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Vol.127 遠隔地の資源を集めて地域を支援―こども食堂の実践から―

医療ガバナンス学会 (2018年6月22日 06:00)


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帝京大学大学院公衆衛生学研究科博士後期課程
齋藤宏子

2018年6月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私は2人の子持ちの学生です。大阪2児餓死事件(2010年)や児童貧困問題に衝撃を受け、「食事ぐらいなら作れるのに」と大学院の同級生やママ友を誘って、2年前に新宿でこども食堂を立ち上げました。この2年間の学びの一部をお伝えしたいと思います。

私たち食堂の特徴は、こどもたちの安心安全のため取材・見学は一切お断り。チラシは行政の生活保護受給やシングル家庭の支援窓口、保健師、こども家庭センター、無料学習塾で手渡しをお願いしています。現在、毎回約70名が来店し、月2回、100円で夕食を提供しています。

食堂という集客装置を持つ私たちは、PFA(Psychological First Aid for Children)の行動原則「見る・聞く・繋ぐ」に徹しています。つまり、自分たちに資源があってもそれは支援を必要な家庭を見つけ出す力として使い、介入は他者に任せてより多くの家庭と出会い、弱い紐帯の永続的な関係を結んだ方が効率的だと感じています。

先日、三重県のNPOから新宿の家庭を一緒に支援してもらえないかと連絡がありました。このNPOは全国の支援団体に寺の供物を送付して各団体の理念や活動を把握し、連絡を取ってきた家庭を近くの支援団体に紹介する活動をしています。

紹介家庭からニーズの聞取りをしたところ、病気療養中のお父さんと発達障害のお子さんを非正規雇用のお母さんが支えており、療養に関する悩みと経済的な問題を抱えていました。ボランティアには医療専門職やケースワーカーもおりますが、病気やお子さんの状況から食堂にきていただくことは困難でした。

また、制度の狭間で行政の支援を利用できないことや、障害年金が未申請なことも判明。了解を得て、過去に活動に参加していた北海道のがん支援のNPOの代表に相談し、医師、行政書士、社労士でチームを組んで医療相談と申請を支援してもらうことにしました。また、寄付品を保管する大型冷蔵庫や畑を所有し、困窮家庭に生鮮食品の宅配をしている練馬のこども食堂に相談し、彼らの基準には該当しないがじきに該当するとして週1の宅配が実現しました。また、スピリチュアルケアやグリーフケアを三重のNPOに担当してもらいました。私たちはお母さんと支援団体のそれぞれとやり取りをして支援が円滑に進むよう見守り、お父さんご逝去の折には僧侶のボランティアとご自宅に弔問に伺いました。

地域包括を推進するにあたり、社会処方をするにも資源がないという言葉をよく聞きます。しかし地域外の豊富な資源を普段から把握し関係を結んでおくことで、解決できることもあるのです。私たちが現場で活動して得た学びとしてお伝えします。

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