医療ガバナンス学会 (2012年5月13日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
www.asahi.com/apital/
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2012年5月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
震災後、福島県内の出生数は激減しました。
南相馬市もその例外ではなく、年間600~700人ぐらいだったのが、去年1年間は、その10%以下まで落ち込みました。それでも約40人弱の赤ちゃんが産まれたのです。
これは震災後からずっと原町で診療を続ける南相馬市医師会長の高橋享平先生(産婦人科医)によるところが大きいです。多くのメディアで紹介されていらっ しゃいますが、彼自身が病を背負う身でありながら、相双地区の妊婦さん達を守り続けてきたからこそ、です。彼のウェブサイト( http://www6.ocn.ne.jp/~syunran/ )も是非ご覧ください。
通常の妊婦検診などに加えて、彼は自分の医院に受診される妊婦さん全員にガラスバッジを渡し、個人線量計を細かくチェックしながら、被曝を少しでも減らせるよう指導を続けてきました。
この試みは日本チェルノブイリ連帯基金の鎌田實先生、神谷事務長、加藤さんを始めとする皆様のおかげで今も続いています。
私が最初に南相馬市に行った去年の4月ごろ、最初に頼まれたことが高橋先生にガラスバッジを届けることでした。ここで生活している妊婦さんを守りたい、そ う言われて探しまわりました。その当時、個人線量計を手に入れるのは至難の業でしたが、サードウェーブ社の尾崎社長たちの尽力で、何とか手に入りお届けで きました。
ロシア製の軍隊が使うちょっと特殊な個人線量計で、使い方が私にはよくわかりませんでしたが、それでもすごく喜んでくれたのを覚えています。
自然減の影響もあるでしょうが、しっかり生活指導を行った妊婦さんは外部被曝の値が減少しました。それでも値の下がりが悪い方には、皆で集まってそのお宅を除染しに行きました。
8月ど真ん中の暑い夏の日、高橋先生が中心となり、安心安全プロジェクトの田中さんや箱崎さん、石川建設の皆さんで除染しに行きました。その後この活動がきっかけとなり、南相馬除染研究会の立ち上げにつながります。
市立病院に話を戻します。
産婦人科を再開し、徐々に妊婦さんが戻りつつあります。5月には約5人、6月も同様の妊婦さん達が出産予定です。それにあわせて、市立病院では妊婦さんを対象に3カ月に1回は継続的に内部被曝を検出しないかチェックを開始することになりました。
加えて、出産後希望される方には母乳の放射線検査も提供できるように整備を進めています。
妊婦さんの方が、妊娠していない女性に比べて、セシウムの排泄が早いことは言われています。より食品などに気を使っていらっしゃる方が多いですし、今現在、妊婦さんで体内の放射性物質が検出限界を超える値だった方はいらっしゃいません。
ガラスバッジの提供、安全な食品の提供、遺伝のカウンセリングなどやっていかなければならないことはたくさんありますが、試行錯誤しながら一つ一つ進んで行くしかありません。
去年の夏の写真です。白衣の方が高橋先生です。これから、みんなで除染に向かうところです。
*文中の写真はこちらのサイトよりご覧ください。
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https://aspara.asahi.com/blog/hamadori/entry/7fFGcB1R01