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Vol.270 瞬時に内視鏡組織診断を下す人工知能の衝撃 ~いつでもどこでも専門医の診断が受けられる日常への大きな一歩~

医療ガバナンス学会 (2016年12月7日 06:00)


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武蔵浦和メディカルセンター
ただともひろ胃腸科肛門科
多田 智裕

2016年12月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

「これは本当に素晴らしいことです、新米の医者でも経験を積んだ医師と同じレベルの診断が下せるようになるのです!」

11月5日 2万人を超える消化器科医師が集うJDDW2016における、内視鏡の未来を考えるシンポジウムはこの言葉で締めくくられました。

紹介されていたのはCAD(Computer-aided diagnosis system)と呼ばれる内視鏡診断システムでした。このシステムを用いた、わずか0.3秒のコンピューター診断により内視鏡専門医(平均4秒)よりも早く、同等(95%以上)の正確性で腫瘍の組織診断が可能になったのです。

こちらで動画が確認できます。

http://www.giejournal.org/article/S0016-5107(14)02171-3/fulltext

自動問診診断システムでも正答率は90%以上

このような、人工知能を活用すれば、専門医レベルの診断技術を誰でもどこでも享受することが可能になっていきます。

例えば、数万人におよぶ治療データーを専門医がシステムに学習させた、誰でも無料で利用できる診断システム、肛門科.jp
では、http://koumonka.jp

画面でタップして問診に答えるだけで、実際の視診などがないため、100%とまではいきませんが、現状で90%近くの正確性で、肛門科疾患については診断がついてしまうのです。

受診前に事前にこの質問に答えておいてもらい予備診断をつけておくことで、実際の医師の診断までに要する時間を短縮することが可能になり、その後の治療方針の決定に時間を使うことができるようになります。

また、自動問診システムだけであれば、24時間いつでもどこからでも参照可能なので、すぐに専門医を受診できない時にとりあえずおおよその診断の目星をつけて、対処することにも役立つでしょう。

内視鏡においてさらに期待されること

内視鏡においてはさらに、病変の診断だけではなく、病変の検出も人工知能による補助が期待されます。

胃癌と大腸癌予防のためには内視鏡検査による早期発見が一番効果ありますが、現在、撮影した大量の内視鏡写真の読影(診断)の部分で限界をきたしつつあります私がさいたま市の検診読影委員会で診断する、内視鏡画像は1時間でおよそ2100枚に及び、わずか1時間でも疲弊してきついです。

画像認識において、人間を上回ったとされる人工知能にて予備診断(病変の拾い上げのサポート)ができれば、

具体的には

http://expres.umin.jp/mric/mric_270.pdf

図のように事前に重点的にチェックすべき部分を抽出して読影作業ができれば、より多くの内視鏡検査を正確に診断できるようになると見込まれます。

人工知能の学習能力がどこまで進んでくれるかにより、診断拾い上げ能力に限界も出てくるでしょうが、内視鏡専門医として自分自身でも開発にぜひ関わってみたいシステムです。

診断にかかる負荷が減ることにより、医療はますます発展する

新人でも専門医と同じレベルの診断が下せるということは、患者側にとってみればいつでもどこでも専門医と同レベルの診療を受けられるということで素晴らしいことです。人工知能による医療診断技術はそれを可能にできるくらい発達してきたのです。

冒頭で紹介した、腫瘍のコンピューター組織診断がこれから検証を重ねて、本当に専門医と同等性の診断であると結論づけられれば、組織を採取して病理専門医が診断する作業は無くなります。

診断システム、肛門科.jp

http://koumonka.jp

も、下手に専門外の医師が診断するよりも、誰でも使えるコンピューター診断の方が高い正答率を出すということは、他の科目にもこのシステムが広がれば、単なる病気の診断を行うだけの医師の仕事は激減します。

だから医師の仕事がなくなるという意見を述べる人もいますが、私はそうはおもいません。人工知能にアシストしてもらい診断に要する負荷が減る分、新たな治療法が次々と開発される原動力となると思っているからです。

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