医療ガバナンス学会 (2012年5月9日 06:00)
1961年。当時、全くの新ワクチンだったOPVの緊急輸入を決意した古井厚生大臣はまさに腹を切る覚悟が必要だったろう。去年、IPVの必要性を訴えた 首長も国会の地方自治体の議員も、腹を切る覚悟など必要なかった。なぜなら、IPVには海外での十分な使用実績があるからだ。ただ、足りなかったのは国の 承認、だけだったのかもしれない。
今、その障壁は無くなった。目の前の命に対してどう向き合うのか、が地方自治体には問われている。
以下、世田谷区宛て提案。
~~~~~
世田谷区長
保坂 展人 様
私が一区民として世田谷区でIPVへの独自助成ができないかとご提案したのは昨年の七月。
当時は、IPVは国に承認されていないワクチンでした。
私の提案を世田谷区として検討なされなかったのも、第一因として国が認めていないワクチンであったことがあるのだと思っております。
しかし、時は経ちました。
4月27日、厚生労働省はサノフィ・パスツール社の不活化ポリオワクチンを日本国内で使える医薬品として承認し、さらに9月には現行のOPVに変えて定期接種ワクチンとすることを表明しています。
国が認めたポリオワクチン。ワクチンによってポリオになることのないワクチンを日本国政府が認めました。
その国が認めたワクチンを、たった今、月齢的にわが子に接種する必要がある保護者たちは、接種してくれる医療機関を探し、自らお金を払って、接種させるしかありません。
ポリオ生ワクチンの持つ危険性については、既に保護者の方々はご存知です。ですから、世田谷区でのポリオ生ワクチン接種率は昨年秋段階で50%台に低下しました。
国がより安全なワクチンとしてIPV導入を語ってしまった以上、この春の接種率はさらに低下したであろうことは火を見るより明らかです。そして、医療機関 を自ら探す苦労、自費負担の重さから、いかなるポリオワクチンも受けていない子が多数潜在していることもまた、まちがいのないことでしょう。
ポリオ流行のリスクは、全国平均からさらに大きく落ち込む世田谷区ではきわめて高くなっていると推定できます。
この状態を、放置なさるのでしょうか?
国が動くという9月までの4ヶ月の間、子どもたちを感染リスクに晒してよいとご判断なさるのでしょうか。
世田谷区の場合、幸いにして未承認の時代から医師の自己責任で不活化ワクチンを接種してきた医療機関が10箇所余り存在しています。区が積極的に助成制度 を開始すれば、接種費用が障壁となって保護者が国の定期化(無料化)待ちをすることで、ポリオへの感染リスクにさらされている子どもたちを救済することが 可能です。
国は、IPVを承認しました。
その有効なワクチンを、一日でも早く子どもたちのもとに届けられる体制を作ることは、まさに行政の責務ではないでしょうか。
子どもたちのために、ご高察を願う次第です。
2012年5月7日
真々田 弘