医療ガバナンス学会 (2020年8月5日 06:00)
この原稿はAERA dot.(2020年6月17日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2020061600015.html
山本佳奈
2020年8月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
私も勤務以外の外出は一切しなくなりました。昨年の秋頃から開始していた勤務の合間を縫ってのアフターピル調査の弾丸旅も、もちろん行けません。自宅近くのレストランもほとんど閉まってしまったので、時に、簡単にすませたり、宅配をお願いしたりしながらも、自炊するようになりました。
前回、新型コロナウイルスの流行により家に閉じこもらないといけなくなった結果、野菜や果物を購入して家で料理をするようになり、より健康的な食生活を送るようになった、というオランダやカナダなど11カ国の消費者を対象に行ったインターネット調査の結果をご紹介しました。ほとんど自炊をしてこなかった私ですが、今回の外出自粛によって、スーパーに足を運ぶようになり、野菜や果物、納豆などを意識して摂取するようになりました。まさに、この調査結果通りの変化があったことを実感しています。
食生活以外で、私の生活習慣の中で大きく変わったことと言えば、ヨガのオンラインレッスンを自宅で受講し始めたこと、そして、配信されているヨガの動画を探しては、隙間時間を利用しては毎日ヨガをするようになったことです。と言っても、外出自粛が始まった当初は気持ちが落ち込み、ヨガどころではありませんでした。週末を利用して弾丸で海外に調査に出かけていた生活が一転し、勤務以外の外出が一切できなくなり、活動量の減少も合間って、眠れない日も増えていました。
そんな時、ヨガのレッスンがオンラインで配信されていて、教室に通わなくても自宅でヨガができることを知りました。早速、オンラインでヨガマットを購入し、数年ぶりにヨガを始めたのでした。
そもそもヨガとは、古代インド発祥の、精神統一や瞑想、呼吸法によって自己鍛錬を実践する手段。仏教における座禅も、元をたどればインドにおけるヨガの一種であるように、宗教的な色合いが強いものだったヨガですが、近代に入って欧米諸国に広まる中で、宗教的要素は薄れ、健康増進や疲労回復を目的とした健康法と変化し、さらに1980年代のフィットネスブームを受けフィットネス仕様へとアレンジされたヨガが、米国で脚光・人気を得たことで、世界中に広まるに至ったようです。
『Medical News Today』のライターであるCatharine氏は、都市生活は私たちの脳や身体に負担をかけるが、そのような負担は植物をそばに置いたり、瞑想やヨガで気持ちを落ち着かせることで軽減するかもしれないと指摘し、加齢に伴って脳皮質が薄くなるのを瞑想で抑制しうることも示唆されていると紹介しています。
ヨガが身体に与える影響についての研究結果も報告されています。例えば、ワシントン大学のDaniel 氏らによると、20歳から70歳の342人の大人を対象とした無作為化試験の結果、痛みに関連した思考や行動を変えるトレーニングと、瞑想とヨガを併用したトレーニングのどちらも、慢性的な腰痛の軽減と関連していたといいます。また、ボストン大学医学部のRobert氏らは、320人を対象とした無作為化試験の結果、ヨガによる腰痛の治療効果は理学療法に劣らなかったと報告しています。
深く呼吸をし、ポーズをとり、瞑想をする。コロナによる自粛をきっかけに、こうしたことを繰り返す時間を日常に取り入れられたことで、気持ちを落ち着かせると同時に前向きになれたような気がします。腰痛で悩んでいるという方は、ぜひ一度ヨガを試してみてはいかがでしょうか。