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Vol.219 南相馬での初期研修

医療ガバナンス学会 (2014年9月27日 06:00)


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南相馬市立総合病院
藤岡 将

2014年9月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


0.はじめに
私が経験している、南相馬市立総合病院(以下、当院)での初期研修について考えたことを箇条書きにして、個人的に、且つ正直に述べていきます。従って(私は当院の従業員という立場ではありますが)、病院の従業員としての見解ではありません。また、私は「他の病院と比較して」という点に関しては残念ながら分かりません(当然か?)。

1.そもそも「初期研修」とは何ぞや
2.なんで当院の初期研修を選んだのか
3.医師が少ない病院で研修する利点
に関しては、重複になるので、
MRIC Vol.174 浜通りでの初期研修

http://medg.jp/mt/?p=2523

をご参照ください。

4.「国試浪人」でも採用試験で問題なし
医師免許を得るためには、a:医学部を卒業、b:医師国家試験に合格、と2つの条件が必要になります。是非はここでは論じませんが、条件aが大変(医学部は一般的傾向として入学難易度が比較的高いと言われていますし、入った後もまじめに勉強していないと留年してしまう)になっています。一方の条件bですが、こちらは新卒学生さんの合格率が94%(平成26年の国家試験)と高い確率で合格します。つまり、医師免許のセレクションを条件a(入学・進級)の段階で行い、条件b(国家試験)の段階はほぼフリーパス、となっています(是非は論じない)。逆に、もし国家試験で躓くと、その人は「合格率94%の試験に落ちた」訳で、周りの人からは「この人アホなのでは?(選ばれし6%)」という推認が働いてしまうわけです(是非は論じない)。
私事で恐縮ですが、私は実はこの国家試験に不合格になってしまい、1年間「国試浪人」をしていました(試験は1年に1回のみ開催される)。不合格になると、内定していた就職先は取り消しになるので、次の年に就職先を再度探さないといけません。そのため就職活動を再び行う訳ですが、浪人していると就職で不利になるわけです(私個人としては、不利になることは仕方がないと思います)。実際、いくつかの病院で「申し訳ないが、選考のときに不利に働く可能性は有ります」と告げられたこともありました。
少し話がそれますが、或る有名な○○病院に見学に行ったとき、△△大学の教官の先生が診療応援でいらっしゃったのですが、その先生は(△△大学は有名大学だからでしょうか)国試浪人なる者をこれまで見たことがなかったのか、私が国試浪人と知ると「大はしゃぎ」していらっしゃいました(はしゃぎたい気持ちは正直分からないでも無いですが)。それくらい不利なわけです。それ以来、(単なる逆恨みですが)○○病院や△△大学の関係者にお目にかかるとイヤーな気分になるようになりました。
話を戻します。それほど世間的には不利なわけですが、当院の場合は、採用面接を担当した先生に後日伺ったら、「全く考慮しなかった」とおっしゃっていました。珍しい病院だなぁ、と私は思いました。前歴不問なのでしょうか?

5.初期研修医の人数が少ない
当院の初期研修医はこれまで1学年(関係無いですが、学校を卒業後も「学年」と呼ぶお医者さん界は少し不思議)2人でした。最近は「どうも当院は地味に人気があるらしい」とのことで、今年から県が定員を1学年4人に増やしました(病院ではなく、県と国が定員を決める)。一方、例えば当院と提携している亀田総合病院は1学年22人ですし、「初期研修医が多い」ことで有名な東大病院は1学年126人です。さて、初期研修医は多いほうが初期研修医自身にとっていいのか、少ないほうがいいのか、を考えていきたいと思います。
結論から先にいうと、身も蓋もない結論ですが、人数が少ないことは良い面も悪い面もあると思います。
a.良い点
・人数が少ないと指導側の面倒見が良くなるのではないか。
初期研修医が1学年126人、2学年で252人居る病院があったとします。その病院の研修医Aさんが色々あって脱落しそうです(脱落することの是非はここでは論じない)。Aさんにとっては退職の危機ですが、一方の病院にとって、仮にAさんが脱落したとしても、252人の研修医が251人になるだけで、病院にとって大差はなく恐らく「誤差範囲」です。一方、ある別の病院は、初期研修医が2人、2学年で4人です。その病院の研修医Bさんが脱落しそうです。この場合病院にとっては、4人の研修医が3人になってしまい、少し寂しくなってしまう訳です。すると、「なんでBさんは脱落しそうなのかな」などと気にかけたりしそうな気がします。
此処から先は具体的な話になりますが、私は悩みやすい性格なのでしょうか、とてもよく悩みが生じています。特に去年の春などは、26年間住み慣れた場所を離れ新天地に引っ越してきたのもあり、悩みが多かったと思います。振り返ってみると些細な悩みだったかもしれませんが、当時は結構深く悩んでいたなぁ、と思います。どうも周りの先生方には分かるらしく、長い時間を掛けて相談に乗っていただきました。今日も私が医師をやってるのも、面倒見が良い病院だったおかげかな、と思います。
b.悪い点
・同じ立場の研修医同士での刺激が少ないのではないか。
「十人十色」という言葉がありますが、人間それぞれ考えていることは違います。違う人同士はトラブルの原因になることもありますが、逆にお互いの考えが異なることで良い刺激になることもあります。例えば、Aさん「Bさんはこんな分野に興味が有るのか」、Cさん「Dさんはこうやって勉強しているのか」など色々な面で刺激になりそうです。当然、メンバーの人数が少ない場合、多い場合に比べ刺激は大幅に減りそうです。

6.おまけ
病院職員の方が書いている、病院のfacebook公式ページ(facebookで「南相馬市立総合病院」と検索)によると、どうもまだ採用枠4人は埋まってないそうです(9月20日現在)。10月3日まで募集+それでも応募する人がいらっしゃらなかったら二次募集もあるそうです。

藤岡 将(ふじおか しょう)
1986年に東京で生まれる。以後、大学生活も含め東京で過ごす。2013年より福島県浜通りに引っ越し、南相馬市立総合病院に勤務中である。

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