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Vol.110 三春町住民を対象とした甲状腺超音波検査と尿中ヨウ素の検査結果が公表されました

医療ガバナンス学会 (2016年5月9日 06:00)


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医療法人誠励会 ひたら中央病院
事務課 阿部美紀

2016年5月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

ひらた中央病院では、福島原発事故後の放射線による健康被害のフォローおよび不安解消のため、2012年10月から県内外23市町村と協定を結び、甲状腺検査を行っています。震災から約5年となる3月3日、甲状腺超音波検査と尿中ヨウ素濃度検査結果を発表しました。

【結果の概要】
今回の発表は、震災前かつ震災後の超音波検査時に三春町に居住していた小中学生の結果が中心です。福島県中部に位置する三春町は、福島原発事故後、放射線対策を積極的に行ってきた市町村の一つ、当院とは検査委託協定を結び、2013年9月から3年間、小中学校に通う児童全員を対象に、甲状腺超音波検査と尿中ヨウ素濃度検査を行ってきました。これまで年1回の検査を3年間継続して行い、約96%の児童が検査を受診しています。
結果、2013年9月から2015年11月までに延べ3,447名の甲状腺超音波検査が行われました。3年間で延べ30名の方がB判定、1名がC判定と判断されましたが、甲状腺がんと診断された方は0名でした。尿中ヨウ素濃度検査は、3年間を通して、延べ2,663名が受診。重度のヨウ素欠乏といわれる20μg/L以下の方はおらず、58%が200µg/L以上でした。日常の食生活からヨウ素摂取が十分であり、「放射性ヨウ素からの被ばくに不利である」とされるヨウ素欠乏を示す生徒が非常に少なかったことを示しています。

詳しくは、下記をご覧ください。
公益財団法人 震災復興支援放射能対策研究所

http://www.fukkousien-zaidan.net/research/%E7%AC%AC%EF%BC%92%E5%9B%9E%E7%94%B2%E7%8A%B6%E8%85%BA%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E5%85%AC%E8%A1%A8_%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E7%89%88.pdf

朝日新聞

http://www.asahi.com/articles/ASJ34775SJ34UGTB01W.html

福島民友新聞

http://www.minyu-net.com/news/news/FM20160304-054909.php

【当院が甲状腺検査を始めたわけ】
福島第一原発事故による放射線の健康不安の中で、「甲状腺がん」は非常に大きな部分を占めていると思います。当院では、これまで検査者全員に超音波検査を行い、小学生以上の方には、血液検査(6項目:TSH・FT3・FT4・HTg・TgAb・TPOAb)、さらに震災当時、主に18歳以下の方には、尿中ヨウ素濃度検査も行ってきました。検査は、震災当時18歳以下の方は基本的に無料です。一般的に甲状腺がんは予後のよい病気であり、想定される被ばく量からは、検査をした結果、過剰な介入をしてしまう可能性も指摘されていることは重々承知しています。

しかしながら、検査をして、「結果の説明を十分にして欲しい」「細かい説明が聞きたい。」「早く検査がしたい」という要望は強く、当院はその声に応えるべく、検査だけでは無く集団説明会や個別に医師からの説明をする体制を整えてきました。「この検査で何がわかるの?」など質問にも個別に対応できる体制をとることにより、少しでも不安の解消に繋がるよう検査を続けています。当初はテレビ・新聞などで知った方からの問い合わせは多く、毎日電話の対応に追われました。早期の検査を希望する方は、学校や仕事を休んで平日検査に来院する方もいます。多い時では、1日20名程になりました。今では徐々に口コミが広がり、最近では、定期的に検査を受けに来院する方が多くなっています。2015年度1年間で、3,143名の検査をしました。

春休みや夏休みなど長期の休みが近づくと、県内からはもちろんの事、県外に避難している方からの問い合わせが増えます。「夏休みに孫が帰省するから、帰省にあわせて検査がしたい」と、福島県内に住むおばあさんから電話頂くこともありました。なるべく希望に沿えるよう検査と結果説明をしてきました。
ある日、検査のため20代のご夫婦がお子さん2人を連れ来院しました。この家族は、帰還困難地域から県外に避難をし、避難先では自分たちが福島県民であることをふせて生活をしておられました。
「やっぱり福島は落ち着きます。」お父さんの言葉がとても印象的でした。
「避難先の周囲で放射線の健康被害の話題になっても、極力さけるようにしています。」

お父さんと、避難先でのこと、子供の将来のことなど話しました。少しの時間でしたが、話が進むうちにお父さんの表情がやわらかくなってきたのがわかりました。検査するだけではなく、コミュケーションの場所を持ち続けることが必要だと痛感しています。
「震災で避難する時、道路が歪んでいた。みんな必死だった。」震災当時の避難の状況を話すこともありますし、「子供の学校の課外授業で芋ほりがある。去年は心配で参加させなかった。でも、子供には泣かれた。今年は絶対参加したいと子供は言っていてどうするか悩んでいる。」など子供の野外活動についての心配を聞くこともあります。いろいろな不安をかかえて生活しているなかで、コミュニケーションを続ける必要があると思っています。

もちろん中には、とても厳しい表情で検査に来院する方もいます。検査についての不満や「東電と関係しているだろ。検査はきちんとできているのか。」など言われることもあります。とても、悲しい気持ちになります。「民間の病院です。きちんと検査をして検査結果も医師から説明をしています。」と話をし、ご理解頂けることもあれば、そうでは無いときもあります。毎年検査に来院される方ももちろんいます。確かに検査開始から4年が経ち、最近では定期的に検査に来院する方が増えてきたせいか、お話しをされる方は少なくはなってきています。みなさん淡々と、毎年検査を続けているようにも感じます。

2015年度は、福島県三春町と茨城県大子町の児童が学校健診の一環として、大型バスで甲状腺検査に来院しました。集団の検査が開始されると、町からの名簿に基づき、カルテを作成する作業が始まります。個人情報の入力、検査内容の確認。事務室には、検査日ごとに並んだカルテの箱がずらりと並びます。

検査の日、児童は勉強道具を持参してきます。2015年度で三春町は3回目、大子町は2回目の検査となり、自分の検査になるまで勉強や読書をして待ちます。検査の中で、一番大変なのは、尿中ヨウ素濃度検査での検尿です。下級生は緊張してしまい、タイミングが悪くおしっこが出なくなってしまう子もいます。病院で勤務する託児所の先生に協力してもらったり、職員が緊張を和らげたりしながら検査を行ってきました。検査が終わると、個人情報の確認、問診内容の入力、医師による判定、検査結果の入力、そして結果の出力。やらなくていけないことが、たくさんあります。多くの事務処理が甲状腺検査と同時に始まります。何度もチェックを重ね、個人情報の取り扱いには十分注意し、気か抜けない作業が続きます。少しでも早く結果が届けられるよう対応しています。

福島県は『県民健康調査』甲状腺検査を、福島県の子供たちの健康を長期に渡り見守りするため行っています。当財団でも、2012年10月から甲状腺検査を開始し、集団での結果説明会やエコー写真を見ながら医師が直接検査結果の説明を行い、検査者の方の声に耳を傾け検査を続けてきました。現実的には予算・人員の問題など、厳しい面が多くあります。少しでもこのような活動が放射線による健康不安の解消と、福島県民のよりより将来につながるよう個別検査や情報発信に努めていきたいと考えています。

1) 医療法人誠励会 ひらた中央病院

http://www.seireikai.net/

※1公益財団法人 震災復興支援放射能対策研究所

http://www.fukkousien-zaidan.net/

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