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Vol.23053 花粉症15年ぶりに再発はなぜ? ある日突然目の違和感と鼻汁に悩まされるように

医療ガバナンス学会 (2023年3月23日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(2023年2月22日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2023022100043.html?page=1

内科医
山本佳奈

2023年3月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2月10日、東京都は都内でスギ花粉の飛散が確認されたことを発表しました。昨年よりも5日早い飛散開始であり、過去10年の平均飛散開始日よりも5日早かったといいます。恐ろしいことに、今年の春に都内においてスギやヒノキの花粉が飛散すると予測されている量は昨年の2.7倍となることが見込まれています。そうなれば、過去10年間において2番目に多い飛散量を記録することになるほどの多さだといいます。

例年、1月中旬から下旬にかけて「目がしょぼしょぼしてきました」「鼻がむずむずし始めた気がする……」と花粉症の症状を訴える方がお越しになります。「そろそろ今年も花粉がやってきそうなので、早めに受診しました。」と今シーズン分の薬の処方を希望して受診される方もいます。実は、花粉が本格的に飛散し始める2週間ほど前から抗アレルギー薬の内服を始める初期治療が花粉症に有効だと言われています。ずっと花粉症に悩まされている方の場合、「昨年にもらっていた花粉症の薬が残っていたので、花粉の飛散が始まる少し前から飲んでいたが、それも無くなってしまった」とおっしゃるケースも少なくありません。

私もまさに今、花粉症の症状に悩まされている一人です。15年ぶりに花粉症を再発し、花粉症の辛さを身にしみて感じている今日この頃。今回は、日本の国民病といっても過言ではない花粉症について述べたいと思います。

「花粉症環境保健マニュアル2022」に引用された全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国調査によると、2019年の花粉症の有病率は42.5%であったといいます。1998年と2008年に実施された同様の調査で1998年の花粉症の有病率は19.6%, 2008年は29.8%であったことから、花粉症の有病率は増加傾向を認めていることがわかります。

春はスギやヒノキの花粉に悩まされることが多い花粉症ですが、秋も花粉症の症状にに悩む方が多くクリニックを受診されます。秋の花粉症の主な要因はブタクサやヨモギの花粉です。先ほどの全国調査でも、2019年におけるスギ花粉症の有病率は38.8%、その他の花粉症(イネ科やブタクサなどスギ以外の花粉症)の有病率は25.1%と高く、スギ花粉症の有病率もその他の花粉症の有病率も、スギ花粉症と同様に1998年から増加傾向にあることが報告されています。

世界大百科事典によると古くは古代ローマの時代からすでに記載があったことが確認されている「花粉症」は、あらゆる植物の花粉が原因となってアレルギー症状を引き起こす疾患です。体内に入ってきた花粉をできる限り外に出そうとした結果、くしゃみや鼻水や鼻づまり、目のかゆみや涙や充血といったあらゆる症状が現れてきます。つまり、目や鼻から入ってきた花粉を私たちの体が異物であると認識し、体内に入れないように排除しようと必死に闘った結果なのです。

私の場合、小学校の高学年になった頃だったと思います。春になると鼻汁と目の痒みに苛まれるようになりました。中学生に進級するとその症状はひどくなりました。マスクをしながらの自宅から最寄り駅まで20分ほどの自転車通学は特に辛く、涙と汗と鼻汁でマスクの中は濡れてしまい、学校に着く頃には目が真っ赤になっているほどでした。抗アレルギー薬を飲むと副作用である眠気に襲われてしまうことから、薬を飲まずに症状に耐えることで春を乗り切っていたことを覚えています。

私の体に異変が訪れたのは高校を卒業した頃でした。急に目の痒みやひどい鼻汁といった花粉症の症状が全く出なくなったのです。それ以後、花粉症に悩まされることもなく、血液検査でアレルギー反応をチェックした際も、スギやヒノキ、カモガヤやブタクサなどの花粉に反応はなかったこともあり、「花粉症は完治した」と思い込んでいました。

そんな私が、再び花粉症に悩まされるようになったのです。日本を離れ、アメリカのカリフォルニア州に長期滞在するようになってから1カ月半が経った今年の1月中旬のある日のこと。目の違和感を感じる日が増えたなと思っていたら、透明の鼻汁がスーッと垂れるようになったのです。最初は「風邪でもひいたのかな」と考えていたのですが、1週間が経っても改善しないことや、風邪のような怠さもないこと、そしてランニング中にティッシュなしでは走っていられないほどの鼻汁に苛まれるようになったことから、「花粉症かもしれない」と強く思うようになりました。

調べてみると、カリフォルニア州は海岸気候であるため、他の州ほど深刻なアレルギーは経験しない可能性が高いことがわかりました。また一般に、春のアレルギーは1月下旬頃に始まるということや、北カリフォルニアは、スギ、ヒノキ、シラカバ、オリーブなどに注意する必要がある一方で、私が滞在している南カリフォルニアにおける春の樹木アレルギーにはオリーブ、オーク、プラタナス、クルミ、ユーカリ、桑などが含まれることがわかりました。つまり、日本では花粉症に悩まされることのなかったいずれかの花粉を、私の身体は異物と認識している可能性があるというわけです。

幸い、ドラッグストアで購入した抗アレルギー薬を内服し、症状はかなり治まってきました。約15年ぶりの花粉症の辛い症状を経験し、健康であることのありがたさを改めて認識する良いきっかけとなったと感じると同時に、早くこの辛いシーズンが終わってほしいと心から思っている今日この頃です。

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