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Vol.159 “不安”から治るという“希望”へ ー子宮頸がんワクチン「副反応症状」に携わって

医療ガバナンス学会 (2018年8月7日 06:00)


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この原稿は大阪保険医雑誌 2018年6月号からの転載です。

リン カイロプラクティック(神戸市)
林 碩虎

2018年8月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


りん せきほう
1967年生まれ
カイロプラクティックを背景とする柔道整復師。臨床歴は29年目になります。
臨床でのモットーは、「鍵は患者の内にあり、内なるチカラを引き出して上げる」
起立性調節障害や子宮頸がんワクチン接種後不快症状の方々全国からの依頼が山積して来ていて、医療機関の先生方と患者との橋渡し役に。

私は、カイロプラクティックを専門に施術する柔道整復師であり、治療家としての経験は29年になる。
子宮頸がんワクチン接種後に原因不明の症状に苦しむ患者さんの初めての施術は、2013年5月26日で、私のブログを通してメール相談のやり取りがあり、先方から依頼されたのがきっかけ。その後、治療を受けた方から話を聞いた方などから治療依頼が続き、2018年5月現在、私と埼玉県上尾市の望月先生を合わせて、約110名(単回施術約10人含む)の方を治療してきた。
腰痛、筋肉の腫れ、関節痛等の不快症状は施術で解消できるが、数時間で再発するような症例を数多く経験した。
これまでのカイロプラクティックの治療ではこの年齢の子らにしてはあまり経験のない事であり、治療に難渋した。2014年3月頃には、これら症状は自律神経系の問題によって引き起こされており、何らかのストレスを意識無意識を問わずに感じ、それに対する反応として身体に様々な症状を発現しているのだと考えるに至った。治療法、施術法が確立された2014年5月辺りから今まで、延べ95人を治療し、うち75人が回復した(中止、転医は13人)。
少女達の身体に何が起きているのか、彼女達を取り巻く家庭や医療の環境は果たしてどうなのか、全ての可能性を念頭に置いて治療に取り組んできた。今回、私の臨床経験の中から5例を提示し、考察を述べる。

・カイロプラクティックとは
1895年にアメリカのダニエル・デビッド・パーマーによって創始された手技療法。世界保健機関は補完代替医療として位置づけており、発祥国のアメリカや、イギリス、カナダ、オーストラリア、EU諸国など約40か国が、主に筋骨格系の障害を取り扱う脊椎ヘルスケアの専門職として法制化している。日本は法的な資格制度が存在せず、民間療法としては残念な事に誰もが自由に開業、施術が可能である。
カイロプラクティック手技は、主に脊柱の関節面に添い、手によって軽度な素早い物理的な振動や刺激を脊柱に加え、それが神経受容器を通し脊髄中枢へと伝達され、脳神経機能を平準化、活発、鎮静を与えようとする行為である。

・少女達に共通する症状
2013年12月22~23日、東京都日野市の池田としえ市議(HPVワクチン被害者連絡会事務局長)に招聘され、14名の同様の症状を持つ少女達を施術した。頭痛、腹痛、吐き気、耳鳴り、ふらつき、円背、脱毛、低血圧、手足の冷え、痺れ、飲食前後の不快症状であり、中にはパニック発作、歩行困難、起立不能、記憶力低下、視野狭窄、不随意様運動を呈したり、車椅子や起立、座位保持不能の子もいた。さながら野戦病院の様相だった。
徒手筋力テストで2~3、4のレベルであっても足や手を動かせない、歩けない患者がいた。また短時間、短期間の間に軽快~解消と悪化を繰り返すため、脳や筋肉、末梢神経の器質的な病変では説明できないと考えた。
ほとんどの患者が頭痛腹痛を訴えており、施術の時に腹部を触ると、明らかに硬いと言う印象を持ち、消化管の動きが低下しているだろうと読み取れた。それからは胃腸に負担となる食材を控える方が良いのではないかと考え始め、食事の指導も取り入れた。それ以降(2014年の年明け)、同様の治療法で回復する患者が続くようになった。

(1)
症例Aさん 接種時13歳  サーバリックス三回、西日本在住
平成23年8月、23年10月、24年2月に接種。
接種後3回目から割れそうな頭痛から始まり、手足の痺れ、記憶力低下、ふらつき、起床困難が継続。
平成28年11月に初めて受診。以降一か月後、2カ月後施術実施。

◆考察
会話にならない程の頭痛による苦悶を見せていた。視診、触診にて脊柱、特に胸椎の弾力性欠如、同部位の筋筋膜の膨隆を確認し、飲食前後に限らない腹痛を訴える。
カイロプラクティック的徒手にてお腹の緊張を取り、脊柱への施術、超音波機器による照射にて筋膜硬結を徹底的に弛緩後、歩行、立位での体幹屈曲伸展にて著しい改善が見られた。
引き続き、消化に優しい食べ物や刺激物を控えるよう、良かれと思われた栄養素指導。
計3回の施術にて完全寛解、無症候にて今日現在に至る。

(2)
症例Bさん 接種時13歳 サーバリックス三回 西日本在住
1年半の車椅子生活で遠方から治療に訪れた。車椅子生活のせいで仙骨周りの臀筋群が異様に緊張しており、手技や超音波にて弛緩させ、カイロプラクティック手技を用い、一度の施術で普通に歩き始める。今では大学に進学され、何ら不快症状は発現せず。いわゆる身体表現性障害の様な症状であっただろうと考えられる。

◆考察
徒手療法家として何気ない仕草、動作を見逃さず、車椅子上での足関節の背屈や大腿部の内転、挙上。つまり、運動神経は“活きている”と踏まえ、明らかな硬結が大臀筋や中臀筋周りにあった為に超音波機器照射や手技にて弛緩させて仙腸関節にカイロプラクティック的手技を加えた後に休息させながら過去に楽しく走っていた、歩いていたイメージングで頭の中を満たす様に指示し、立てるよ大丈夫、歩けるからと鼓舞しつつ、介助しながら立位、座位へと移行させて、後は走っているイメージを思い出しながら立って見ましょうと。
結果、普通に立てて歩き始め、数メーター走れるようになり、その後から今まで日常生活、全く健康そのものである。

(3)
症例Cさん ガーダシル接種時15歳
1回、2回目の接種後から徐脈、低血圧、便秘、肩こりが気になり出す。風邪っぽいような喉の痛みの訴えが多くなる。16歳時の三回目接種後4ヵ月起立で意識消失倒れる。
はじめて倒れた時の血液データ、好酸球だけが異常値で9.6。その2ヶ月後動悸、息苦しさの訴え。起立時に不随意様運動が度々出現する。徐々に回数が増えほぼ毎日。

◆考察
不随意様運動、頭痛、吐き気、めまい、ふらつき、記憶力と学習力の低下、意欲減衰、筋力低下、昼夜逆転、起床困難、腹痛、月経困難症など、広汎な症状の訴えアリ。母娘は子宮頸がんワクチンの副反応だと信じ切っていた。私はその考えを敢えて否定せず、まずは不快症状から脱することが重要であると提案して施術、生活指導を行った。
一度の筋肉と筋膜、頚椎腰椎間関節へのカイロプラクティック的施術で不快症状の大半が緩和~解消され、母娘は私を信頼するようになり、指導や助言を守るようになった。やはり腹部全体が硬い印象があり、消化に難ありな食材を制限し、良いと思われる栄養素をご提案。
真っ先に不随意様運動が消失し、2~3ヶ月経過後には不快症状の大半が無くなって来て、5~6ヶ月経過後には完全に解消。計3回の施術。
症状が解消された時を見計らって私は御母堂に「この娘さんは自律神経症状で言ってみたら起立性調節障害とも言えるのでは?」と質問した。つまり、母娘が信じていた「子宮頸がんワクチン副反応」を否定する質問をしたところ、母は「今なら理解出来ます、しかし日々苦悶する娘を前にしたら矛先を何かに向けていなかったら私が参っていました」と答えた。
不随意様運動は局所酸欠やPHの不安定さ(自律神経症状)があるかもしれないと告げ、意識無意識を問わずに何かがストレッサーになり、彼女を苦しめているだろうと。当然、自己に向き合わない限り不快症状の解消は出来ない故にまずは体力気力の充実を図り、頭の中からの苦しい事や悲しい、腹立たしい事、怒りや悲しみ感情から遠ざかる様に指導。
矛先を子宮頸がんワクチン接種だけに向けても、彼女の不快症状はむしろ解消されにくくなるとも告げる。当初から連日の様に電話やメール連絡のやり取り実施。

(4)
症例Dさん 接種時12歳 接種後3カ月目に全身性疼痛が発症するも寛解後の16歳を迎える頃、発症
サーバリックス二回接種、東日本在住
私が約4度、片道8時間かけて自宅や私の教え子の治療院に出向き、施術した。症状は自立不能、歩行不能、不随意様運動、頭痛、腹痛、月経困難症、痙攣発作、失神、パニック発作等々。検査では腱反射がやや低下している以外に問題なし。
それまで複数の脳神経外科や神経内科では脳に異常が見られず、治療をしてもらえず医療に対する不信感を抱いている状況だった。
様々な症状の原因について私の考えを、時間をかけて説明し、ようやく理解が得られ、一度の施術にて腰痛、関節痛、頭痛が解消されると不信感は消え去り、親子の目つきが変わり、私の考えや施術に対して得心が得られた。
度々起きる学校でのパニック発作や不快症状について、何故起きたのか、少女、御両親の不安を解消すべく日々、電話、メールでの即答を心がけ、実践した。
この少女は、今は普通に楽しく学校に通っている。無理をするとやや疲れると言うが、それは当然のことであり、子宮頸がんワクチンとは関係のないことである。

◆考察
環境下におけるストレス耐性の減弱化、同じ様な病態の方同士の同調圧力、共依存がかなりウエイトを占めると判断し、体力気力の一段二段の回復を待って、自己認識、客観視できる様な指示や指導を実施。
御両親には行動変容ステージの後半になるまでは何もあれこれ発言しないように指導を実施。

(5)
症例Eさん 中日本在住19才
高二の最後の3月、5月、7月にサーバリックスを三回接種
◆考察
春休み中や新学期当初より運動部部活中に割れそうな頭痛が発症、2週間程寝込み気味になり、全身症状が発症。
特に起床困難、割れそうな頭痛、吐き気、腹痛に苦しめらた。
最初は埼玉の望月先生を受診、各栄養素、生活習慣改善の為の認知行動療法的な指導を実施、途中、大阪市内で開催された我々の勉強会を開催し、家庭内手当てや御両親方の対処対応、運動の必要性等を学んで頂いた。
その間、筋肉筋膜上の問題と脊柱の可動性確保の為に、はるばる遠方から神戸、大阪に来て頂き同部位への可動性亢進の為の施術と超音波照射、そして生活習慣指導実施。
高3の12月に全ての不快症状が解消し始め、年明けには全ての諸症状は完全に寛解。

なぜ治すことができたのか
治るという希望を持たせることが重要である。私が「自律神経症状なら時間はかかりますが治るでしょう」と言うと、我が子の体調不良に強い不安を抱いていた親たちは涙を流して喜んでいた。

人は不安を抱えると全身に影響が及ぶ様に交感神経が活発になり筋肉筋膜は固まり、関節の動きは制限され、その状態を堅持しよう筋肉が伸張された側からは絶えず痛みなど不快の信号が伝達され、心身共にリラックス出来ないとその状況からは逃れられない。
つまり1日も早く取り去らないと疼痛の類は遷延する。見えない不安、認識出来ない不安なら尚のことであり、一段二段体力気力が上がって来た暁には全員に現実、自己に客観視する様に指導した。

医師が治せなかった症状が、なぜ一介の柔道整復師に治すことが出来たのか。それは、検査数値に現れて来ない不快症状や感情を、我々カイロプラクティックの施術者は聞き取りや歩様、動作仕草、患者の脊柱の弾力性、体の筋肉の固さや皮膚のツヤ、色、などから触知、知ることが出来、また施術によって不快症状をその場で改善する事も多々ある為、治療者と患者の信頼関係をその場で構築しやすかったのが一因だと考えている。

私は、動けない患者のため、北海道、東京や埼玉、神奈川、名古屋、広島、九州など各地にクルマで往診し、その移動距離は足掛け4年数ヶ月で約6万キロに及んだ。結果、たくさんの患者を快方に向かわせることができ、多くの人が治っていると言う事実が、他の患者を勇気づけ、治る人が増えるという好循環が確立されたと考える。
この拙文を、東京で最初の子宮頸がんワクチン副反応患者に出会った2013年5月26日に神戸で亡くなった父に捧げる…

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