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Vol.124 これで乗り越えられるかコロナ2波

医療ガバナンス学会 (2020年6月15日 06:00)


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伊沢二郎

2020年6月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

昨日(6月4日)の報道で、我が久喜市の小児専門病院の経営問題が報じられた。麻疹への対応の為の陰圧室を有するので県の要請を受け、新型コロナ指定病院にもなったがこの節、一般の患者の足が遠のく上にコロナ指定病院になったが故に、大幅に赤字化しているとの由。使命感から新型コロナに取り組む程に赤字が大きくなると云うこの種の話、よく耳にするようになった。自らの感染リスクの不安と闘いながら、厚生行政の至らぬところを懸命に医療現場で対応していると云うのに、家庭を犠牲にしてまで職務に当たってきたと云うのに、その代償がこれか、何してるんだ厚労省・専門家会議・感染研。この様な医療の危機を向かえるとは思いもよらない事だが、更に大きくなるやも知れない2波3波を向かえるこれからを思うと一市民として誠にゾットする、在ってはならないことだ。

但この事は、当研究所上理事長がコロナ問題勃発当初から指摘されていた。この時厚労省・専門家会議が同じ認識に立っていればもっと早くに対策がされ、経営問題など起こる訳もなく寧ろ、医療従事者を慰労すべく環境作りが成されていただろうに。漸く重症コロナ感染者への医療報酬は3倍になったと聞くが、そこに掛かる人的・医療スペース・予備ベットの確保、等のコストはどうするのだ。医療とは無関係の者でも、昨今のメディアの報道を視聴していればこのくらいは思い付く。第二次補正予算、常識はずれの10兆円の予備費が示すのは、次の波を向かえるに何をして良いか分からないことの裏返しか。専門家会議、この度の医療態勢についての提言にしても、我々市民にどう係わるのか内容に着目するところだが、お題目の羅列で具体性に乏しく、2波まで時間稼ぎする間に何処まで具現化出来るか心許ない。新しい生活様式13項目を策定するならそれ並に具体化したらどうだ。

専門家会議から新型コロナに関する提言や談話が出る度に、自分達の生活にどのように係わるか、感染したらどうするか、将又どうなるか考えさせられることの連続だった。これから2波3波を向かえるこの時、この度の提言をもって準備万端怠りなしと想いたいところだが、様々不安が残る。インフルエンザと重なる時期の医療現場の対応は?、PCR検査にしても「攻めの検査をする」・「退院前の2回連続陰性確認不要」・「無症状濃厚接触者の検査を行う」、等今度はこちらが本当に誤解するのではと思う程の変わりようだ。しかし良くチェックすると攻めの検査をすると言いながら、かかり付け医から民間検査直接のルートは相変わらず閉ざされている、桁違いに増やす考えが在るのか疑わしい。新しい検査方法や検査キッドが登場し検査数を増やせない理由が乏しいので現状に合わせようとしているのか。ことほど左様にこの組織に触れると疑問や邪推が付きまとってしまう。

新型コロナ、この有事だからこそ見えてくるものが在る。東京・大阪を初め各自治体知事のリーダーシップが目立つ、いっそのこと権限も財源も地方に渡して事に当たらせた方が、我々市民にとっては現実的で、目が行き届く行政になるのではと想う。逆に政府の存在が、厚生行政の在り様が稀薄なことこの上ない、この度の提言に目新しさを感じないのもこれ迄の各方面からの、専門家や識者の発信、国民の声を追認したに過ぎないと想われるからか。それでも今にして想えばこれ迄の余りに酷い、コロナ対応指針と現実が変わることは良しだが、云うように攻めの対応をすると言うなら、自ら組織の在り方にメスを入れたらどうか。初めの波が小さいと次の波は更に大きくなると云う説もある、この波を乗り越えるには本当に、攻める・先取りすることが求められるが、現状追認的性格の組織がこの先何が起こるか分からない事に臨むとは、一市民としては心許なく大変心配だ。

これ迄の行動自粛により取り敢えず、市中感染は治りつつ在るやにみえる。安倍総理は日本モデルと胸を張って見せたが、罰則など無くとも緊急事態を宣言するだけで従う従順な国民性と何より、コロナに感染したら四日苦しみ、その先もどうなるか分からない恐怖心が成せることだ。但これからは経済もコロナの抑制も二兎を追うことが必須だ。これ迄の、経済に貢献し得る人をも隔離するに等しい行動自粛は続けられる訳がなく、決定的な治療薬やワクチンの登場を待つ限り、取るべき方策は自覚無き感染者を発見し隔離することしかないのではと想う。その上で適切な診断と有効と云われる既存薬の組み合わせで重症化を防ぐことになるのでしょうが、その人命救助に当たる病院の経営基盤が困窮していると云うのに、専門家会議なり諮問委員会なりに、真に臨床に長けた医師の意見や見解が繁栄されなくてどうする、そうなっていなことが今日の状況を招いている。

経済とコロナ、二兎を追う命題に専門家会議自らが限界を知ったかどうかは知る由もないが、諮問委員会に経済の専門家が新に加わった。その内のお一人のメディアを前にした第一声は理想的にはとしたが、国民皆PCR検査論と取れる発言だった。その上で感染者は一定期間然るべき施設で待機してもらい健常者には普通に活動して貰うとの由、その通りだ。経済の専門家にしてこのメッセージ、専門家会議はこれをどの様に考えると云うのだ。
フェーズはとっくに変わっている、コロナウィルス検査を桁違いにやること無しにこの先は考えられない。その上で最悪の事態に備える肝心の医療に、経営問題や人的課題を残したままでどうすると云うのか、この点について専門家会議の提言や厚労省政策は具体的でなく全く安心が得られない。国として、感染症のトップリーダーとして機能しているのか。

政策が停滞するときよく云われる、政治と官僚機構の関係。これを解消すべく人事権を握り政治主導を謳ったこの政権で在ったが、今の混沌振りはその欠片もない。一方、コロナ問題に立ち向かう自治体のリーダーシップは、結果の良し悪しはこれからであるが支持できる。
日本の統治機構を大きい視点で捉えれば、中央集権国家で在ろうが今の在り様は、これら自治体に比べ機能しない中央集権の例を観ているようだ。江戸末期の黒船来航が明治維新に繋がり日本に変革をもたらした如く、コロナ問題端緒のクルーズ船来航が後年、日本の統治システムに変革をもたらした、となって欲しい。
アフターコロナ、その後の生活様式を変える意味で使われるが、この度の危機をチャンスとするなら政治の在り方を根本から見つめ直す機会にしたいものだ。

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