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Vol.060 ガラパゴス化組織から切り離した、コロナ四波への体制作りを急ぐべき

医療ガバナンス学会 (2021年3月26日 06:00)


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伊沢二郎

2021年3月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

「日本の厚生行政のガラパゴス化、コロナ禍に極まれり」

3月17日、BS-TBS報道19:30に出演された、上 昌広・医療ガバナンス研究所理事長が提示された、新型コロナの流行と季節の関係の調査分析結果は大変腑に落ちました。

一波の折り、緊急事態宣言前から感染は下げモードであったことが疑問だったが、理由はこれか。
疑問は晴れたが反面、厚労省医系技官・感染研・分科会感染症専門家(以下、感染症ムラ)達のコロナ抑制に関する科学的アプローチの乏しさが浮き彫りになった。

緊急事態解除後のリバウンド対策として五本柱を作ったと言うが、「いつか来た道」と感じた方は多いのではないだろうか。
何時か来た道なら、その先に有るのは又も同じ事の繰返しか、大変心配だ。

感染症ムラの人達は、変異株の実態調査やモニタリング調査の為にPCR検査を拡充するとも言うが、以前にも同じことを聞いた。言わないよりはましだがもう既に、やってる感程度のモニタリング調査で済む話ではない、勿論飲食街狙い撃ちで済む話でもないだろう。

具体的に何をすべきかは、科学的調査分析が為された上でしか得られないはずだ。
この期に及んでも、未だこんな初歩的な事に触れなければならないのか、国民にとっては不幸の極みだ。
BS-TBS番組キャスターがこの有り様をして「ガラパゴス化」とした表現が大変印象に残る。

市中感染の疫学調査拡充・変異株ゲノム検査・桁違いのモニタリング調査は当然のこと、コロナ流行の季節性を読んだ上で感染予防具体策を打つベストなタイミングは何時かの分析等々、感染症ムラの人達がこなすには、荷が重過ぎるのではないのか。現に出来ていないと言わざる得ない。

●緊急事態解除をするなら、せっかく収束した一波の経緯を活かせず、未曾有の二波・三波を招いてしまった要因は何かを、省みるべきだ・・・

番組内で提示された北半球の国々と、南半球それぞれに於ける新型コロナの流行ピーク時期が、各々の夏冬にピタリとはまる図式は、コロナ流行の季節性は疑う余地の無いことを示しているということでしょう。
一波の折り、対策の効果が無かったとは言わないが、奏功したかの樣に見えた緊急事態宣言ではあったがその前に、季節性の流行トレンドは下降線にあった、と云うことでしょう。

そうであれば感染対策のそれ迄はどうであったのか。
昨年一波の折りに確認された感染者のピークは4月11日の714人だから、その2週間前の3月末くらいが感染のピークと云うことになるのでしょう。だとすれと、4月7日の緊急事態宣言は感染のピークから10日前後遅れていたという事になる。この直接的な効果の発現は計算上、更に2週間後であるから一波収束のきっかけは、コロナの季節性の変わり目だったのだろう。
このズレはほんの一時期、テレビでも報道された記憶がある。その節の政府専門家会議出席メンバーもその事を認め、一波の感染ピークは3月27日だとする記事もある。

この度、上 昌広理事長が調査分析された新型コロナ流行と季節の関係の把握には至ってなかったとしても、当時の専門家会議は少くなくも、一波時の緊急事態宣言は感染流行期がピークアウトした以降であったことは、認知していたはずだ。
しかしこの事はその後に活かすべく何ら、検討はされてはいないようだ。

その折りにこのズレが分析され、対策すべきスタートの時期が明確になっていれば、一波のような後追いの緊急事態宣言ではなく、二波から三波は全く異なる状況に収まっていたのではないか、大変悔やまれる。

日本の感染症対策トップリーダーであるはずの感染症ムラの人達よ、より小さい内に早く徹底的に抑制することが、感染症対策の基本中の基本ではなかったのか。
一波の折りにあなた方は、この度の上 昌広理事長の調査分析については知るよしも無いだろうが、それでも基本中の基本をやってさえいれば、コロナ死亡者や経済のその後は全く変わっていたはずだ。

●緊急事態解除後の5本の柱は作ったが、未だ立ってはいないようだ。これから穴堀をすると言うのか・・・

もう既に、リバウンドの兆候を指摘する識者もいる。それでも何がなんでも予定通りに緊急事態を解除したが、“一か八か”の判断に見える。コロナ対策では科学的分析が一番求められることだが、一波以来から今に至る迄最も足りない部分ではないのか。

菅総理・尾身 茂分科会会長の解除に向けての会見では、これから具体策を検討するようだが、その元になる科学的分析無くして有効な具体策が出る訳がない。出るとしたら“勘”によることだろう。
“一か八か”に“勘”、何処の世界のことだろう。余り期待はしないでおくことにする。

解除後のリバウンド対策とする五本柱は出たが、言い換えれば、〈いつか聞いた話〉・〈初めからそうしとけ〉・〈やって当然〉、大体こんなもんでしょう。

これではひたすら自己防衛あるのみだが、頼みのワクチン接種による免疫獲得には未々先がある。ブラジルでは感染3~4ヶ月後に再感染した報もあるが、ワクチン効果も同様なのか、案じられる。
変異株の実態把握はままならず、三波以上の四波を言う方もいる。
そんな事なら科学的な分析の元に、有効な具体策が出来るまで解除しなけれ良いものを。納得するにはほど遠い。

それでも予定通り解除する根拠に、病床逼迫度合いが低いことを上げることが気になっていた。いつの間にか市中感染状況の指標になっているように見える。
しかしこれは医療に係わることで、低い事に越したことはないが市中感染状況を把握する指標ではないだろうに。

分母のベット数次第で如何様にも変わり、幾つかの元々余裕が有る国公立大学病院が、目一杯コロナ対応するだけでも変わることではないのか。
これを判断指標の一つにすることは、事前の予防体策が遅れることに繋がり、大変危ういことだと思う。

そもそも感染症を科学する学問に、病床逼迫度合いなどと言う概念が有るのか。臨床医の方々に言わせれば大きにお世話、と言うことでしょう。そんなに病床事情を考えてくれていたのなら、何故初めから感染者を増やさない事のみを考えなかった、その為に対策して来なかったのだ、とも言いたいところでしょう。

解除に向けて病床逼迫度合は低い、と言えば言うほどに感染者が多少増えても今は大丈夫、とも言いたげに聞こえる。
我々市民にとってコロナは、身体も精神的にも酷くて長引く後遺症を伴う、絶対に罹りたくない病気だ。罹患による無精子症を指摘する著名な医師もいる、若い方々にとってもコロナの後遺症は問題だ。

新型コロナは罹ること自体を絶対に避けたい病気だ、安易に病床逼迫度合いは低いなどと、言わないで貰いたい。

それでもやる、この度の解除の正否がどうであったのかは、後に分かることでしょうが、その時々の都合によって官邸と分科会とで、感染ステージの解除に向けた説明が微妙に異なるところを見せつけられ続けると、解除が科学的思考に立った判断とは全く言い難い。

解除の判断が遅れたと言うだけなら、感染者数が減ることと、経済的マイナスでいって来いだが、感染抑制対策が遅れたとなれば、話は全く異なる。

これにより、感染拡大への備えも遅れ、二波と三波を招いた結果、多くの犠牲者と経済の損失を生み、社会的混乱に至った。
これが一波収束後の対策の遅れによる失敗、と云うことではないのか。

上 昌広理事長の調査分析の図式によれば日本は只今、新型コロナ夏の流行ピークに向かっている途中だが、緊急事態解除前からリバウンドを窺わせる感染状況は、更に大きな四波が来るのか、大変心配だ。

医療に係わる先端科学の研究成果やテクノロジーの発達は必ずしも感染症ムラを必要としないのではないか。むしろ弊害ばかりが目立つこれ迄と言わざる得ない。それによりどれ程多くの国民が苦しい思いをしてきたことか、今もその真っ只中だ。
四波への備えをするなら、医療及びこれに関係する専門性豊かな人材からなる、従来とは異なる新しい組織作りから始めるべきと考える次第です。

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