医療ガバナンス学会 (2021年3月23日 06:00)
この原稿は幻冬舎ゴールドオンライン(2020年12月19日配信)からの転載です。
https://gentosha-go.com/articles/-/30762
医療ガバナンス研究所
上昌広
2021年3月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
臨床論文を書きたい医師がまずやるべきは、情報のインプットを増やすことだ。以前の記事『多忙な医師の情報収集…大量の全国紙、地方紙、週刊誌の読み方』では、私が実行している、臨床医としての情報収集方法について解説した(関連記事参照)。本記事では集めた情報の整理について書きたい。
最近、私は新しいツールを使い始めた。それはLINEの「Keepメモ」という機能だ。LINEについては、改めてご紹介する必要はないだろう。筆者も知人とのコミュニケーションに愛用している。
LINEには様々な機能がある。その一つが「Keepメモ」だ。2020年7月からサービスが始まった。従来から、自分だけのグループを作成して、そのトークルームを個人メモ帳として利用している人もいたが、その個人メモ帳がデフォルトで実装されたことになる。
この機能は情報整理に便利だ。LINEのトーク内容はもちろん、画像や動画、さらにリンクをLINE内に簡単に保存することができる。
もちろん、このような機能はFacebookのメッセンジャーやEvernoteにも備わっているが、LINEがいいのは動作が軽いことだ。使っていてストレスがない。毎日の情報整理に活用している。
●電子書籍も紙媒体も管理しやすい「Keepメモ」
筆者は毎日全国紙5つと地方紙3つ、海外メディア4つに目を通す。さらに30程度の週刊誌や医学誌・科学誌をフォローしている。書籍は年間に150-200冊程度に目を通す。熟読するものから、ざっと目を通すものまで、媒体に応じた筆者なりの方法で読んでいる。
情報の整理も同様だ。媒体の形態に応じて、柔軟に対応している。たとえば、朝日新聞や日経新聞、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』や『ランセット』はiPadの専用アプリやウェブブラウザで読む。気に入った記事があれば、リンクを「Keepメモ」に送るだけでいい。
「Keepメモ」は画像も扱いやすい。これは、東京新聞や讀賣新聞の電子版、あるいは「dマガジン」などの電子雑誌などの情報を整理する際に便利だ。このような媒体は電子媒体がテキスト記事とリンクしていないため、記事内容を保管するには、スクリーンショットで記事の写真を撮るしかない。「Keepメモ」では、LINE上で普通に画像ファイルを送る要領でメモすることができる。
多くの本や資料、筆者が購読している福島民有などは電子版が存在せず、従来型の紙媒体を読むしかない。このような媒体も、普通に写真を撮る要領で「Keepメモ」に送ればいい。こうやって、筆者にとって重要なデータが溜まっていく。
●検索機能が弱いため「情報の長期保管」には不向き
「Keepメモ」の課題は検索機能だ。この点ではEvernoteには及ばない。Evernoteは、PDFファイルや、Scan Snapなどを介して取り込んだ画像などのファイルがテキストに変換され、検索が可能になるが、「Keepメモ」には、そのような機能はない。
筆者がメモを作成するのは、連載や論文を書くためだ。検索できなければ意味がない。「Keepメモ」は一時的なメモリーとしては有能だが、「長期記憶」として保存するのはEvernoteの方が向いている。
筆者は数日に一回、多くは新しい文章を書く際に、「Keepメモ」をEvernoteに移している。とりあえず「Keepメモ」に保管しておいたものの、後になって不要と考えるようになったデータは削除する。最終的に残るのは半分以下だ。
残った「Keepメモ」のうち、テキストファイルは手作業でコピー&ペーストし、画像ファイルは重要なところを自分で入力している。そしてEvernoteに移し終えた「Keepメモ」は削除する。
●クラウド型サービスの利点を活かしきれていない部分も
筆者はLINEをiPhone、iPad、パソコンで使用しているが、追加したばかりの新しいメモなら「送信取消」をすることで、すべての端末から消すことができる。
しかし問題は数日を経過した古いメモだ。時間が経つと「送信取消」という選択肢がなくなり、そのメモを消すには「削除」をするしかない。
スマホ上のLINEで「削除」すれば、「選択したメッセージは、この端末のみで削除されます」と出てくる。クラウド上にデータが残り、パソコンやiPadのLINEを利用すると、「削除」したはずの「Keepメモ」が再び登場する。古いメモを消すにはそれぞれの端末で「削除」を繰り返さねばならず不便だ。折角のクラウド型サービスの利点を活かしておらず、早急に是正してもらいたい。
●生産性が大きく変わる…「Keepメモ」は使い方次第
筆者が定期的に文章を書くようになって11年が経過した。始まりは2009年の『医療タイムス』と『メディカル朝日』だった。当時は、取材メモをテキストで作成し、Wordファイルで保管していた。このようにして作成したファイルは、現在もパソコンのハードディスクおよびDropboxでクラウドに保管されている。
Evernoteを使うようになったのは2011年の東日本大震災以降だ。現在、筆者のEvernoteには、異なるテーマを対象とした640の「ノート」が保管されている。自分にとって重要度が高い情報が選択され、閲覧可能になっている。これが筆者の財産だ。
「Keepメモ」が登場し、「ノート」の作成は飛躍的に容易になった。この機能をいかに使うかで生産性は大きく変わるだろう。皆さんにも独自の使用法を確立していただきたい。