医療ガバナンス学会 (2013年2月26日 14:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2013年2月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
先日アンケートを行い、低い理由をお伺いしました。このブログの45回( http://apital.asahi.com/article/fukushima/2013011500002.html )でもご紹介しています。
仕事や学校があり、平日昼間の受診ができないから。検査の申し込み方法が分からないから――といった理由が多く聞かれたため、日曜日も検査が行えるように 病院スタッフも頑張ってくれました。結果として土曜日は渡辺病院で、日曜日は市立病院で対応できるようになりました。それでも週末は、やや受診者が増える だけで、大きな状況の変化はありません。
かといって、現状の情報が全員に届いているとも思えません。「ホールボディーカウンター、何ですかそれ? ああ、市立病院が何かやっているらしいですね」といわれることは、今でも普通にあります。
「CTをさっき撮ったから、これからホールボディーカウンターで検査したら値が出ちゃいますね」。こうした外来中のやり取りからも、内部被曝と外部被曝の 違いとか、ホールボディーカウンターやガラスバッジについて、どちらかの検査とかに、誤解があったりする方も多いことを感じます。「検出限界以下=被曝ゼ ロ」という誤解、外部被曝と内部被曝を一度に測れる器械であるという誤解など様々です。
もちろんその逆に、知識をしっかり持って、ご自身で判断される方もたくさんいらっしゃいます。南相馬市が発表しているデータについて、今後の検査予定など質問を頂くこともあります。
かなり前になりますが、アンケートで、放射線説明会にいらっしゃった方に対して、どこから情報を得ていますかという質問をしました。高齢者が多かったから か、インターネットとお答えになった方は10%未満でした。これはよく聞く話ですが、放射線に対する考え方には人それぞれです。誰からどんなメディアから 知識を吸収したのか、そして検査体制のアンバランスも非常に大きな要素です。
インターネットを使った情報発信や広報誌の活用、メディアに取り上げていただいたり、少人数の説明会を繰り返したり、教育委員会や、いくつかの団体でも講演会を行ってきました。とはいえ、もう少し(というよりかなり)試行錯誤が必要なようです。
先日、高校でお話をした際には、私と参加している先生の目線は同じ方向、つまり生徒達に向かっていました。それに対して、小学校でお話しした際には、生徒 と先生の目線が同じ方向、つまり私に向かっていました。全ての小学校でそうだと言いたい訳ではありません。もう一度何を伝えるべきか見直し、「放射線とは?」といった内容を最初から丁寧にお伝えしていく必要があるように思います。
食品検査場でも閑古鳥が鳴いているところがあったり、ホールボディーカウンター検査も当院のように検査人数が減ってきたりしています。
2年が経とうとする今、長期的にどのような検査体制で進めて行くのか(続けるのか続けないのか、続けるならいつまでどのように続けるのか)、そうしたこと が、分かりやすく示されていかなければならないと思っています。南相馬市では小中高校生は健診化されることが決まりましたが、その先はまだ不透明です。値 は低くなってきていますが、「なあなあで、もう検査はしなくてよいだろう」という状態ではありません。
「任せておけば、ちゃんと検査してくれている」という状況にならなければ、いったん大きく失ってしまった我々を含む検査する側の信頼は取り戻せないと思っています。
写真:冬は山越えが苦手なので、仙台経由で南相馬に行っています。新しい車両が導入されるみたいですね
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http://apital.asahi.com/article/fukushima/2013022500004.html