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Vol.092 高校の同窓会から社会に向けて発信する -聖光学院医師同窓会 市民公開講座「いのちの選択~あなたの親が終末期を迎えたとき~」-

医療ガバナンス学会 (2015年5月15日 06:00)


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たかみざわ医院
高見沢重隆

2015年5月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


「聖光学院医師同窓会」は横浜にある聖光学院高等学校出身の医師や医学生の集まりで、現在900名ほどの会員が在籍する。3年前に立ち上げたばかりの会ではあるが、当会は医師同窓の懇親だけでなく、在校生や他職種の同窓とも協力し合いながら社会的貢献活動を行っていくことも活動目標の一つに挙げている。

今回、その第一歩として「終末期」や「高齢者問題」をテーマに市民公開講座を開催する運びとなった。講師にはそれぞれの分野で活躍している同窓医師や介護事業関係者に登壇いただき、第2部では生徒たちにも発表してもらう。今の若者たちが社会を支えていく将来、はたして親たちの世代はどのような終末期を迎えるのか?講師の方々を交え、ディスカッションも繰り広げる予定である。この会を通して社会にアピールしたいことは、「社会の『死』に対する認識を変えていく」こと。その人らしい終末期を送らせてあげるために、本人はどのような準備をし、家族はどのような選択をするべきか。2025年問題を目前に控え、今、現役世代や若者たちがこの問題を真剣に考えなければ、将来、満足のいく「終の棲家」を得られない人たちが大勢出ることになる。

一般的にこのような趣旨の会は医療系の関連学会や行政主導で開催されることが多く、ほとんどが医療介護関係者だけの会になってしまう。内容的にも疫学的観点からの将来予測や地域包括ケアの方法論などに終始し、もっと広い見地から「死」について考えていくような会はあまりみられなかった。

今回今までに例をみない、高校の同窓会が主催して市民公開講座を開催する。主催母体は同窓会の医師の集まりではあるが、そこに在校生を交え、将来は一般の同窓も巻き込んで会を運営していく計画である。高校の同窓の中には政治家や自治体の行政官、他分野の学者や宗教家、はたまたミュージシャンやマスコミ関係者などそれこそ多職種の集まりであり、この人たちが協力してくれたなら想像を超えた力で新たなものを作り上げられるのではないかと期待してしまう。

学生たちと組めば、彼らがボランティア活動を通して高齢者介護を体験することができる。また今後の社会を作り上げていくべき彼らに「死」の本質を伝えることにより、将来、彼らが発信源となり社会を変えていってくれることも期待している。このように学校という組織を多職種連携の一員に組み込みこむことにより、医療、介護、行政、そこにいろいろな業種の同窓が絡み、学生たちも参加することで画期的な地域包括ケアを実践できるのではないかと想像する。

実際には今回が第一回目の公開講座であり、まだ十分には他職種の同窓と連携を取れていない。会費徴収もままならず、今回の会を運営するにあたりじつは一銭の資金もない。しかし、会場は高校のホールを使用し、講師はすべて同窓生にお願いする。学生たちにも手伝ってもらうことにより、ここまではお金がかからない。問題は広報手段であるが、同窓や在校生、父兄には学校を通じて案内してもらい、医療関係者にはメーリングリストやSNSを通して発信していく。社会一般の方への広報が今後の課題ではあるが、来年以降はマスコミや自治体関係者、地元町内会などの同窓と密に連携をとり、その人たちを通して広報していきたいと考えている。今回MRICに投稿したのも、多くの方にこの会のことを知っていただき、いらっしゃれなくても興味ある方にご紹介いただきたいという気持ちを込めて書かせてもらった。

望むべき終末期のあり方とは、決して一分一秒命を長らえることではなく、また家族の意向だけに捉われるものではない。本質はその人らしい「死に方」を貫き通すことである。最期まで病と闘い続けると本人が決めたのなら、それに従い最善の医療を提供しましょう。もうこれ以上頑張らないと本人が決めたのなら、見守っていきましょう。本人の意思が分からないときには、その人が歩んできた人生を振り返り、もっともその人らしい「死に方」を家族と一緒に考えてください。ナラティブ(その人の生きてきた道や死後の世界も含めた〝ものがたり“)を作り上げることにより、死に逝く人のこころも家族のこころも安寧が得られます。

看取りをする医療者の多くがこのように感じているはずである。しかし社会の慣習や法律の縛りにより、現状ではあまり行われていない。現場で感じていることを社会に発信し、社会の方々の意見を参考にしながら修正を加え、最終的に社会的通念を変えていく。このような目的を考えたとき、多職種の集まりである同窓会という組織はうってつけの集団であると考える。地域的にも横浜に多くの同窓が集い、「地域包括ケア」の観点からも好都合といえる。役所のなかにも同窓が居る。高齢者に関連する職種のなかにも同窓が居る。これら方々と同じ方向性をもって「死」を見つめていけば、きっと先ほど述べた死生観を共有し、形あるものに変えられるのではないかと考える。そしてまとめあげたものをマスコミに居る同窓の力を借りて社会に発信したら、それこそ一地方の小さな高校同窓会から全国に向けアピールしていくことができるのではないかと夢は膨らむ。

私たちから社会に訴えかけていかなければならないことがある。私たちから次の世代を担う若者たちに伝えなければいけないことがある。高校の同窓会というちっぽけな団体ではあるが、そこから社会を変えられる日を夢見て今後も活動を続けてまいります。

第1回 聖光学院医師同窓会 市民公開講座
「いのちの選択 ~あなたの親が終末期を迎えたとき~」

会場: 聖光学院 ラ・ムネホール (JR根岸線 山手駅下車 徒歩10分)
日時: 平成27年6月7日(日) 午後1時~4時
入場: 無料      予約: 不要 (どなたでも参加できます)

第1部
講演1.「救急センターに搬送されてくる心肺停止患者の現況」
済生会横浜市南部病院 救急センター長  豊田 洋先生
講演2.「暮らしの場で最期を迎えるということ」
ホームケアクリニック横浜港南 院長  足立大樹先生
講演3.「高齢者介護施設におけるターミナルケア」
㈱ベネッセスタイルケア サービス基盤本部本部長・介護事業担当  岸本譲太氏

第2部 「これからの時代を支えていくのは僕らだ」
司会  たかみざわ医院 院長  高見沢重隆
・指定発言  3名の生徒たちから調べてきたことを発表してもらいます
・ディスカッション・タイム
ご質問・お問い合わせは、taka-iin @basil.ocn.ne.jpまでメールしてください。

聖光学院医師同窓会 幹事
たかみざわ医院   高見沢 重隆

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