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Vol.611 現場で動ける医師を育てるために-南相馬市立総合病院 初期研修プログラムの可能性-

医療ガバナンス学会 (2012年10月11日 18:00)


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亀田総合病院 卒後研修センター長
片多 史明
2012年10月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


昨年3月11日の罹災以降、亀田総合病院と南相馬市立総合病院は、縁あって様々な領域での連携や人的交流を深めている。

初期研修とは、医師になって最初の2年間で義務付けられている、基本的な診療能力を修得するための研修のことである。この初期研修においても、南相馬市立総合病院は、亀田の研修医の短期地域医療研修受入れを行い、貴重な研修の場として機能してきた。

同院の長年の夢は、南相馬市立総合病院として初期研修医を採用し、病院独自の研修プログラムで医師を育てることであった。そのためには、厚生労働省からの 基幹型臨床研修病院の指定が必要だった。そして2012年9月7日、南相馬市立総合病院は、亀田総合病院の全面的な支援の下で、という条件付きで基幹型臨 床研修病院の指定を受けることが出来た。

2012年10月5日、私は南相馬市立総合病院にいた。亀田総合病院からの支援の一環として、来春からの研修開始に備えた会議に出席するためである。会議 には、金澤幸夫院長を始めとする、多くの指導医、メディカルスタッフ、事務スタッフだけでなく、桜井勝延南相馬市長も参加されていた。「南相馬市全体で、 地域として本気で医師育成に取り組もう」という強い意思が感じられた1時間半の会議であった。

研修医を育てるための鍵の一つは、指導医である。同院には、金澤院長、及川友好副院長、根本剛医師をはじめ、多くの志高く、熱い指導医が集まっている。病 院として、プログラムとしての初期研修医募集は初めてではあるが、獨協医科大学で准教授を務めておられた神経内科の小鷹昌明医師、旭中央病院で長年研修医 指導の中心的役割を担ってこられた呼吸器科の神戸敏行医師、亀田総合病院から出向中の原澤慶太郎医師、ホールボディーカウンターを用いた検診や放射線健康 カウンセリングに取り組んでいる東大医科研の坪倉正治医師など、研修医の指導経験が豊富な医師も多い(原澤・坪倉両医師は、亀田初期研修プログラムの修了 生でもある)。今回の南相馬訪問では改めて、来春からスタートする同院の初期研修プログラムの高いポテンシャルを実感することが出来た。

南相馬市立総合病院の初期研修プログラム開始にあたり、亀田総合病院は、26年間の初期研修の歴史で培われたプログラム立ち上げや研修医教育のノウハウの 提供だけでなく、亀田で開催される教育プログラムのインターネット中継、初期研修2年次での亀田での4ヶ月間の院外研修、指導医同士の交流など、全面的な サポートを行う予定である。

現在、南相馬市立総合病院の初期研修プログラムは、来年4月研修開始の1期生を募集中である。プログラムが認可されたのは先月であり、十分な広報期間がな かったにも関わらず、先日発表されたマッチング中間公表では定員2名のプログラムに、1名の1位希望者が応募してくれた。今、南相馬市立総合病院は、自院 で採用する初期研修医を初めて迎えることへの期待に溢れている。

マッチングの希望順位登録最終締切まではもう時間がないが、まだ1期生募集は継続中である。また、医学部1~5年生の見学や実習も随時受入れている。南相 馬での初期研修に興味を持った医学生の皆さんは、ぜひ病院を訪れ、指導医の実力に触れ、プログラムの可能性を肌で感じて欲しい。

さらに同院では、全国の基幹型研修病院からの地域医療研修の研修医受入れも積極的に行っている。南相馬市立総合病院での研修は、被災地の医療が抱える様々 な問題点を身をもって学ぶことの出来る貴重な機会である。より充実した地域医療研修の受入れ先を探している基幹型病院があれば、ぜひ金澤院長に打診して頂 きたい。

熱意と実力があり、志の高い指導医が集まれば、地方の医療機関であっても必ず初期研修医は集まる。現場でしっかり動ける医師を、地域全体で育てていく挑戦が、今この南相馬で始まろうとしている。

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