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Vol.500 南相馬市立総合病院での初期研修について

医療ガバナンス学会 (2012年5月27日 06:00)


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亀田総合病院
初期研修医1年 山本 紘輝
2012年5月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


初めに、昨年起こった東北地方太平洋沖地震でお亡くなりになられた方にお悔やみ申し上げます。
南相馬市立総合病院にて実習をおこなった経験から、当院における今後の研修の可能性について私見を述べさせて頂きます。

私は母親のルーツが相馬であったこともあり、3.11の災害が起こった後、微力ながら被災地でのボランティアを行いたいと考えておりました。初期臨床研修マッチングの結果、研修が予定されていた亀田総合病院の片多史明先生や、南相馬市立総合病院の金澤幸夫先生、及川友好先生のお力添えの元、国家試験が終わった後に、南相馬市立総合病院にて1週間の実習を行う機会を頂きました。当院では高校の先輩であり、亀田総合病院の先輩でもある原澤慶太郎先生の下でお世話になりました。原澤先生は昨年秋から南相馬市立総合病院で勤務されており、この地の高齢者医療を先導され、約2000人の仮設住宅住民に対して集会所 での出張予防接種を行い、血圧の自己測定を根付かせる活動を行っています。さらに4月には在宅診療部を立ち上げました。復興対策のメンバーとして常に革新的なアイディアで、南相馬の復興のみならず、この地がこれから東京、北京で起こる急速進行性の超高齢化社会”Rapidly progressive aging society”のモデルになると考え、日々新しい計画を生み出しています。

亀田総合病院では地域選択実習にて南相馬市立総合病院での研修が可能ですが、私としては初期研修の2年間を南相馬にて行うメリットは大きく分けて3つあると考えております。
1つめに初期研修は医療の基礎を学ぶ最も大事な2年間ですが、医療において地域に貢献すること、そして複雑な問題を抱えて困っておられる方々に向き合う精神を養うことは重要と考えます。研修を行いながら、未曾有の大災害後の被災地で地域に貢献することは大変有意義と考えます。被災地の現状は自分の目で見なければ分かり得ないと感じました。私は訪問診療に同行させていただいた際、介護者の疲弊を垣間みました。彼ら自身も、震災により避難を余儀なくされ、放射線の影響を危惧し続け、ストレスを受けながら1年以上過ごしています。疲れはピークに達していることでしょう。レスパイトやショートステイで介護者を休ませてあげることが急務となっています。仮設住宅への訪問診療では他にも驚かされた事がありました。部屋が寒く、そしてお風呂の段差があり高齢者にとって、 非常に危険な環境でした。実際に段差による事故も起こっています。行政が考える被災地への支援政策と、実際のニーズとがかけ離れていると私は感じました。 また、多職種との連携なくして、地域医療は成り立たないという現実も実感することが出来ました。

2つめのキーワードとして「Rapidly Progressive aging society(RPAS)」という環境下で医療を行えることにあります。聞き慣れない用語かもしれませんが、南相馬では震災の影響で、放射線の影響を懸 念した若い世帯が被災地を離れ、高齢者のみが取り残されてしまっている社会が形成されています。家族の離散は、既存の介護力の低下を意味し、生活に大きな変化をもたらしました。孫に会えず、寂しがっておられたお年寄りの姿には胸を打たれました。RPASを経験することがなぜ大切か、それは20年後の東京、 25年後の北京に近似した世界が、南相馬という限定された地域に広がっているからに他なりません。近年、超高齢化社会と少子化が急速に同時並行で起こって います。その結果、当然高齢者中心の社会が形成され、社会のニーズも変化していきます。その変化に対応するためには、このような環境で研鑽を積み、次世代へと繋ぐsolutionを模索することが重要ではないでしょうか。

3つ目に被曝に対する知識を深めることがあります。当院では、内部放射線被曝量を量るためのホールボディーカウンター(WBC)を用い、地域住民に対する 検診が行われています。住民の方々は何を食べれば、どう行動すれば安全かを知りたいですし、それがわかれば安心して被災地で生活を続けることができるで しょう。被曝に関する知識を深め、住民の方々にフィードバックすることは、この先数十年、この国が取り組むべき課題を先取りすることでもあります。

特殊な環境であるかもしれません。しかしながら、私はこの国で医師として働くにあたり、極めて未来志向な、問題解決能力を養える環境が南相馬市立総合病院にはあると感じました。
現地で、日々奮闘されておられる先生方、スタッフの方々のご健勝を心よりお祈り申し上げます。

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