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Vol.249 国に殺される前に、明治以来の公務員制度をあらためよ!

医療ガバナンス学会 (2020年12月14日 06:00)


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エッセイスト
一ツ橋二の禄

2020年12月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

北海道旭川市の吉田病院で起きたクラスター事件は、ようやく自衛隊の支援が始まった。
しかし、これに至る経緯を知ると恐ろしい事実が浮かび上がる。

吉田病院によると、11月6日にクラスターが発生し、すぐに旭川市に対し「感染者の転院要請」を行なったものの市はこれを却下。
これにより病院内のクラスターが看護師にまで拡大したため、病院は11月25日さらに市に対し「自衛隊による災害派遣要請」を行なうが、これも「市長により即座に却下された」としている。いずれも却下された理由は明らかでない。

この問題を取り上げていたTV朝日の記者が旭川市と北海道に対して取材した報告によると、彼らの言い分はこうだ。
まず市長は「道に対して要請は行なったが、『今すぐ判断することは難しい』との返事だった」と話す。
要請を受けたとされる北海道の職員は「何もしていなかったわけではなく、(検討するから)電話ではなく書いたものでほしいと伝えた」と述べたそうだ。
命にかかわる現場の悲鳴にこの答え。彼らは溺れて「助けてくれ!」という人に、「紙に書いてよこせ」とでもいうのか。
市民の命を最優先する気持ちがあるのなら「支援要請はすぐ行ないます(準備します)から、後でよいので書いたものも送ってください」というべきだろう。現場感覚云々を問う前に非常識で、鳥肌が立つほど恐ろしくなる。

北海道の地方公務員のひどさはひどいというより犯罪に近い、と私は断言する。
数年前の1月、仕事で北海道南部のH市内をタクシーで走っていた時のこと、片道2車線の市道が雪で1車線しか使えずひどい渋滞が続いていた。
私が運転手さんに「市は除雪してくれないんですか?」と問うと「もう予算がないんだそうです」の返事。しばらくして市道の横にハイカラなマンションが見えたので「立派なマンションですね」というと、何と「あれはマンションではなく、市の職員住宅です」というではないか。

唖然と口を開けていたら、さらに運転手さんはこうもいう。「市の職員同士で結婚し子供ができると家族手当が以前は2倍(2人にそれぞれ出る)、今でも1.5倍は出ているんだそうです。北海道はみなそうみたいで、公務員天国ですよ」とのこと。
あきれた私が「私の知合いが函館市議を知っているそうなので、動いてもらいましょうよ。除雪は命にかかわるでしょう」というと、「無駄ですよ。市議会議員の票田は市の職員が握っていますから、議員なんて怖くないんです」との答えだった。

北海道の詳しい歴史は省くとして、明治時代の開拓史に始まり2000年代まで開発庁が置かれ、今でも担当大臣がいる。
つまり、北海道の地方公務員や政治家の顔は常に東京(政府・自民党)を向いていて、そこから得る「地方交付税」の多寡こそ彼らの仕事、いや「利権」の拠り所なのだ。
だから雪で道路が動かず、タクシーも運送トラックも売上げが上がらないなど市民がどんなに困っていても知らん顔で何もせず、「予算がないから」と平然として言えるのだ。
全く同じ構図が吉田病院のクラスター事件にも当てはまる。北海道の経済が育たないわけだ。

北海道で働きたい若者の多くはみな公務員や同等のJAやJRなど公共的な仕事を目指し、さらにその子供も同じ進路を歩むという。
そうして何もしなくても怒られることもなく給料も減らず、競争もなく工夫も創造もない公務員的な思考が北海道から活力を失わせていく。
JR北海道で事故が相次ぎ適当な対策も取られなかったことから、JR東日本の支援を仰いだことは記憶に新しい。
やはり公務員の数が多く、国家財政に破たんをきたしてEUの支援を受けているギリシャ同様、美しい景色とは裏腹に、北海道は明治の開拓史以来いまだ変わらず未開拓のままなのだ。

公務員の不作為は北海道に限ったことではない。ではどうするか。
公務員と政治家の癒着を解くため選挙制度をあらため、組織票に勝てるようなポイント制を導入せよ。
さらに裁判員制度のように、少なくとも参議院の半数は一般国民から抽選で選んだ「参政員」で構成せよ。
そして公務員選抜試験制度、給与体系を抜本的に見直し、真に市民と社会のために働ける人材とシステムを確保せよ。
このままでは以前本誌にも書いたように、国によって国民が殺されてしまう。殺される前に、声を上がるしかない。

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