので、今の働き方は最低ライン」
「何もしないのは問題なので、問題を先送りにしよう」
「現状は「働き方改革的に問題」なので、現状を合法化させよう」

ということだった。
その断末魔が、四病協から厚生労働大臣に提出された「医師の働き方改革に関する要望書」(https://www.hospital.or.jp/pdf/06_20220318_01.pdf)だ。その冒頭部分で、

「医師の宿日直には、一般業種とは異なり、
(1)救急外来、入院患者対応といった気を張り詰めた業務が一定程度発生する、
(2)宿日直中であっても、応招義務があるため対応しなければならない、
(3)多くの医療機関が自院の医師だけでは対応できず大学病院からの応援に依存している、という特殊性があります。」

と記しており、(1)宿日直許可の対象外である通常業務があると自ら矛盾を晒している、(2)応招義務を理解していない、(3)医師の絶対数不足を否定してきた自分たちの主張との祖語を意に介していない。

そして、要望事項の中には、

「各々の医師について、宿直時の睡眠時間が十分でない日(例えば、睡眠時間が6時間程度に満たない日)が月に5日以内であれば宿日直許可を認めていただきたい。」
「地域医療提供体制を維持するために、医療機関における各医師の宿日直について、宿直を月8回、日直を月4回まで許可を認めていただきたい。」
「上記の宿日直回数については、他の医療機関に宿日直の応援に行く医師の場合、派遣元と応援先の宿日直回数をそれぞれ分けて取り扱うこととしていただきたい。」
「各々の医師の連日の宿日直について許可を認めていただきたい。」

と記している。これらは、

・各医師月8回の当直のうち5回が徹夜でも3回が6時間睡眠であれば宿直許可を得たい。
・2か所の宿日直許可がある施設で勤務する場合、月16回までの宿直、月8回までの日直を可としたい。
3か所以上なら毎日でも可。
・6名以上で30日の一人当直を行うと、各自の当直回数が5日以内となり、毎回徹夜でも宿日直許可を得たい。

という主張であり、宿日直または明けの日でない日がほとんど無くなるということである。すなわち、現状をさらに悪化させる要望だ。

しかも、この要望書の末尾には、

4.罰則規定の取扱い
許可基準を見直したとしても、現状では、全国の医療機関が新型コロナウイルス対応に全力であたっており、働き方改革に取り組める状況にないことから、時間外労働の上限規制の罰則適用を数年猶予いただくようお願いしたい。

と、過去および現在も罪を犯していることを自白し、この後に及んで犯罪行為をこれからも見逃すように要望している。
すなわち、この要望書は、四病協団体が医師の働き方改革の最大の抵抗者であることの表れである。

そもそも、宿日直許可の何たるかを全く理解していない病院管理者が多すぎる。全国自治体協議会は4月21日の記者会見で、全国の自治体病院の約3割が宿日直許可を取得しておらず、その半数が「許可が取れない」と回答していることを公表した。その上、「宿日直許可基準の運用を厳格に進めると、各地域で救急指定病院の返上、救急患者の拒否が生じ、地域崩壊につながりかねない。」と無知極まりない発言を堂々と述べている(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t301/202205/574905.html)。

このような犯罪者集団である病院管理者団体の代弁者の本音をハッキリ言えば、「労働基準法違反を前提にしなければ病院を経営できない」ということだ。それであれば、病院管理者はそのツケを自分の病院の勤務医に負わせるのではなく、行政に対してぶつけるのが「筋」である。病院管理者団体が最初にすべきことは、厚生労働省(以下、厚労省)にこれまでの失政を認めさせ、謝罪させることだ。
厚労省の様々な検討会では、「医師という貴重な人材を使い潰してでも、現状を何とか維持させたい」という発言が非常に多い。貴重な人材である勤務医や次世代を支える若手医師を守ることを、誰も真剣に考えていない。医師数が絶対的に不足している現状で、人材を使い潰す選択肢を提示すること自体が無謀であるのは、誰の目にも明らかだ。

「現状は致し方ない」という結論から離れられない病院管理者は、病院経営の資質が欠落していると自白している。一般的な会社経営者であれば、「法律違反を前提としなければ経営ができない」状態になる前に策を講じる。現状を容認する発言しかできない病院管理者による議論は、時間の無駄だ。厚労省や病院管理者がこれまでの非を認めず、法を捻じ曲げ、同じ失敗を何度も繰り返し、その失敗のツケを勤務医に負わせることは、責任のない人に責任を押し付けるイジメでしかない。

「医師の働き方改革は、病院管理者の働かせ方改革」であると私は何度も主張してきた。勤務医の働き方改革で本当に必要とされる人材は、効率的かつ効果的に病院を経営でき、少ない医師数で実現可能な医療提供体制への改革ができる病院管理者だ。労働集約型ビジネスである病院経営で、働き方改革に最も効果的、かつ重要な手は、病院マネジメントについての抜本的な法改正である。その中でも人材管理や労務管理は最重要課題だ。自ら変わろうとしない病院管理者に、医師の働き方改革ができない理由がそこにある。
このような病院管理者たちが廃業することこそが、医師の働き方改革を最も促進できる。そこで、私は病院管理者の資格制度の創設を提言した(https://www.m3.com/news/iryoishin/1042834)。ご参考にしていただければと考える。

最後にもう一度言う。「医師の働き方改革」を正しく理解していない病院管理者には、廃業を勧める。

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