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Vol.076 このコロナ禍は秀でた、人材と民間や公的研究機関による総掛かりでしか脱せない

医療ガバナンス学会 (2021年4月23日 06:00)


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伊沢二郎

2021年4月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

「今言うことか、全く役に立たない」

4月8日NHKの報道は、政府アドバイザリーボード座長でもある感染研:脇田隆字所長による、イギリス株の国内感染の実行再生産数が1.32であるとの調査報告を伝えた。

感染スピードが早いと言われる、この変異株についてイギリスの議会で報告があったのは昨年12月14日のことだ。この時既に感染はかなり広がっていることが懸念されていた。

このコロナ禍は世界同時のパンデミックだが昨年一時期、日本の水際が水浸し状態であったことを、一番良く知っていたはずの感染研であるのに、イギリスの報告から遅れること4ヶ月、感染研はこれ迄一体何をしてきたのだ。

イギリス型ウィルスが80%を占めると云う大阪・兵庫の感染者。只今、大火事真っ只中だ、ぼうぼう燃え盛る現場で、「これから類焼するスピードは1.32です」などと言われたら誰もが、怒り出すことでしょう。
火事場なら“ばか力”を期待したいところだが、全くの期待外れだ。もっと早くにイギリス株の蔓延が把握され情報が提供されていれば、緊急事態の解除は別の形になっていただろうに。

ついでに言うと、感染研の令和3年度予算は41億円増の106億円、人員は倍増の716名です。因みにこの有り様を巷では“焼け太り”と言うらしい。

この方4月3日にも、大阪と東京のコロナ変異株の感染経緯が異なることの見立てを述べ、夕刊フジがこれを“新説”と見出を打った。
その内容は概ね、大阪と兵庫は従来型ウィルス感染者を減らし過ぎた為にそれに代わりイギリス型が広がった。一方東京は従来型感染者が下げ止まっていたので、変異株の広がりは大阪程でない、と言うことです。

一見それらしく聞こえるが、近頃は素人でもこの程度では納得しない。捉えようによっては、まるで従来型が善玉ウィルスの様に聞こえる。
案の定、著名な専門家のお二方が異義を述べられた。

それでも出来るだけこの“新説?”の理解に努めるならば、東京は従来型が壁になって変異株の侵入を抑えている、とでも言いたいのか。
しかし東京医科歯科大学や昭和大学による感染者のゲノム解析では、変異株は半数に近いことを窺わせる、脇田所長の見立てのようにはなっていない。

大阪でのイギリス型蔓延スピードは想定外と言われる、それがこの型の特徴という理屈ですむことだろうか。少し前、5%程度のゲノム解析でも渡航歴がない人で、これが確認されたと云うことは、かなり前から市中感染は進んでいたのではないのか。

隣接する神戸市は独自にゲノム解析を進め、3月4日現在74人から変異株を発見している。大阪の解析が如何程か定かではないが、神戸市の影響を受けてゲノム解析数を上げた為、隠れていた変異株感染者が多く確認され、その結果が想定外の蔓延スピードとなって表れているのではないのか。

感染症ムラの人達が、ただの無症状者はPCR検査をしないと決めた結果、スーパースプレッダーも居るかも知れないウィルスキャリアが野放しになり、市中感染を繰り返す内にイギリス株も蔓延していった。
感染研は多くのゲノム解析をこなす能力も無いのに、これを牛耳っている内に気ずいたら、大阪は感染者の80%がイギリス株と云う事態に至った、これが我々市民の見立だ。

4月13日現在 感染者512,703人 重症者596人 死亡者9,477人。これが感染症ムラ、あなた達がやって来たコロナ対策の結果だ、訳の分からぬ見立ではない事実だ。

“新説?”だから、いちいちこの程度に目くじらを立てることはないのだが、一般のことならそうだろうが日本の感染症対策機関、その立場にしてその発言、笑っては過ごせない。

●イギリス株の首都圏への蔓延はどうか・E484K型蔓延と免疫逃避の影響はどうか・沖縄でも発見されたL452R型は日本人の免疫力が低下するのか・夏の感染ピーク前にワクチン接種出来るのか、等々心配は尽きない。
しかし最も心配なことは、国民に背を向ける“感染症ムラ”が引き続き日本のコロナ対策をリードすることだ・・・

3波と比べれば、自転車でも越えられそうな丘に見える1波であった。しかしこれさえ完璧には御せず2波・3波を招いた、日本の感染症対策を担うトップ機関にしては腕が悪すぎないか。

やるべき対策は先進国なら何処でもやっている、考える必要は無い。水際対策を完璧にやった上で、ウィルスキャリアになってしまう無症状の感染者を一人でも多く見つけ出し保護することだ。それが他をも守ることになる。

現状イギリス型変異株へのワクチン効果は言えるものの、南アフリカ株や免疫逃避する変異株への効果の先行きが定かでないとなると、今後もやるべき事は変わらない。
上手くやって効果を上げている東アジアの国々の例を出すまでもなく、身近な国内にも推進すべき実例があるではないか。どうやるか方法論のことだから、国柄や人口の多少は関係ない、やる気の問題だ。

こんなに明確で簡単な方法をやろうとしない、感染症ムラ中核である感染研の人員を倍にしたところで、国民の期待には応えられないだろう。しかも増員は主に、クラスター調査とコロナウィルスのゲノム解析に充てられると言う。
何れもこれから人員を募集し技術研修を行うのだろうが、ワクチン接種も遅々として進まないと言うのに、そんな余裕があるのか。

従来通り無症状感染者を野放しにして、クラスター対策を強化しても意味は無い、感染と隔離のいたちごっこだ。
そのくらいなら、何時でもセルフチェックが出来るよう、PCR検査キッドを安価にし、医療費控除の対象にでもしたら、より実が上がるだろう。

ゲノム解析をより早く多くやる事は喫緊の課題だ。その為には出来るだけ医療現場に近い所でやるべきで、国の助成で民間や大学病院の機能や環境をより向上させるべきだ。
この課題について報道や識者からの情報・見解を聞く限り、感染研の体勢を強化する理由は何も無い。

これ迄と変わらぬコロナ抑制対策を執るなら、このコロナ禍に焼け太りするなどは、納税者として大反対だ。

●感染研を中核に、これに関係する専門家や医系技官。この感染症ムラの人達は何故、国民の声に背を向け政治にも抗う・・・

お役所仕事とはよく言われるがこのコロナ禍、感染症ムラの人達が執り行う厚生行政が如何に国民と乖離しているか、又国民の期待にかなわないものかが大変良く分かった。

1波当初、我々がPCR検査を熱望する様を“PCR検査信仰”と揶揄したり、「PCR検査を抑えていることが、日本がこう言う状態に踏み止まっている」などと意味不明を言う御仁がいることを訝しく感じていた。
初めは歪んだテクノクラート、特権意識の現れくらいに思っていたが、これ程迄の犠牲者・健康被害・経済の低迷・生活困窮による自死、等々を招いていると云うのに、反省もせずやり方を変えようとしない感染症ムラの人達に憤りを感じる。

多くの批判を浴びても、ひたすらやり方を変えようとしない態度からは、守ろうとするのは国民の健康ではないようにしか見えない。
守ろうとするのは100億円を超える国家予算が付く、感染研を中核に据える感染症ムラか。その為には国民に背を向け、国民の公衆衛生を人質にとり、政治にも抗うと云うことか。
日本の感染症対策機関としての存在価値を維持するには、PCR検査にしろゲノム解析にしろ、何処でも誰でもがやりだしたら不都合と考えるのか。

国民はあなた達がやって来た事、やらなかった事を皆が知っている。感染症ムラのこれ迄を顧みると、迚も迚も今の事態をこなせる人達とは思えない。我々は我慢に我慢を重ねている、この際市民感情を代表して言わせて貰えるなら。
「一刻も早く自らの限界を知り、白旗を揚げて退場するならして欲しい、やる気も能力もない組織は弊害有るのみだ」と言いたい。
代わり得る人材や先端科学技術を担う大学研究機関・民間の研究所等で、十分に補えるだろう。そうしなければこの事態、到底乗り越えられるとは思えない。

東京の今がコロナ夏のピークの麓と見れば、4波は如何に大きいことか、考えるのも恐ろしい。
抜本的対策を打つなら麓にある今だ、新たな専門家集団により対策されることを切に願う次第です。

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