医療ガバナンス学会 (2012年6月16日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
www.asahi.com/apital/
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2012年6月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
これらは外来でよく聞かれる質問です。この指摘はある意味では正しいのですが、正確ではありません。
どう正確でないかというと、結論から先に言います。事故直後(初期)の内部被曝量は空間線量に依存していると考えられます。ですが、事故後の生活上での慢性的な内部被曝は、生活習慣に依存しており、空間線量に依存していないということです。
言い換えると、事故後の生活上での慢性的な内部被曝は、「何を食べているか。食品に関してどのような防護策をとっているか、農家の方であれば、自身で作った食べ物をどの程度気をつけたり、検査したりしているか。」によって、大きく左右されているということです。
南相馬市立総合病院の結果からご紹介します。
去年の7月、検査を開始した当時、体内放射能量の数値の最も高い方々は、空間線量のより高い方が明らかに多い状況でした。とある会社の方々10人程度を検査しました。
値の高かった方から順番に見ると、事故直後の1週間に業務の関係で外を歩き回っていた時間が長かった順番と完全に一致していました。事故直後の内部被曝のうち、吸入がその多くを占めていたことが原因として考えられます。
しかしながら、その状況が変わってきています。今現在の南相馬市では、線量の高い場所に住む方々ほど、体内の放射能量が多いという結果は成り立たなくなってきています。
この3月で、南相馬市の大人での検出率は10%弱となり、特に子供では1%以下となりましたが、その検出する子供さんの居住地が、線量の高い地域に集中してはいません。
では、どのような方々で検出するのかというと、どこか線量の高い「地域単位」ではなく、同じ食事を食べている「家族単位」であるということです。
以前干し柿のエピソードをご紹介しました。この時も、とある子供さんから検出して、ご両親を計測するとやや高めという結果でした。その地域で他の子供さん から検出するということはありませんでした。現在の生活による内部被曝は、XXXに住んでいるから、ではなく、XXXという生活をしているからという状況 にシフトしてきています。
もちろん、事故直後の被曝量を正確に評価し、それに対して対策を行うことは非常に重要です。ですが、今後の内部被曝を増えないようにすることも減らすことも同様に重要です。
毎回お伝えしていることではありますが、ホールボディーカウンター(WBC)の検査意義は、事故直後の被曝量評価よりも、日常生活での内部被曝量評価にシフトしてきています。
相馬中央病院にも導入され、来週から稼働予定です。
*文中の写真はこちらのサイトよりご覧ください。
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