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Vol.22110 形式だけの保健所立ち入り検査:知床遊覧船事故と被る実態

医療ガバナンス学会 (2022年6月2日 06:00)


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某保健所長

2022年6月2日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

今、乗客の安全性という発想が無いを通り過ぎて、悪質とも言える遊覧船会社の体質が問題になっているが、それを野放しにする国の検査のあり方はどうなんだろうか。前もって通告した日時にやって来て、書類検査だけでしっかりした確認もせずに、「問題なし」のお墨付きさえ与えてしまっている。

実は、この構図は医療現場にも当てはまる。病院は一年に一回、保健所による医療機関立入検査(医療監視)を受け「ちゃんとした医療を行なっているのか」がチェックされている。しかし、実態は書類検査が主であり、上記の国交省の形骸化した書類だけの検査となんら変わることはない。しかも、同様にいつ立入検査があるか前もって通知してあるのだ。よって、現場経験のない保健所職員が重箱の隅をつつくような書類検査だけで終わらせているのが実情だ。ここにあるのは、実臨床からは程遠いような、書類をきちんと整えているかどうかであり、患者のための医療という本質の視点は見られない。しかも、病院の規模や地域医療での立ち位置も考慮されていない。病院の内情を公に見ることができる、実際の医療を調べられる唯一のチャンスであるにも関わらず、、、例えば、感染症のマニュアルはきちんとしているか、何処に置いてあるか、毎年改訂しているか、その会議や研修の記録は、参加メンバーは、、、

この立入検査の問題は、新型コロナウイルス感染症で明らかになった。精神病院で感染者が出ると、日頃からの実効性ある感染対策がなされていないため、瞬く間に感染者が広がり、医者がいるのにも関わらず、感染対応ができない、というかやろうとしない。感染者をコロナ受け入れ病院にただ丸投げするだけ。これは、老人病院や高齢者施設でも同様。感染対策を書類だけに頼る今の監視のあり方の限界を示す結果となった。もちろん、きちんと感染対策を日頃からやっている病院等もある。しかし、やってないに等しい病院が立入検査の名の下に、やっているとお墨付きを与えられている。

このような病院等に新型コロナウイルスが入り込むと、意識が低いためか、かなり広がってからしか対応がとられない。しかも、その状況でクラスター対策チーム(実際は外部の感染管理看護師一人)を派遣しても、効果は望めない。日頃からの対策がとられていない病院等では、基本がなってないため一から感染症対策を指導しなければならず、「なんでこんなことが、、、」の連続だからである。

あらかじめ予告していた日時に書類だけ揃えれば良いような医療機関立入検査はもうやめよう。この検査も税金で行われているだけでなく、人の命に直接かかわることなのだから。

 

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