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Vol.23131 【MRIC Vol.23111 2類から5類へ~~責任をとらない国と危険度が増す介護現場】の一部訂正と7月以降の各地の状況と現場の声

医療ガバナンス学会 (2023年7月25日 06:00)


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介護福祉士・ライター
白崎朝子

2023年7月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

6月28日に『2類から5類へ~~責任をとらない国と危険度が増す介護現場』を配信していただき、東京都はPCR検査の助成を打ち切ったと書いた。だが配信された翌29日未明に東京都から以下の連絡がきたと取材協力者より報告があった。
いつもなら25日には検査継続の連絡があるそうだが、今回は5類となり東京都も混乱しているのだろうと推察された。

「新型コロナウイルス感染症については、令和5年5月8日より5類感染症へと移行しましたが、重症化リスクの高い施設利用者を守るために必要な支援体制を当面継続する必要があることから、集中的検査について引き続き【令和5年7月から11月までの間も実施することとしました】……」という連絡だったという。(【 】は筆者)

■東京都のある事業所では

東京都内の訪問介護事業所の職員Kさんからは、「訪問介護事業所、市から委託されているミニデイサービスや小規模保育室とともに、毎週抗原検査をしています。2021年5月~22年の3月までは日本財団によるPCR検査をし、22年4月からは東京都の抗原検査を毎週やっています。ただ日本財団のPCR検査は高齢者介護のみを対象にしていて保育所は対象になっていなかったため、できませんでした。都が11月まで延長したため、まだ続けています」との報告を受けた。
Kさんは第三者評価の仕事もしているが、利用者調査、訪問調査など、事業所に行く時は抗原検査をしている。Kさんが所属する評価機関の独自判断だという。

■大阪府の検査体制と制度を使わない現場実態

大阪府のホームページの『大阪府/高齢者施設等の従事者等への抗原キット定期検査について』を見ると、申請すれば3日に1回検査ができるようになっている。また大阪市は2週間に1回。併用すれば、1週間に2回以上、検査ができる。
だが、大阪市の高齢者施設(SONPOケア運営 )で働くAさんからは、「入居者が高熱など体調不良時には、コロナやインフル検査をしますが大阪が一旦検査キット配布終了してから、一度も検査はありません」
との報告があった。

昨年、何10人のクラスターが何度もあったときでさえ、職員は自身で検査キット取り寄せ検査をするという状況だった。6月から入居者のワクチン接種は始まっているが、ワクチン接種もインフルエンザと同じく各自でとなっている。
「大阪で週2回も定期検査が出来る事すら職員には知らされていません。8月は全国的に感染爆発すると思ってますが、そんな危機管理さえないと思います」とAさんは憤る。

■使用者の安全配慮義務

ちなみに同じSONPOケアでも、都内の高齢者施設では、毎週検査が実施されているところもある。
「同じ会社にも関わらず施設や管理者によって対応が違うことに対して、労働法的に問題があるのではないか?」との私の取材に対し、ある労働運動家は、「PCR検査の不実施がとくに法違反だということではないが、使用者に安全配慮義務があるのはいうに及ばず、同じ企業において労働環境条件が異なるのは一方に不合理な不利益をもたらすので問題であるということは言えるかなと思います。それにしても労使交渉マターです」との回答をくれた。

■責任の所在は、どこに?

「Aさんの施設が定期的な検査をしないという問題は、会社の管理責任の問題なのか?管理者(施設長)個人の問題なのか?」という私の取材に対し、職場で労働組合を立ち上げて、労使交渉を続けながら高齢者施設の管理者をしているNさんは、「おそらく管理者個人の問題だと思います。私の職場は管理者が介護業務を全面的にしているのと、他にも事務的な仕事もたくさんあるので、正直、検査対応は会社にやって欲しいと思っていました。Aさんは、責任者や会社本体に相談するなり、組合へ相談したらどうなんだうか?」と話す。

しかし以前、Aさんの施設でクラスターが起きたとき、あまりにも杜撰な感染対策だったため、Aさんの施設名を言ってSONPOケア本社やSONPOケアが加入している日本介護クラフトユニオンに相談したが、その後もなんら改善はなされなかった。
また2類であっても大阪市は「行政指導はしない」と言い切っていた。一方、都内のある自治体は、「杜撰な感染予防対策には、行政指導する」と言っていたが、自治体によって判断が違うのはいかがなものか。

■愛する家族に面会できない苦しみ

「感染対策はどこまでやるか、やれば良いのかという問題がある。正解はないと思うが……。要支援2の90代の義理の祖母が、地方の過疎地に住んでおり、コロナ以降デイサービスが閉鎖。介護保険がまともに使えない状況となり、大阪の施設を探しているが、面会制限や行動制限してる施設が多すぎます。家族面会、家族の滞在は15分ルールの施設が多い。濃厚接触者の基準なのだろうが、一体いつまでそれを使うのかと思う」と前述した大阪市のNさんはコメントしてくれた。

Nさんは、施設からのデイサービスへの通所や、外出・外泊を自由にしていた施設もコロナ以降は、制限し施設内サービスのみに囲い込んでるような印象を受ける施設が多いと分析する。そして、「高齢者の人生における残された時間の中で、感染対策を理由にそのまま規制・制限し続けるのはどうなのだろうか?私は人権侵害だと思う。だから、一言でマスクの自己判断を批判して片付けられる問題でもない。当然、現場的にはマスクをするのは当たりだが、議論はすべき。そのあたりも現場判断だけでなく、行動制限をどうするかは、社会全体で考えるべき内容かと思う」と話す。
前回も認知症の母に面会交流できない友人の意見を書いたが、愛する母親に面会できず泣いている友人は他にもたくさんいる。

■現場だけでなく、社会全体での議論を!

5類になっても、医療・介護・保育等の”いのち”に関わる現場で働くエッセンシャル・ワーカーは気が抜けない状況に置かれている。
一方、「コロナは終わった」とマスクなしで万単位のライブ・コンサートを楽しむ人もいる。3年以上、友人や肉親にも会えず、我慢を強いられてきたエッセンシャル・ワーカーだけが、いまだに災害級の猛暑のなか、職場以外でもマスクや感染予防を強いられるのは、あまりにも酷な話ではないだろうか……。
2000年から施行された介護保険の「介護の社会化」という理念を大切にするのなら、高齢者の死亡リスクが高いコロナの感染予防や対策について、Nさんの言うように社会全体で考えていくという意識や仕組みが必要だ。
そのことを、繰り返し世に問いていきたい。

2023年7月20日記す

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