医療ガバナンス学会 (2013年9月25日 11:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2013年9月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
これまで小学1~2年生にお話ししたことはなかったので、うまくできるか心配でした。40分程度の時間の中で、みんな元気な質問を出しながら、話を聞いてくれました。
最初に、「放射線って知ってますか?」と訪ねました。多くの子供達が「知ってる!!」と元気に返事をしてくれます。
じゃあ、「放射線についてどんなこと知っている?」と続けて聞きました。
「がん!!」
全員ではありません。首をかしげている子、そもそも放射線って聞いたこと無いな、という顔をしている子、様々です。もちろん、この答えがおかしい訳ではありません。でも、がん以外の話は出てきません。
「怖いもの?」と聞くと、ほぼ全員が、うんうんと頷きます。
その後、レントゲンの写真を提示しました。
続けて、聞きます。「レントゲンを撮ったことがある人?」
高学年ぐらいになると、半数が何かしら見たことがある撮ったことがあるようでした。じゃあ、レントゲンって何を使っているか知ってる?放射線を使って撮影するんだよ。
そう伝えたとき、教師では無い私でも、生徒の何人かの顔が曇るのが分かりました。放射線=癌=怖いもの、避けるべきもの。にもかかわらず、自分はレントゲンを撮影したことがある。どうしよう。そんな反応でした。
放射線が地球上のどこにでも存在すること、宇宙線が降り注いだり、食物や土壌に含まれていたり、空気中に存在したりすること。「放射線はどこにでも存在する」
ただ、一言なのですが、この一言を理解してもらうことの重要性を強く感じました。
続けて、もう一つの伝えたいことを話しました。「放射線の影響は量の問題である」ということです。ただ、これを理解するのは、「放射線はどこにでも存在する」ことが分かった生徒には、それほど難しくは無かったようです。
放射線が怖いものである。たくさん浴びると体に悪い。そのことは、すでに頭のどこかに入っており、知っている子供が多いように感じました。そして、(レン トゲンなどのリスクが計算上もゼロだとは言いませんが)レントゲン1枚撮って体がおかしくならないことも子供達も実体験から知っています。
「放射線の影響は量の問題である」ということは、「放射線は、どこにでも存在する」ことが分かればすんなり受け入れてもらえる話なのだと思いました。
じゃあ、この後どのようにすれば量を減らすことができますか?と続けたかったのですが、40分だとここまでが限界でした。また機会があれば、お話しする約束をして授業を終わりました。
放射線について小さな子供たちに何と伝えるのがよいのか、色々な意見があります。危険性だけを伝えるようにおっしゃる方もいれば、その反対もいます。何が 正しいか、どのように伝えるかは議論のあるところだと思います。今回の私の経験が少し何かの参考になってくれればと思います。
授業だけではなく、先日ご紹介した社会科見学や地元の農家さんを訪問して、どのような対策を立てているかについて直に触れることも有効だと思います。色々 と述べてきましたが、結局、子供たちが元気に尊厳と自信をもってのびのびと生活してくれれば、それで良いのかもしれません。
写真:川内村にて。今まで受けてきた検査が何を見ているのか、伝えることも必要です。
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http://apital.asahi.com/article/fukushima/2013092400001.html