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Vol.24218 第1回 確認訴訟:提訴の決意と弁護団結成

医療ガバナンス学会 (2024年11月21日 09:00)


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連載①URL
https://www.tokyo-sk.com/news1/29580/

東京保険医協会 訴訟ワーキンググループ原告団事務局長
いつき会ハートクリニック 佐藤 一樹

2024年11月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

オンライン資格確認を療養担当規則で原則義務化するのは違憲だ―。
全国の医師・歯科医師ら1,415人が、義務の無効確認などを国に求めた訴訟が9月19日に弁論が終結し11月28日に判決が言い渡される。今回から複数号にわたり、訴訟ワーキンググループの原告団事務局長で、東京保険医協会理事の佐藤一樹氏(いつき会ハートクリニック)に、訴訟の現状と今後の行方を展望していただく。

1 提訴の決意

2021年8月、健康保険法にマイナンバーカードによるオンライン資格確認が追加され、国民が医療機関を受診する際には、健康保険証かマイナンバーカードのいずれか任意の方法で資格確認を行うことになった。
ところが、2022年8月24日、厚生労働省と三師会が合同開催したオンライン資格確認等システムに関するウェブ説明会で、保険局医療介護連携政策課長は、「厚生労働省令〔同年9月5日保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)〕により2023年4月1日からオンライン資格確認が義務化される。医療機関がオンライン資格確認を導入しない場合、療担規則違反になる。療担規則に違反することは、保険医療機関の指定取消し事由になる 」旨を発言した。
法令にない「指定取消し」を錦の御旗にしての脅しだ。国を提訴し、司法の場で違法性を明らかにする、と私たちは決意した。

2 日本の弁護士「いの一番」

国民が国などの公権力を相手に起こす行政訴訟は、原告勝訴率が数%の難関だ。例えば「*マイナンバー制度違憲訴訟」は全国8カ所で提訴され、すべて敗訴した。勝訴のためには、どれほど評判の良い弁護士だと言われていても、行政訴訟で勝訴実績がないのなら頼まない。
私たちの行政訴訟は、2種類ある当事者訴訟のうち「確認訴訟」に分類される。確認訴訟は2005年4月1日施行「平成16年改正『行政事件訴訟法』」 で初めて「公法上の法律関係に関する確認の訴え」と条文化された。同年9月14日、最高裁大法廷で新法施行後、確認訴訟では最初の原告勝訴判決が出た。「在外日本人選挙権剥奪違法確認等事件」である。これが、国民の権利利益の実効的救済を図る上で、確認訴訟の活用の有効性を示す嚆矢(こうし)となった。憲法訴訟・行政訴訟の歴史に燦然(さんぜん)と輝くこの訴訟の弁護団長が自由人権協会代表理事の喜田村洋一先生である。
当時、朝日新聞は1面に連載「日本の弁護士」を開始し、いの一番に喜田村先生を選んだ。刑事事件では数々の無罪を勝ち取り、日本の民事名誉毀損裁判の規準を創り、憲法訴訟では有名な「レペタ訴訟」も担当したオールラウンダーである。2022年9月、東京保険医協会理事会で私は「この行政訴訟の主任弁護士は喜田村先生しかいない」と主張し、全員一致で可決された。
弁護団には、在外日本人選挙権剥奪違法確認等事件で喜田村先生の右腕だった二関辰郎先生も入り、牧田潤一朗先生、小野高広先生の4人体制となった。全員が自由人権協会の主要メンバーである。

*=マイナンバー制度がプライバシー権を侵害し、
違憲であるなどとして仙台、新潟、金沢、名古屋 、東京、神奈川、大阪、福岡の各地で行われたマイナンバー関連の訴訟

3 私たちの訴え

2023年2月22日の第一次提訴から第三次提訴までに原告は1千415人となった。なお、当時、健康保険証の廃止は立法化されておらず、訴訟外の事案である。私たちの訴えの柱は、以下の2本である。
(1)オンライン資格確認義務のないこと、すなわち、患者から電子資格確認により療養の給付を受けることを求められた場合に、①電子資格確認によって療養の給付を受ける資格があることを確認する義務がないこと、②電子資格確認によって療養の給付を受ける資格があることの確認ができるようあらかじめ必要な体制を整備する義務がないことをいずれも確認すること。

(2)「違憲・違法なオンライン資格確認を義務化した療養担当規則の制定や関連する政府の動きのため、保険医療機関の閉鎖を含めた対応を余儀なくされる可能性など、自己の職業活動、その継続に対する不安のため精神的苦痛を受けたこと」に対し、各原告に、金10万円を支払え。

重要なことは、オンライン資格確認自体には反対してない点だ。
一方、政府発表の「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」「医療DXの推進に関する工程表」では、情報保護の安全性に問題がある。この前提となるオンライン資格確認について、十分なシステムの構築をしないまま、違法な省令によって、保険医に対し強権的に「義務づけ」したことについて訴えている。(つづく)

 

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