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Vol.172 10代妊娠相談が1.8倍増 コロナ外出自粛がもたらした女性への悪影響

医療ガバナンス学会 (2020年8月24日 06:00)


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この原稿はAERA dot.(2020年7月15日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2020071300029.html

山本佳奈

2020年8月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

新型コロナウイルス感染症の流行が女性の健康にもたらす深刻な影響が、次第に明らかになってきました。各地で学校が休校になった3月から5月にかけて妊娠相談窓口に10代から寄せられた相談件数が前年の1.8倍に増えたことが判明したというのです。

「妊娠したかもしれない」といった不安が相談の大半だったものの、性行為をした人のうち、正しい避妊方法を取っていた(挿入前からコンドームを装着する、など)人は、前年の同時期の51%から32%に減少。検査薬で妊娠判定が出ていた相談者は16.9%を占め、誰にも相談していないと答えた人は14% (68%) だったと言います。

緊急事態宣言が解除されたもののまだまだ受診を控える方が多い一方で、薬を切らしていたが、ようやくクリニックを受診することができるようになったという方が次第に増えて来ました。その中には、低用量ピルの内服再開を希望されてクリニックを受診される女性もいらっしゃいます。

その方は、「緊急事態宣言中に低用量ピルが切れてしまったものの、クリニックを受診することがなかなかできなかった。けれども、やはり月経痛が辛いので低用量ピルの内服を再開したい」とおっしゃっていました。「コンドームのみの避妊だけはどうも不安だったので、低用量ピルの内服を再開したい」という方もお越しになりました。

このように、女性が新型コロナウイルス感染への恐れや外出制限による医療施設への受診控えや医療施設の閉鎖や女性に対する保健サービスの制限が、世界中の女性の健康に陰刻な影響をもたらすことが予測されたという調査データが、国連人口基金(UNFPA)より発表されています。新型コロナウイルスによる直接的な影響を予測するとともに、感染拡大の影響によって中断された事業の影響と組み合わせて算出された推計によると、

・ロックダウンが6カ月間続き保健サービスに関する深刻な崩壊が起きた場合、114の低・中所得国で4,700万人もの女性が避妊具や避妊薬を入手できなくなり、700万もの望まない妊娠が生じる
・ロックダウンが3カ月間延長される毎に、さらに最大200万人もの女性が避妊具や避妊薬を使用できなくなる
・ロックダウンが少なくとも6か月間続いた場合、ジェンダーに基づく暴力が3,100万件増加し、ロックダウンが3カ月間延長される毎に、さらに1,500万件のジェンダーに基づく暴力が増加する

などが予測されうるといいます。

では、新型コロナウイルスの流行は性生活にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。新型コロナウイルスによるパンデミック期間中(2020年3月11日~4月12日)の女性の性交頻度、妊娠願望、女性性機能指数(FSFI)スコア、避妊の種類、月経異常をパンデミック前の6~12カ月間と比較し、トルコの女性におけるパンデミック期間中の性生活の変化を評価した研究結果が、Esenler Maternity and Children’s HospitalのBahar 氏らによって報告されています。

それによると、パンデミック前の平均的な性交頻度は1.9回/週であったのに対して、パンデミック期間中は2.4回/週と有意に増加した一方で、パンデミック期間中の避妊の使用(17.2%)は、パンデミック前(41.3%)と比較して有意に減少していました。また、パンデミック前は32.7%が妊娠を希望していましたが、パンデミック中は5.1%に減少しており、月経不順はパンデミック前(12.1%)よりもパンデミック中(27.6%)に多くみられました。性的欲求と性交の頻度はCOVID-19流行中に大幅に増加したものの、性生活の質は大幅に低下したことが明らかになったのでした。

ちなみに、2020年7月13日時点でトルコにおける感染者数は212,993人、死者数は5,363人と、中東地域では最多を更新しています。

新型コロナウイルス感染拡大の終息が見られない今、感染への恐れや外出自粛による医療施設への受診控えは、まだまだ続くと思われます。日本において、緊急事態宣言や外出自粛がもたらした女性への影響をしっかり把握することが、対応策を考える上で重要なのではないでしょうか。

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