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Vol.174 メディカルアフェアーズ機能の現状とあるべき姿(提言)2018 年8 月

医療ガバナンス学会 (2018年8月28日 06:00)


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(一財)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団
理事長 土井 脩

2018年8月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

1.メディカルアフェアーズ(MA)機能の現状
メディカルアフェアーズ(Medical Affairs 以下、MA)は、米国系製薬企業等においては1960 年代から機能(組織)として存在しており、2000 年代に問題化したオフラベルユースのプロモーション問題などを契機として、医療専門家からの適応外使用に関する情報提供の要請に製薬企業等として、プロモーションと切り離した形で、医学・薬学等における科学的見地から医療専門家に情報を提供する役割が注目されるようになった。

日本においては、まず、外資系製薬企業等において2005 年頃から欧米本社の影響を受けて設置する動きが広がり、2012 年末の臨床研究に関する事案を背景に、製薬企業各社における臨床研究の質の確保・信頼性の向上への取り組みの一環として、営業部門から独立した組織としてMA 部門を設置し、臨床研究関連業務を進める企業が増えてきている(文献1)。

国内の製薬企業等においては、研究、開発、製造、安全対策、法務、総務、経理、営業などの部門の機能及び業務内容は、いずれの製薬企業等においても大きな差はない状況であるが、前述のような歴史的背景を考慮しても明らかなように、日本における歴史が比較的浅いMA 部門の機能、業務内容は、現在も各製薬企業等によって大きく異なっている。

現時点での日本の製薬企業等のMA 部門の機能、業務内容としては、

社内に向けては
1)医薬品の医療における価値を最大化するためのメディカル戦略の立案及び実施
2)医療現場に提供する資材の医学・薬学的観点からの評価・確認
3)育薬過程における臨床研究又はデータベース研究等によるエビデンスの創出
4)論文化戦略の立案及び実行
5)医薬品情報に関する製薬企業としての統一的な見解の構築 等
のうちいずれか複数を実施している。

社外に向けては
メディカルサイエンスリエゾン(Medical Science Liaison ; MSL)による医科学専門家との協議に加えて、
1)メディカルアドバイザリーボード(Medical Advisory Board Meeting ; MABM)の開催
2)学会におけるメディカルインフォメーションブース(Medical Information Booth ; MIB)での専門家への対応
3)継続的な医科学的教育(Continuous Medical Education ; CME)のサポート 等のうちいずれか複数を実施している(文献2)。

MA 部門は、これらの機能を果たす上で営業部門とは一線を画し、コンプライアンスを遵守して、高度な医学・薬学等における科学的な知識をベースに医師などの医療関係者(Health Care Professionals;HCP)とコミュニケーションをとることを通じて、情報を収集、分析及び提供するとともに、医薬品の医療における価値を最大化するためのメディカル戦略を社内で立案、実行する部署を指しているのが現状である。

2.製薬企業等における各機能の現状と最近の変化
製薬企業等における各機能の果たすべき役割は、近年、製薬企業等を取り巻く環境の変化に伴い、大きく変化を続けており、特に、研究・開発(Research and Development ; R&D)、営業・マーケティング(Sales and Marketing ; S&M)に関する部門の役割が著しく変化してきている。すなわち、科学、特に製薬企業等が扱う医薬品等(医療用医薬品、医療機器及び再生医療製品等)のR&D に深く係わる医学・薬学に関する進歩は著しく、医薬品等のR&D は自社内で賄うことが次第に困難な状況になってきている。

このため製薬企業等は自社内のR&D 部門を縮小し、ベンチャー企業等のSeeds を早期に見出す(目利き)機能を強化したり、効率的に開発業務を進めるために開発業務を開発業務受託機関(Clinical Research Organization ; CRO)等にアウトソーシングするための機能を強化するようになってきている。

また、S&M 部門においても、営業部門に所属し、売上数字で評価されているMR(Medical Representative)が、コードオブプラクティス(Code of Practice ; COP)を遵守しているものの、医療機関などに対し医薬品等の安全性情報を収集、伝達していることの妥当性を、海外のステークホルダー等に説明するときの困難さや、売上数字で評価されているMR 業務の費用対効果の低さに関する問題、マーケティング技術の高度化・専門化などに伴い、マーケティング機能を専門のコンサルティングファームにアウトソーシングする製薬企業等が増えているのが現状である。

3.メディカルアフェアーズ(MA)部門(機能)の今後のあるべき姿
このような状況の中で、今後のMA 部門のあるべき姿を考えると、次のようなことが期待される。

MA 部門は、当該疾患領域及び研究領域のトップレベルの専門家と高度な医学・薬学等の知識に基づく科学的情報を交換(収集及び提供)することがさらに強く求められるようになるであろう。そのためにはMSL および、エビデンス創出及びメディカル戦略の立案等のMA 機能の核(Core)となる業務を担当するメンバーは、医師、薬剤師等の医療資格はもちろんのこと、専門領域についてはこれらの医師と対等にディスカッションできることなどの観点から、少なくとも博士号を基本的には有していることが前提となる。さらに、これらの人材には組織をマネジメントする能力も求められるであろう。

ただし、日本における現状に鑑み、当面、各製薬企業等が独自の資格基準を設けることを否定するものではないが、その場合でも、学術団体による資格や著名な科学雑誌における論文の発表などの学術的成果に基づくなど、最新科学に基づく議論を適切に行うことができる有資格者を選定するために十分なものでなくてはならない。

また、これらの人材はS&M 部門とは完全に切り離し、コンプライアンスを遵守し、医師等からの要請に応じて未承認薬等の情報提供を一手に扱うほか、当該製薬企業等の製品売上額とは無関係に評価されるシステムを確立することが必須であろう。

MA 部門は、臨床開発部門の専門化・細分化に伴い、製薬企業等の成長戦略の根幹を担う中心的な機能の一つとなり、特に取り扱う医薬品等に関する医学的・科学的な観点でのインプット、製品価値を最大化するためのメディカル戦略の策定と実行に係る重要な役割を果たす頭脳集団となることが期待される。

さらに、ますます重要性を増すHEOR(Health Economics and Outcomes Research:医療経済学及びアウトカムリサーチ)分野やRWD(Real World Data:リアルワールドデータ(又はエビデンス))創出にも深く関わることが期待される。

一方、MA 機能のひとつであるMSL については、MR のように数多く、幅広く、日常的に医療現場で認知される必要はなく、当該疾患領域及び研究領域のトップレベルの専門家との高度な医学的・科学的情報交換が十分にできることが重要になるであろう。したがって、MSL は少数精鋭で、トップレベルの専門家に対応できることが重要と考えられる。近年、医薬品医療機器等法に抵触する恐れのある広告・宣伝などを防止するため、製薬企業等としての責任体制の確立が社会的に強く求められているが、経営陣に直結した組織としてMA 部門(機能)を配置することにより、臨床研究や、広告・宣伝資材、医師等からの要請に応じた未承認薬等に関する情報提供等に対して一元的に、幅広く、コンプライアンス重視の視点から対応することにより、このような社会的な要請に応えることが可能とな
るものと期待される。

MA 部門(機能)は、日本に導入されて日が浅いとはいえ、欧米等では以前から導入されており、その経験などを活用することにより、製薬企業等の社会的責任を果たす上で重要な役割を担うものと期待できる。

また、従来から医薬品情報の提供・収集等において重要な役割を果たしてきた日本独自の存在であるMR との役割分担について、行政及び/ 又は、民間によるガイドラインが早期に定められ、それにより、製薬企業等の信頼性向上とともに、医療の質的向上にも貢献できるものと期待される。さらに、日本においてMA 部門(機能)と営業部門に所属するMR との役割分担を明確にすることは先進国としての責務であり、ICH 新規加盟国等の模範にもなると考える。

文献1.日本製薬工業協会医薬品評価委員会PMS 部会2016 年度タスクフォースI.本邦におけるメディカル・アフェアーズ活動の現状調査.医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス (PMDRS), 2018, 49(6), 344~353
文献2.岩崎幸司.医薬品情報の利活用におけるメディカルアフェアーズの役割.Jpn. J. Drug Inform. 2017, 19(1), N4~N6

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