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Vol.262 カナダのマリファナ危機による日本の麻文化の窮状 大麻取締法は、日本の大麻を守るための法律~分別ある対応を~

医療ガバナンス学会 (2018年12月18日 06:00)


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日本麻協議会
事務局代表 若園和朗

2018年12月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

■カナダのマリファナ危機:日本への悪影響を防ぐため、なお一層の警戒感を

私たちは、日本の麻(大麻)の伝統を次世代に引き継ぎ、再興を図るための活動をしていいます。そんな私たちに対する評判の悪化に繋がりかねない大変悪いニュースが流れてきました。それは、カナダのマリファナ(大麻)危機の報道です。

違法薬物の蔓延に手を焼くカナダ政府は、2018年10月17日、嗜好目的でのマリファナ(大麻)使用を合法化するという選択に踏み切ったことは皆さんご存知のことと思います。カナダでは、国民のマリファナなどの経験率が4割を超え、法によって取り締まれる状況ではなくなっていました。無法で無秩序な状態から、法による管理下に置き、秩序を取り戻すことで、未成年者の使用を防ぐなど健康被害の軽減を図り、犯罪組織に流れていた資金を断ち、税収を増やすことが目的と思われます。

わが国は、カナダのみならず他先進国からも「奇跡」といわれるほど薬物乱用の少ない国。日本の麻(大麻)の再興を求める私たちには、わが国がカナダのような残念な状況に陥らないよう、有害大麻の脅威をよく理解し対応していく責任があると私は考えています。「マリファナは安全だから合法化された」というような誤った解釈が横行しないよう、十分配慮しなければならないのは言うまでもないことです。

■日本の大麻はマリファナにはならない品種

一方で10月末、私たちを勇気づける知らせも届きました。それは、新規に大麻栽培免許を取得した「伊勢麻振興協会」が栽培している大麻は、マリファナにならない安全な品種であると成分分析などにより三重県が確認したという知らせです。

ところで、皆さんは日本の大麻は、基本的にマリファナなどの薬物にはならない品種だということをご存知でしょうか?また、戦前までは自由に大麻を栽培していたという話を聞いて、かつて日本人は平気で乱用していたと勘違いしていませんでしたか?

しかし、乱用の元となる大麻の花や葉に含まれるTHCという物質の含有率は品種によって違いがあり、日本在来の大麻はTHCの含有率が十分低く、概ねまたは、すべて無害な品種であったと考えられています。それらの理由から、わが国においては戦後のある時期まで大麻の乱用が問題になることはありませんでした。

このように、成分的・遺伝的にマリファナなどの薬物とは無縁な日本の大麻ですが、薬物乱用の煽りを受け、栽培の継承が困難な状況に陥っています。そして、日本の麻(大麻)の伝統を守ろうと活動している私たちは苦しい戦いを強いられています。

■「大麻取締法」は、日本の大麻農家を守るための法律

戦前においては、海外から輸入する有害大麻を「印度大麻草」などと呼びマヤクに指定し、日本の大麻とは区別して考えていました。

ですが、敗戦直後の昭和20年、占領軍は、大麻はすべて「同一種」として全面的な禁止令を出しました。しかし、大麻は衣服や漁具、下駄の鼻緒などに欠かせぬ生活必需品だったため日本政府は、昭和23年「大麻取締法」を制定し、許可を受けさえすれば大麻を取り扱えるようにしました。そして、第二十二条の二の二で「前項の条件は、大麻の濫用による保健衛生上の危害の発生を防止するため必要な最小限度のものに限り、かつ、免許又は許可を受ける者に対し不当な義務を課することとならないものでなければならない。」として大麻農家を保護する規定も定めました。
「大麻取締法」といえば大麻を禁じる法律と解釈している人が多いと思います。実は、その目的は、乱用を防ぎつつ日本の大麻を守ることなのです。

更に、薬物乱用防止のための国際的取り決めである「麻薬単一条約」では、「この条約は、もっぱら産業上の目的(繊維及び種子に関する場合に限る。)又は園芸上の目的のための大麻植物の栽培には、適用しない。」とし、薬物ではない一般産業目的の大麻は、「禁じない」と明確に定めています。このように国際条約上も一般産業用の大麻栽培を守る形になっているのですが、そのことは不思議なほど無視されています。

そして、皆さんに理解していただきたいのは、マヤクのマは、本来「病ダレ」でシビレルなどの意味を持つ「痲」だということ。当用漢字にないからという理由でアサ(麻)が代用字として定着してしまったことで、「大麻=麻薬の大親分」という情けないイメージが日本国民に広まってしまっているのです。

■麻の葉に毒あり。花にも殊の外毒あり。

とはいえ、日本の大麻の保護再興を語る場合、有害大麻との交雑などが起これば保健衛生上の問題が生じる植物だということは忘れるべきではありません。しかも、戦前と違い、ドラッグ賛美の思惑を持った人が一定数存在し、マリファナ無害論を喧伝し、時に日本の麻(大麻)の健康的で神聖なイメージを悪用して仲間を増やそうとしていることに警戒感を持って臨んでいくことが必要です。

日本の在来の大麻は、その葉や花に含まれる有害物質であるTHCの含有率の低い無害な大麻だと先に述べましたが、大昔でも稀に有害大麻と接する機会があったようで、数は少ないながらそのような記録が残っています。
海外の場合は、大麻の向精神作用を「よい」ことのように書かれている場合があります。しかし、わが国では、筆者の知る限り「毒」として記されています。
例えば、江戸時代の「甲子夜話」という文書に「麻の初生の芽を食すれば発狂す」とあり、「古今要覧稿」には、「麻の生葉には毒あるものなり」「花にも殊の外毒あり」と書かれています。興味深いのは、忍術伝書「萬川集海」の記述で、敵を「虚け」にする「阿呆薬」として麻の葉を用いたとしています。大麻の葉と花に含まれる有害成分THCは、ヒトの認知や記憶の能力を下げ多幸感を感じさせる働きがあります。「阿呆薬」とはまさに言い得て妙です。

このように、日本人は古来より、有害大麻の危害に気づき、それを避けながら栽培・活用してきたのかもしれません。こうした賢明な先達の教えに倣い、有害大麻の害を知った上で、大麻を有用に活用し伝統を守っていきたいと思います。

■日本の麻を守るために

これまで述べてきたように、現在日本の麻(大麻)栽培は、窮地に立たされています。
その原因の一つは、無害が確かめられている日本の麻にまで監視カメラの設置や見回りの義務を課したり、出荷先の制限をしたりするなど過重な負担を行政が生産者に強いていること。これは、「大麻取締法」で定めている「保健衛生上の危害の発生を防止するため必要な最小限度のもの」の範囲を超えた不当なものである可能性もあります。これらの制限は、保健衛生上の危害を防ぐことに本当に繋がっているのか、その検証と見直しを行政側に求めたいと思います。更には、THCの含有率に基づいて「薬物としての大麻」と「農作物としての大麻」の違いを明確にし、分別ある対応がなされるような制度を確立することも必要です。
また、私たちのような伝統的な栽培者や麻文化継承者には、きちんと大麻という植物の危険性と益を理解・整理して社会に発信していく責任があると私は考えています。

今後は、乱用に用いてこなかったことこそ日本の麻文化の誇りとして後世に伝え、健全な麻の栽培活用を求めていきたいと思います。皆様のご理解とご協力を是非お願いします。

最後までお読みいただきありがとうございます。医学や歴史には素人の文章につき、間違いなどあるかもしれません。お気付きの際は、真摯なご指導をよろしくお願いします。

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