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Vol.434 北海道に、新設医学部を。

医療ガバナンス学会 (2012年3月16日 06:00)


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都立墨東病院
濱木 珠恵
2012年3月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


私は、北海道には新設医学部が必要であると考えています。すでに北海道には、北海道大学、札幌医科大学、旭川医科大学という3校があると言われるかも知れ ません。しかし前者2校の所在地は札幌です。札幌市は、全国の市では4番目という人口190万人の政令指定都市です。北海道の全人口560万人のうち 35%が住んでいることになります。一方、札幌市以外の市町村では過疎化が顕著に進んでおり、第二の中核都市である旭川市でさえ約35万人と、札幌の約 18%程度です。しかし、人口集中の札幌や旭川だけに医学部があればいいというわけではありません。医学部のある札幌第二次医療圏、上川中部第二次医療圏 の人口は272万人ですが、残りの386万人がいる19の第二次医療圏には医学部がありません。これらの医療圏は、北海道の面積の9割という広大な地域に 広がっています。3校あれば十分ということにはならないのです。北海道の広さを考慮に入れなければなりません。

北海道には、他県と同等に比較できない要素があります。面積は77,984.15 km2であり、東北6県(66,889 km2)に新潟県(12583 km2)を加えたのとほぼ同じ面積という広さです。あるいは九州の面積が42190 km2 であるのに対し、北海道は77984 km2であり、約2倍の広さです。これを可住地面積=総面積-(林野面積+主要湖沼面積)で計算しても、北海道は約21000 km2 、東北6県が約20000 km2、九州は15000 km2と、圧倒的に北海道が広いのです(震災以前のデータを使用)。『一県一医大』の考え方で言っても、面積あたりの配置として考えても、北海道には医学部がまったく足りていません。九州の医師数は北海道の3倍ですから、単純計算でいえば北海道の医師がカバーしなければならない居住区の広さは、九州の4倍 ということになります。

北海道の全体医師数は約1万2000人です。つまり人口10万に対する医師数は約220人であり、全国平均と比べて極端に少ないということはありません。 それでも、10万人当たり医師数270人の九州(人口1320万人)と比較すると、やや少ないようです。しかも、札幌医療圏の医師数は6200人、上川中 部医療圏は1200人であるため、それぞれの医療圏では10万人当たりの医師は290人、270人と十分数いるように見えるのですが、それ以外の19の医療圏では10万人当たり120人と、かなり少なくなってしまうのです。つまり北海道の9割の地域では医師数が足りていないということになります。

北海道を移動したことがある方はご存知と思いますが、市町村が分散して存在しています。市と市の間は、車で1-2時間ほどの原野が広がっています。例えば 札幌-旭川間で134 kmあります。道東地方でいうと、帯広-釧路間は114 km、釧路-根室間は125 kmです。ちなみに札幌-釧路間は328 km、札幌-根室間は452 kmです。120 kmというと、東京から富士山まで直線距離で100 km、東京ICから富士ICまでちょうど121 kmです。九州でいうと、福岡市から熊本市まで約120 km、鹿児島市までが300 kmと考えてください。関東や近畿、九州北部などの人口密集地域とは違った医療圏の見方が必要になってしまいます。人口減少傾向にあるとは言え、各市町に はそれなりの人口があるため、疾病の種類が減るわけではありません。平成18年7月の診療データから患者の受領動向を課分析した結果によると、第二次医療 圏内での通院の自給率は95.1%であり、通院可能な医療機関が全道に分布していることが分かります。しかし、入院の自給率は全道の加重平均で88.8% であり、入院施設を有する医療機関が全市町村にそろっていないために、札幌市、旭川市、函館市など医療施設が整備された都市部に全道から患者が集まっていることが分かっています。

これらの点を考慮した際、北海道の医師数は決して十分ではありません。入院施設を有する病院の医師は勤務医であり、高齢の医師ではこの業務に対応できませ ん。今後、高齢化が進んで患者が増えたとき、また現役で働いている団塊世代の医師がリタイアしたとき、絶対的に不足するはずです。現時点で、地方の医療拠点となりうる医学部を設立し、医師を育てる必要があります。

私は、北海道にさらに医学部が増えるのであれば、10万人当たりの医師数が150人弱の道東地区であるべきと思っています。その中でも釧路市は地理的に適 した場所であると考えます。釧路市の現在の人口は19万人、隣接する釧路町の2万人などと合わせて、26万人規模の第二次医療圏を形成しています。前述の とおり、二次医療圏間の入院患者の移動は、札幌、旭川、函館への移動が目立ちますが、道東地区では、釧路、十勝からの流出は少なく、根室管区から釧路への移動が多く見られます。根室管区の根室市、標津町、中標津町や、釧路管区の白糠町、厚岸町などの患者が、釧路市内の病院に入院しています。釧路には市立病 院、労災病院、日赤病院をはじめとして、中規模病院が揃っているからです。

釧路市は漁業で有名な町でしたが、現在は豊富で良質な水資源を背景に大規模な食品・製薬工場や製紙工場などの産業が経済の核となっており、釧路港、釧路空 港による物流機能も充実しています。釧路市には、北海道教育大学釧路分校、釧路公立大学のほか、釧路工業高等専門学校などがあり、新たに医学部を設立する ための素地はあると考えます。釧路でも、釧路労災病院の医師を中心に『釧路に医学部を』という市民活動が進められていますが、新たに医学部附属病院を建設することは看護師などの人事面からも現実的ではないため、研修病院として既存の病院と提携する必要があります。釧路赤十字病院と釧路労災病院は、病床数 500床前後でほぼ同等の規模をもち、また所在地が直線距離で500m程度と非常に近接していることから、医学部が新設された際の研修先連携病院として非 常に便利であると考えられます。また、やや距離は離れますが、災害拠点病院でもある釧路市立総合病院は、約650床を有する地域の中核病院であり、研修提 携先としても欠かせない存在となるでしょう。

これらの病院には、北大、札医、旭医の医局出身者が多数勤務しており、既存の大学との連携にもつなげられると期待できます。短期的には、既存の医学部か ら、ポストのとりあいとか、医局員引き揚げなどというトラブルが起こるかもしれませんが、長い目でみたとき、北海道に医学部を新設する意義は十分に得られ るはずです。

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