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Vol.245 現場からの医療改革推進協議会第十一回シンポジウム 抄録から(1)

医療ガバナンス学会 (2016年11月14日 15:00)


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(参加申込宛先: genbasympo2016@gmail.com)

2015年11月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

【ご挨拶】13:00-13:15

林 良造

この協議会も11回目を迎える。
第1回では、各現場で全くバラバラに起こっているように見える問題が取り上げられ、そこにかかわる多くの人が意見をぶつけ合う中で、対話を阻んでいた垣根や不信が徐々に消えていき、よりよい医療をと願う気持ちが形となっていくという、大変新鮮な試みに感動したことを鮮やかに記憶している。
それ以来、多くの問題が取り上げられ議論されてきている。例えば、薬害を防ごうとする思いと最新の医療を早く届けることの両立、日本に数多くあるあるイノベーションの芽とそれを育てようとするとその過程に待ち受ける無限と思われる障害、より多くの患者を救いたいという医師の思いが基本にありつつ生じる医療事故と法的責任を追求したいという患者・遺族の気持ちの中でどのように再発防止に結びつけるかという制度設計の問題も多様な論点から幾度となく取り上げられてきた。
また、現場で不可欠になっている医療と介護の連携、医療の偏在や臨床研究をめぐる研究不正、さらには教育問題や東日本大震災からの復興にかかわる問題など紹介しきれない数の論点が様々な角度から取り上げられてきた。
そして、現場からの声を発信し続けることによって現場でのインセンティブ構造を踏まえた改革の後押しをし、現場でワークする制度改革に向かって一定の影響を与えてきたと思う。他方、多くの人の考え方の変革にかかわることも多く結果に結びつくまでに時間がかかると感じられることも多く、また、根深い病根や新たに湧き上がる問題など改革の課題は尽きない。
さらに、改革が進展する一方で、このところ微妙に変わってきているような点もみられる。たとえば、皆保険制度をはじめとする現在のシステムの持続可能性を懸念する声が次第に大きくなってきている。そして、数字の上では一挙に解決できそうな骨太に見える処方箋も提唱されている。
しかし従来そのような中央の机上で考えられた処方箋、特に価格を操作する方策は、現場に混乱だけを残すということも多かった。
我々としては、解決策は常に現場にあるという原点を忘れず、現場の目から正当な懸念と言い訳を選別していく細やかな作業を忘れないようにして進み続けたい。
【Session 01】コンビニクリニック 13:15~14:25

●コンビニエンスクリニック
濱木珠恵

ナビタスクリニックは立川、川崎、新宿の駅ナカで、週末や遅い時間も診療しており、「日中働いていて医療機関に受診できない会社員が、仕事を休まずに受診できるクリニック」として、利用者視点で便利と思える医療の場を提供している。
体調が悪ければまずは自宅で休養するのが一番だが、そうそう仕事を休めないという現状もまた事実だ。従来、緊急性がないにも関わらず休日や夜間に総合病院の救急外来を受診する行為を「医療のコンビニ化」と言っていたが、今後、言葉の定義は変わると思う。
ナビタスクリニックの最大の特徴は駅ナカに存在し、平日は21時まで診療していることである。2015年度の1日平均乗車人数は、JR立川駅は16万人、JR川崎駅は20万人、さらにJR新宿駅は76万人と、JR東日本の中でも有数である。
新宿駅のJR・私鉄を合わせた乗降客数は364万人を数え、2011年にギネスブックに世界一と認定された。
これらの駅は職場のある駅であり、ベッドタウンに繋がる駅でもある。東京都では仕事から帰宅平均時刻が19時45分という調査があり、アクセスの良い場所に終業後も受診できるクリニックがあれば、軽症のうちに受診しやすいだろう。実際、受診は若い人や女性が多く、熱・咳・咽頭痛・鼻水など風邪症状が中心である。
小児科が併設されているため、子連れの母親も多い。受診は午前と午後の診療開始直後、仕事終わりの18-19時台に多く、夜は年配の男性が増える。また土曜日にも男性の内科受診が多くなる。
米国でも「リテールクリニック」と呼ばれるコンビニクリニックが急増している。
日常に近い食料品店や薬局の中で週末や夜遅くまで開いていて、予約不要で医療費も安い。若い女性が多く利用し、感冒など重症ではないが明日まで待つのは辛い疾患で受診している。
このような日常の延長線上に、コンビニエンスクリニックの存在価値がある。

●地域住民、患者さん、スタッフのニーズを満たす
梅村 聡

2015年9月、私が生まれてからの30年間を過ごした、大阪・十三(じゅうそう)で内科の診療所を開設した。また、私が理事長を務める医療法人の名前は、大阪大学発祥の由来にちなんで「適塾会」と名付けた。
診療所をスタートするにあたり、私たちは仲間と話し合い、テーマを設定することにした。そして決まったテーマは「自分たちの都合ではなく、関係する様々な方のニーズを徹底的に満たしていこう」であった。
十三という町は、大阪市淀川区にあり新大阪駅からも近く、また最近人口増加が著しい地域である。にも関わらず、この町にある某公的病院は救急車の受け入れを夜20時以降は行わないという状況であった。
そこで様々な住民の要望を聞く中で、夜間遅くまで開いていることをうりにしようと、診療時間を22時までに設定した。大阪市内の内科系ではおそらく初めての試みであった。開院後、分かったことは、住民の利用もあったが、働く若い世代が電車に乗ってやってくることも多いことだった。実は、
今、医療に一番恵まれていない層は、働く世代ではないかと考えている。
医師の確保は比較的容易であった。まず院長は子育て中の女性医師に担ってもらった。朝の診療開始時間は10時なので、子供を送り出してからも十分に勤務することが可能である。国や医療団体は「女性医師の活躍」と声高に唱えているが、実は診療所で一定の責任を担ってもらうことが非常に理にかなっていると考える。
また大学で勤務する医師が外勤(アルバイト)する場合、現状では昼間の外来が多いので、大学から外勤先に向かいまた大学に戻るという非常に効率が悪い動きになる。
当院で18時以降に働いてもらいその後、帰宅という形にするので日中は大学勤務の医師は、大学内の業務に専念することもできる。
このようにそれぞれの立場を出来るだけ考慮した診療所のモデルが今、スタートしたところである。

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