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Vol.26022 市販の風邪薬が効きにくい…女性医師が経験した感染症だけではない気を付けたい「冬の不調」

医療ガバナンス学会 (2026年2月5日 08:00)


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この原稿はAERA DIGITA(2025年11月26日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/articles/-/270311?page=1

内科医
山本佳奈

2026年2月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

朝晩の冷え込みが冬らしくなってきた頃から、どうも体調が優れなくなりました。なんとなくのだるさ、軽い咳、喉の違和感、鼻水やくしゃみが続き、夜は鼻づまりでなかなか寝付けない日もありました。体温は36.7度。発熱とは言えませんが、私にとっては「いつもより少し高め」に感じる数字です。

大したことはなさそうなのに、確かに調子が悪い。そんな状態が続き、アメリカのドラッグストアで購入できる市販の風邪薬をいくつか試しても、思うように症状が改善しません。日本ではインフルエンザの報告が増えていますが、今回の不調は感染症だけでは説明しきれないものでした。

この冬に備えて、10月初めにはインフルエンザワクチンとコロナワクチン接種を完了しました。しかしながら、ワクチンは感染そのものを完全に防ぐものではなく、重症化を防ぐことが主な役割です。そのため、喉の痛みや咳、微妙な体温上昇といった軽い上気道症状は、ワクチン接種後であっても普通に起こります。さらに冬はライノウイルスなどの一般的な風邪ウイルスも多く、こうした軽い感染は決して珍しくありません。

●冬は呼吸器に負担をかける
加えて、冬という季節そのものが呼吸器に負担をかけます。低湿度と低温の環境[※1] では、インフルエンザや肺炎などの呼吸器感染症が増えやすいことが多くの研究で報告されています。乾燥した空気は[※2] 喉や鼻の粘膜から水分を奪い、炎症性サイトカインが上昇しやすくなるという実験的な報告もあり、気道の炎症が起こりやすくなる仕組みが示されています。室内の暖房によって湿度がさらに下がると、粘膜のバリア機能が低下し、咳や喉の痛み、鼻づまりが助長されることも確認されているのです。

今回私が経験した喉の違和感や夜間の鼻づまりも、感染だけではなく、このような乾燥や気温差による粘膜防御の低下も関係していたのだと思います。

もう一つ、自分が見落としていたと感じたのが「隠れ脱水」です。私は健康維持のために毎朝20分ほどの筋トレと30分のランニングを続けています。運動をしていると、「体に良いことをしている」という意識が強く、脱水の可能性を軽視しがちです。ですが、冬の運動は汗が蒸発しやすく、自覚がなくても確実に水分が失われています。

冬は喉の渇きを感じにくく、寒さによる利尿や暖房による乾燥で、想像以上に水分が失われやすい季節です。特に、冷たい空気に触れると血管が収縮し、その結果として尿量が増える「寒冷利尿」が起こりやすくなり、気づかないうちに体内の水分が減りやすくなります。季節によって体内の脱水リスクが変動することを示した研究[※3] もあり、冬季には血管内脱水のリスクが高まる可能性も指摘されています。

さらに、私はコーヒーが好きで水をあまり飲まない生活が続いていました。しかし、コーヒーで喉が潤ったように感じても、体の水分補給としては不十分です。コーヒーには軽い利尿作用もあり、知らないうちに体の水分バランスが崩れやすくなります。

●爪に変化でもわかること
最近、爪を切るときに薄く捲れやすくなったり、苦味を前より感じにくくなったりと、ちょっとした違和感が積み重なっていました。以前に亜鉛不足症を経験したときと似た感覚で、あのときの体のサインがまた出てきているのかもしれない──そんなふうにも感じています。亜鉛は爪や皮膚だけでなく免疫の働きにも深く関わるため、不足すると粘膜の修復が遅れたり、風邪のような症状が長引きやすくなることがあります。

冬は体調が揺らぎやすい季節だからこそ、こうした小さな変化を見逃さないことが大切だと実感しました。今回の36.7度という体温も、軽い炎症と脱水が重なった結果だったのかもしれません。市販の風邪薬が効きにくいと感じた理由も、この点にあるように思います。

冬の不調は、軽い感染だけでなく、乾燥や寒暖差、隠れ脱水、自律神経の乱れなど、複数の要因が同時に関わるのが特徴です。症状ごとに背景が異なるため、症状だけを一時的に抑える市販薬では十分に改善しないこともあります。

もちろん、38度以上の発熱や強い倦怠感、呼吸の苦しさがある場合、あるいは咳や鼻づまりが長期間続く場合などは、医療機関を受診したほうが安心です。一方で、36〜37度台の微妙な体温変化や、軽い咳・喉の違和感といった症状は、数日から1週間程度で自然に改善することも珍しくありません。

●今回の冬の不調を振り返ると
今回の体調不良を振り返ると、単に「冬だから具合が悪くなった」という一つの理由だけでは説明できないと感じました。体調が優れないとき、つい原因を一つに絞って考えてしまいがちですが、実際にはいくつもの要因が重なって不調が続くことは珍しくありません。

私の場合も、運動習慣があるのに水分が十分に取れていなかったこと、そして爪のわずかな変化に気づきながら亜鉛を補えていなかったこと——こうした小さな不足が少しずつ免疫の働きを弱め、軽い症状が長引く結果につながっていたのだと思います。

だからこそ、症状だけにとらわれず、自分の体が発している小さなサインにも耳を傾けることが大切だと感じました。一つひとつ整えていくだけで、体は想像以上に軽く、元気を取り戻していきます。冬は不調が重なりやすい季節ですが、体を丁寧に見つめ直すことで、回復までの道のりはぐっと短くなるのだと思います。

【参照URL】

[※1]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4910181/

[※2]https://www.nature.com/articles/s43247-025-02161-z

[※3]https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39496441/

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