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Vol.122 チャレンジャーが集まるまち、福島県いわき市から近況報告

医療ガバナンス学会 (2017年6月8日 06:00)


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松本丈

2017年6月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

はじめまして。福島県いわき市に5年前にUターンをし、まちづくりを事業として仕掛ける仕事をしています松本丈(まつもとたけし)と申します。2011年から夜明け市場というシャッター街をリノベーションして復活させるプロジェクトや、2015年からは地域プレーヤーのアクションを後押しする「浜魂」というピッチ&ブレストイベントを開催しています。

いわき市は、福島県南部の浜通り地域に属する、震災後は原発事故の避難者の方々も多く移住したことで人口が3万人増えたまちであり、そして、医師不足問題や新病院建設などで何かと話題になりMRICにもたびたび登場するまちです。先日は、医師不足に起因し、脳疾患患者の3割は救急診療の受け皿がなく市外に時間をかけて搬送されてしまうということが話題になりました。

まちづくりに全力を注ぐ人間として、医療は、まちのインフラの根幹であり、医療体制が整っていないまちには人は集まらない、いくら行政がUIターン施策を打っても医療がまともに受けられない住みにくいまちでは仕方がないと思っています。なので、いち市民として、医療問題には注目していますし、市民だからこそ、できることは協力をしていかねばならないと思っています。選挙に行こうというのと同じように、誰かがやってくれるだろう、今は健康だから関係ない、と自分事化されにくいですが、きちんと市民として意見を言わないと、閉じられた世界で利権や覇権争いの温床になり適切なガバナンスが効きにくいのが、医療問題だと思います。自分の親の老後や未来の子供たちのためにも、積極的に声をあげていきたいです。

一方で、医師不足問題と医師の負担軽減のために市民としてできることはいくつもあり、声をあげることもそうですが、運動をし食生活に気を付け健康であること、大した病気でもないのに救急車を呼ばない、通院しない、などは当然ですが、私が考える市民だからできることは、医師にとっても住みやすく住みたい魅力のあるまちをつくること、です。

医師も人間であり、当然、家族もいて日々の生活をその病院のあるまちでしています。
医師が来たいと思えるまちにすることが、そのまま活気あるまちづくりにも繋がるはずです。しかし、ただでさえ原発事故の影響で、未だに福島というだけで現状を知らない外部の人にはイメージが良くないのも事実ですから(実際はかなり復興も進み普通の暮らしをしている人の方が多い普通のまちですが)、医師に外から来てもらえるまちになるには、そのマイナスイメージを打ち消すような魅力がないといけません。県外・市外の人が羨ましがるぐらいの子育てしやすい環境、おいしい飲食店、地元の人たちとの交流、地域からの応援・感謝、そういったものがあると外部から医師も来やすいのかなと思います。

そこで、私が最近、特に力を入れていることは、いわき駅から徒歩5分、「大工町」という夜明け市場がある白銀町の隣の街区のまちづくりです。その名の通り、かつては大工などのものづくりの職人が多くいたまちですが、時代とともに職人はほとんど姿を消してしまいました。そして、昼間はほとんど歩く人のいない、寂れたまちになってしまいました。この大工町を、現代のものづくりを含めたクリエイティブな方々を集めて復活させようとしています。そして、なんとか昼間のまちなかに人通りを取り戻したいと思っています。

昼間のまちなかを復活させようとしたときに、必然的に、ターゲットは、子育て中の女性や子供、高齢者など、日中まちに出掛けられる人たちとなります。その中でも、まずは子育て中の女性と子供が集いやすい仕組みを用意しつつ、大工町の産業であったものづくり産業を現代に合わせて復活させたいと思っています。

そんなまちの戦略を進めているなか、なんと!私の妻が、大工町のリノベーション第一号物件のテナントとして創業することになりました(笑)最後に、この場を借りてご紹介をして締めくくりたいと思います。

■ichi プロジェクト
社会保険労務士である私の妻が、「子育て」と「働く」がのびのびと共存できる場をつくろうと、託児サービス付きカフェ「ichi」を今年の9月オープン目指して活動しています。子育て中でもハンドメイドなど趣味を楽しめるようにものづくり工房も併設しています。寂れたしまったいわき駅前に子育て中の女性や子供が集まる場所をつくり、まちの活性化にも寄与しようというプロジェクトです。
6月末までクラウドファンディングに挑戦していますので、ぜひシェアして頂くか少額でもご支援頂けると有り難いです。
プロジェクトの詳細とクラウドファンディングの募集ページ: http://www.kickoffjapan.com/fukushima/project/s/project_id/99

実は、ここでのご紹介がしきれないほど、いわき市は、多くの地域内外のチャレンジャーが奮起し、新しいことが立ち上がる、とてもエキサイティングなまちです。震災や原発事故があったからこそ、震災前以上のまちにしていこうという雰囲気があります。震災がもたらした混乱や危機感は、混沌とともに新しい変化を生み出すエネルギーに変わっていて、何かを成そうとするならば、とても挑戦しがいのあるまちでもあります。
この挑戦しがいがある、というのも、大切なまちの魅力だと思います。
多くの人にとって住みよいまちは、医師にとっても住みよいはず。ぜひこの大きなうねりを加速させていきたいです。

【松本丈プロフィール】
1982年、福島県いわき市生まれ。新卒で不動産ベンチャーに就職するもリーマンショック時に破産し無職を経験。その後、同郷の親友・鈴木賢治が立ち上げた(株)47PLANNINGに入社。2011年、同社の仲間達と立ち上げた(株)夜明け市場の創業とともに、いわき市にUターン。2013年、地域のプレーヤーを増やす為、NPO法人TATAKIAGE Japanを立ち上げ理事長に就任。建築不動産のハード、人づくりコトづくりのソフト、両面からのまちづくりを実践中。

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