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Vol.25096 坪倉先生の放射線教室(22) 高レベル放射性廃棄物の最終処分地

医療ガバナンス学会 (2025年5月27日 08:00)


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この原稿は福島民友新聞『坪倉先生の放射線教室』からの転載です。

福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授
坪倉正治

2025年5月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●チェルノブイリ事故、察知  2024年8月17日配信
https://www.minyu-net.com/news/detail/2024081711474825815

高レベル放射性廃棄物は数万年以上の長期保存が必要なため、地下深い場所での「地層処分」が現実的だと考えられています。日本では地層処分する場所は決まっておらず、この場所をどうするかという問題は、全世界で共通です。そんな中、スウェーデンやフィンランドは世界的に見てこの問題について進んでおり、最終処分地に相当する場所が既に決定しています。

スウェーデンの建設予定地は、フォルスマルクという首都ストックホルムから北に120キロ行ったところにあります。その場所にはもともと3基の原子炉を擁する原子力発電所があり、その敷地の横に処分地が建設されます。

このフォルスマルク原発は、チョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故を西側諸国として最初に察知した場所として有名です。チョルノービリ原発事故から2日後の1986年4月28日(月曜日)の朝、職員の衣類や靴から汚染が見つかったことがきっかけとなりました。当初、この汚染はフォルスマルク原発自体からの放射能漏れや、核兵器の使用が原因と考えられました。しかし確認の後、すぐにそれらは否定され、風向きなどの情報からチョルノービリで何かが起こった可能性が指摘されます。

28日中にはスウェーデン政府が当時のソ連政府と接触し、ソ連内での原発事故の発生の有無を問い合わせます。当初、ソ連政府は回答で事故を否定しましたが、スウェーデン側から国際原子力機関(IAEA)に事態を報告する意向が伝えられると、一転してチョルノービリで事故が発生した事実を認めたのでした。
●地質や環境への影響調査  2024年8月24日配信
https://www.minyu-net.com/news/detail/2024082409364725982

高レベル放射性廃棄物は数万年以上の長期保存が必要なため、地下深い場所での「地層処分」が現実的だと考えられています。しかし、この場所をどうするかは、全世界で共通の問題です。日本では地層処分する場所が決まっていませんが、スウェーデンやフィンランドは、この最終処分地に相当する場所が既に決定しています。

スウェーデンの建設予定地は、フォルスマルクという首都ストックホルムから北に120キロの場所です。その決定までにはこれまでさまざまな段階が踏まれました。

スウェーデンでの場所の選定は、SKBという専門の会社が1992年に取りまとめた研究開発計画書の中で、選定方法の案を提示し、その概要について説明する書簡を、当時286あった全国の自治体に送付したことから始まりました。93年から2000年にかけて合計八つの場所でフィージビリティー調査という、日本でいう文献調査に相当する調査が行われました。

既存の地質に関する文献に加えて土地の利用状況や環境、雇用面への影響が調べられ、結果的に三つの自治体が選定されました。その後、一つの自治体では地元の議会でこの次の調査へ進むことが否決されます。そして、残りの二つの自治体でボーリング調査を含むサイト調査が、02年から約5年間行われました。

その結果に基づき、09年6月にSKB社は、地質学的な条件が有利であったエストハンマル自治体のフォルスマルクを建設予定地として選定しました。

 

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