医療ガバナンス学会 (2014年1月23日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2014年1月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
導入後淡々と利用を進めています。これまでに100人前後の方が検査を受けられました。私が外来を担当させていただく日は私が、その他の日には測定のスタッフが、できるだけ受診者全員に結果を説明しています。
今まで検査を受けて、私が外来でお話しさせていただいている範囲では、セシウムが検出されている方はおられません。毎日検査が続いており、詳しくは公式の 発表を待ちたいと思います。現状で乳幼児においても、内部被曝は十分低く押さえ込まれていることが確認できていると思います。
Fastscanの検出限界である250~300Bq/body程度のセシウムが乳幼児に存在したらXxxだという仮定の話は、Babyscanならば検出できる訳です。この仮定の話は成り立たないことを示唆しているのだと思います。
先日、説明を担当するスタッフと、どんな質問を受診者から受けることが多いかという話をしました。それは、「放射性カリウムが検出されているが大丈夫なのか?」というものでした。
Babyscanの結果用紙は、Fastscanでの検査結果用紙から少し改良しています。Fastscanの結果用紙では、年齢、性別、身長、体重など と、セシウム134、セシウム137の体内量を記載していました。Babyscanの結果用紙では、それに加えて、誰の体内にも存在する放射性カリウムの 計測結果を記載しています。
結果用紙には「セシウム134 検出されず」、「セシウム137 検出されず」、「カリウム40 700Bq」というような記載になっています。もちろん Fastscanで記載していないのは、計測できていないとか、隠したいという意図ではありません。Babyscanはより細かいところまで計測している こと、カリウムが計測されていることが、計測がうまくいっていることの傍証の一つとなるとの考えから、カリウムの値を記載するようにしています。
そのカリウムの値を見て、納得される方もいらっしゃるのですが、その逆、「検出されず」以外の数字が書かれているのを見て、びっくりされる方が多いことに驚きました。
「放射性物質が検出されているのですけれど、大丈夫ですか?」
「この値は異常値ですか?」
カリウムの値を指して、何度か質問されました。もちろん「問題ありません。誰の体の中にも普通に存在しています。」と答えます。
我々の体を構成する必須の物質の中にカリウムがありますが、その一部は放射性のカリウムです。この放射性カリウムは食品や土壌など色々な場所に含まれており、それらから我々は常に内部被曝したり、外部被曝したりしています。
体内には平均して50〜55Bq/kgぐらいの放射性カリウムが含まれており、60kgの人なら3000Bq/bodyとか、それぐらいの放射性カリウムが含まれています。
今一度、冷静になって欲しいですが、セシウムなどの検出限界は、300Bq/bodyとか、Babyscanでは50Bq/bodyとか言う話をしていま す。原発事故があったから被曝をはじめてしたわけではありません。あまりにもよく聞かれるので、こちらもカリウムのことについて先に説明するようになりま した。
検査結果は、検査を受けた方のものです。できるだけ包み隠さず、変な誤解を与えること無く、余すこと無く全てお伝えする。これが原則です。
しかしながら、次の疑問を生み不信を生むことがあります。裏目に出たという表現は正しくないですが、何でも見せることで逆に混乱させてしまうことがありま す。きっとこの結果も、何も言わずに郵送をすると、カリウムの値を見て誤解される方がいらっしゃるのは容易に想像がつきます。
私自身今まで何度も経験してきました。別の検査で同様のことが起こってきたこともご存じだと思います。結局のところ、試行錯誤しながら良い形を見つけるしかありません。
繰り返しになりますが、内部被曝検査は、検査を受ける方と伝える側でしっかりコミュニケーションをとることが重要なのだと再認識した外来でした。
写真: 内容とは関係ないですが、三春人形。素晴らしかったので。
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http://apital.asahi.com/article/fukushima/2014011400006.html