医療ガバナンス学会 (2010年5月1日 10:00)
産科脳性マヒに限って実施されている現在の医療補償制度。
これに加えて2010年はみなさまとともにここに新たに全診療科に亘って死亡と重度後遺障害医療事故をカバーする「医療事故補償制度」の早期創設を提案させていただきたいと存じます。
比較的リスクの高いとされる診療科も低いとされる診療科もこぞって全員参加の共同体意識が大事です。
わたしは知らないというのではなく、患者国民も含めた全体で健全な国民医療を守り維持発展させてゆくことが目的です。3方1両損が3方1両得を生む。allforone oneforallの精神で健全医療を再生してゆきましょう。
この制度の必要性については既に多くの医療関係者と患者国民双方が概ねご理解ご賛同して戴いているものと思われます。そうした状況のなかでこれまでなお深く残る幾つかの疑問点もありましたがおおよそ次の諸点に集約されるのではないかと思われます。
今日は、その疑問点を明らかにしたうえでそれらも決して解決不可能な難問ではないことを説明いたしましょう。
1.ファンドはどのくらい必要で誰がどのくらい負担拠出するのか
対象を当面は死亡・1~3級重度後遺障害とする。補償額一人1件1000万円まで。
評価機構によれば対象となりそうな事故は多くともおおよそ年間300人くらい。300人X1000万=30億円。
*リスクの高い年齢層 0歳~3歳、60歳以上高齢者はリスクが高いといえる。
が、逸失利益は現役の扶養家族ありの場合と比較して低いので1000万円にはならないだろう。
*負担するのは医師、患者、国民、公的資金で広く浅く、allforone oneforallの精神でゆく。
仮に300円を1000万人から集めれば30億円になる(大数の法則)。
2.補償額は limit 1000万円。
3.noloss noprofitプランとする。
4.本補償制度を基本補償プランとし、従来からある過失医師賠償保険を基本を超えた部分の補償とする
2階建て方式とする(自賠責に準ずる)
5.本プランを適用するにあたっては、過失の有無を問わない。因果関係(医療行為起因性)を調査する。
6.医療債務の本旨をまず確認しあう。インフォームドコンセント。
入院(入口)段階で素因減額要因はないかを調査し、減額要因となる場合もある。
以上のように見てくるとこれは実現不可能なものではなくなんとか行けそうだと思われるのではないでしょうか。
元気よく楽しく後世の孫たちからも「いい制度を作っておいてくれた」といわれるよう頑張ってまいりましょう。
次回から上記それぞれに解説を加えて参ります。以上
(著者略歴)
一橋大学法学部卒(指導教官好美清光教授・堀部政男教授)、某保険会社勤務、聖マリアンナ医科大学病院勤務、如水会医療薬業研究会会員、「医療事故無過失補償制度をつくる会」事務局長兼推進員
(著者論稿)
「公害の私法的救済」「海外輸出製品に係る製造物責任の一考察」「被害者救済制度の課題」「薬品食品とPL」「医師賠償責任と保険の今後の在り方について」「賠償と保険」