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Vol.202 地域に根付いた医療が学術的活動につながる

医療ガバナンス学会 (2017年10月2日 06:00)


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この原稿は医療タイムス2017年9月18日号からの転載です。

南相馬市立総合病院 外科
澤野 豊明

2017年10月2日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私は2014年4月に福島県南相馬市に臨床研修医として赴任し、その後外科医となり、手術をする傍ら、東日本大震災で被災した地域の医療問題に関し調査を行っている。研修先を南相馬市に決めたのは「放射線災害に被災した地域の役に立ちたい」という純粋な思いからで、当初は私が何かを研究するとは微塵も考えていなかった。しかも、南相馬市がある相双地域では、東日本大震災の前から人口当たりの医師数が少なく、私が専攻している科が外科ということもあり勤務時間が短くはない。だが、震災直後から南相馬で放射線被曝の研究をしている坪倉正治先生や、同じく外科医で災害後の避難による社会変化の研究をしている尾崎章彦先生をはじめ多くの先輩の手厚い指導のおかげで、医師になってから現在までの約3年半で、筆頭著者4篇を含む14篇の英語論文を発表することができた。

その中でも興味深いのが除染作業員の健康問題だ。赴任当初、市内に意外にコンビニが多く、そのコンビニが朝夕に混雑していることに気づいた。しばらくして、除染作業員のためにコンビニが多く立ち、混雑の原因もまた彼らであることを知った。当時研修医だった私は救急患者を診ることも多く、除染作業員がよく救急搬送され、重症者が多い印象を持っていた。研究を始めたきっかけは、指導医から「実際に調べてみればいいじゃないか」といわれたことだった。調査をすると、入院した除染作業員には生活習慣病が未治療のケース、生活習慣病のコントロールを悪化しているケースが少なくないことに気がついた。それを証明するため、50歳代の男性作業員が糖尿病を悪化させ、クレブシエラ肺炎という基礎疾患を持つ人に起こりやすい肺炎で亡くなった例を症例報告として最初に発表した。

症例報告に引き続き、入院した113人の除染作業員の観察研究を行い、入院した作業員には生活習慣病が多く、その8割近くが無自覚あるいは未治療であることを英国医学雑誌から発表することができた。実は除染作業員の健康問題は、公衆衛生の世界では非常に重要な課題である、Socio-economic status(社会経済的状況)に強く結びついていると考えている。災害時には、平時からの問題がより浮き彫りになる傾向がある。除染作業員に関して調査を続け、社会経済的状況と健康状態に関してさらに明らかにできればと考えている。地域に根を下ろして医療を行っているからこそ、こういった調査ができると感謝している。

南相馬市で働くことは、外科を修練している立場としても実は恵まれた環境だ。当院の外科には、若手は自分だけなので多くの手術を執刀させていただいている。そのおかげもあり、専攻医となってわずか1年で専門医の受験資格の症例数を超えた。また南相馬市は震災を機に多くの病院で規模が縮小し、当院には救急患者が多く受診するが、常勤医がいる診療科が少ないため、さまざまな症例を外科でも見る必要がある。そのため、調べながら診療をすることも多いのだが、その調べながら診療をすることが症例報告や学会発表につながることが実はとても多い。経験する症例が多いおかげで最初は半年かかった症例報告も、執筆を繰り返すうちに段々と執筆スピードが格段に早くなった。地域に根付いた医療は、学術的な活動を対照的に見られることも多いが、実はそうではないと身を持って実感している。この経験を生かして、今後も臨床を続けながら研究も続け、世界に発信を続けていきたい。それが南相馬市の魅力の1つだ。

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