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Vol.125 子どもの食事の塩分、どのくらいならOK?

医療ガバナンス学会 (2019年7月18日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(3月6日配信)からの転載です

https://dot.asahi.com/dot/2019030500008.html?page=1

小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表
森田麻里子

2019年7月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

子どもの食事を用意するとき、塩分は気になるところです。子どもは薄味に慣れさせたほうがいい、といいますよね。でも、いつまで薄味にしなければいけないのか、しょっぱいものを食べさせるのはほんの少しでもだめなのかなど、迷うことがあるのではないかと思います。今回は、子どもの食事の塩分について、解説します。

そもそも、塩分はどのくらいの量を摂らせてよいのか、ご存じでしょうか。まずはいくつかの基準をみてみましょう。

■WHOの推奨量

日本では、5カ月までの赤ちゃんは1日0.3グラム、6カ月から11カ月は1.5グラムが目安量とされています。これは、実際の摂取量の調査を元にした量です。それ以降は目標量として、生活習慣病予防のため、1日何グラム以下に抑えるとよいか、という量が示されています。1~2歳は3~3.5グラム、3~5歳は4~4.5グラムと増えていき、12歳以上で大人と同じ7~8グラムとなりますが、こちらは成人の目標量から算出された値です。

一方、WHO(世界保健機関)のガイドラインでは、2歳以上の子どもの塩分量はエネルギー摂取量に対しての比で大人と同じになるようにする、とされています。なぜ2歳以上かというと、2歳前までに腎機能が大人と同等に成熟するからです。

WHOの推奨量は大人で1日5グラム以下です。そもそも、この量は日本の目標量である7~8グラムよりかなり少ないですし、日本人の実際の摂取量は9~10グラムですので、その約半分です。大人のエネルギー摂取量は2000~2600キロカロリー、2~5歳のエネルギー摂取量は900~1300キロカロリー程度なので、およそ大人の半分です。つまり、WHOの基準から考えると、2~5歳は1日2.5グラム程度に抑えるのが良いということになります。

塩分摂取量に制限があるのは、子どもの頃の血圧と大人になってからの血圧に関連があること、そして子どもであっても、塩分摂取量を控えることで血圧が下がることが研究からわかっているからです。

子どもの血圧と塩分摂取量を調べた14の研究を、WHOがまとめて解析した結果があります。それによると、塩分控えめの食事にしていると、収縮期血圧は平均0.84ミリメートル水銀(mmHg)だけ下がることがわかっています。どのくらい塩分控えめにしたかはそれぞれの研究によって異なりますが、14の研究のうち4つは、比較対象のグループの3分の2以下に抑えられたとされています。

血圧が0.84というのは大きな数字ではないかもしれません。しかし、アメリカでは食塩のとりすぎによる問題が実際に出てきています。

アメリカでは1~3歳で3.8グラム、4~5歳で4.8グラム、大人で5.8グラムが上限量とされていますが、実際の摂取量は、1歳からすでにそれより多いことが明らかになっています。6歳から18歳の平均摂取量は8グラムを超えていて、アメリカの子どもの10人に1人以上は境界域高血圧または高血圧です。人種差はあるかもしれませんが、塩分のとりすぎは子どもでも高血圧を引き起こすようです。

■加工食品やスープに注意

塩分が多い食品はある程度決まっていて、加工食品やスープが主です。腎機能が成熟する1~2歳までは、味付けを薄めにする、お味噌汁は薄める、チーズやハム、パン、チキンナゲット、練り物など塩分の多い食品を食べさせすぎない、など注意する必要がありそうです。

しかし2歳以降は、子どもだから塩分を特別に控えなければいけないわけではありません。塩分摂取量はエネルギー摂取量に対しての比で考えているので、偏食がないと仮定すれば、子どもも大人も味付けは同じで、食べる量が違うだけ、ということになります。

もちろん味付けを薄くするに越したことはありませんが、多少しょっぱいものを食べても、1日の食事全体で調整できれば良いでしょう。子どもだけでなく、大人も一緒に薄味の食事を楽しめれば理想的ですね。

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