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Vol.075 常識に囚われないときわ会常磐病院、医学生の見学体験記

医療ガバナンス学会 (2021年4月22日 06:00)


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秋田大学医学部医学科5年
鈴木智也

2021年4月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

秋田大学医学部医学科5年の鈴木智也です。2021年3月の医学部4年の春休み、論文指導でお世話になっている乳腺外科医の尾崎章彦先生の職場、福島県いわき市にあるときわ会常磐病院を3日間見学しました。訪問前は正直、いわき市の地方病院の1つである、という認識しかありませんでした。それがこの3日間、多くの職員と話す中で常磐病院が地方では珍しく様々な活動に積極的に取り組み、そして職員に優しい地域に根づいた病院であることがわかりました。以下に、私の体験と職員の話も混じえ、なぜそのような病院だと感じたのか、紹介したいと思います。

医学生となって初めての病院見学で緊張した私を癒やしてくれたのが、職員食堂の美味しい料理でした。初日の朝はたまたま美味しかっただけ、と気持ちを押し込めていたのですが、続けて昼食と夕食も職員食堂でいただき、これは偶然ではなかったと感じました。朝と夜はバイキング形式で身体に優しいメニューが多かったです。私が食べたメニューは野菜炒め、麻婆豆腐やピーマンの肉詰めなど、どのメニューも工夫されているのがわかりました。昼は日替わり定食2種類、そのうち1種類は減塩食、更にラーメン、うどんやそばまで選べるだけでなく、麺の量、ご飯やおかずの量も選択可能でした。食堂にはピーク時間外でも職員が食べている様子が見られ、食堂には外国人スタッフもおり、元気がよく活気がある印象でした。先生方にご飯の美味しさについて伝えたところ、みな頷いていました。ここの職員は毎日こんなに美味しい料理を食べられるのかと羨ましく思いました。
ある先生曰く、「当直日すら食事が与えられない病院で勤務していたことがあるが、常磐病院ではいつでも美味しい食事が食べられるため、心にも余裕が生まれ、ストレスの少ない医療につながるよ」と言っておられました。あまりに感動したため、見学最終日にシェフに挨拶に行きました。シェフたちはなんとミャンマー人やタイ人でした。彼らは株式会社テンミール IWAKIの職員で、いわき市にある東日本国際大学の留学生や日本人と結婚したタイ人がいました。最後に食べた料理は本格タイ料理。まさか病院見学で本場の味を楽しめると思いませんでした。職員のお腹も心も満たす常磐病院の職員食堂、魅力的でした。

次は、素敵な宿泊施設と職員温泉についてです。一日目の前夜は到着が遅かったため、当直室に泊まらせてもらいました。その当直室がまるでビジネスホテルのようでした。ビジネスホテルに完備されている一般的な設備に加え、泊まった部屋にはプリンターやシュレッター、更に病院の最上階には職員用の温泉も完備されています。次の日からは、病院所有のときわ荘という施設を利用しました。これがまた驚くことに、高級温泉旅館のようでした先生らに伺ったところ、「このような施設に泊まれると気分転換になり、この病院に来たくなる」と言っていました。職員の心も身体も温める宿泊施設と職員温泉、魅力的です。

最後は、何故常磐病院に来たのか、という質問を出会った医師らに聞きました。一番多いのは、医師同士のつながりで紹介された縁ということでした。更に、震災後の福島の医療に貢献したいという思い、他の病院と比べて単身赴任が多くて心強いこと、看護師さんが優秀で同意書関連の書類仕事が少ないこと、待遇と福利厚生が良いことが多い印象でした。常磐病院は、医師が働きやすい環境を整えているように思えました。お会いした先生方からは、体育会系の雰囲気や言葉はなく、教育的で熱心にご指導してくださいました。例えば、乳腺外科の尾崎章彦先生の手術では実際に術野に入れてもらい、直接お手伝いさせていただき、乳腺の手術は意外と力がいることを体感しました。泌尿器では精巣捻転のコンサルは、何科でも当直で大事で珍しいから勉強になると言われ、緊急手術に呼んでいただき、手術の各段階一つ一つ丁寧に教えていただきました。医師には皆、余裕があるように見えました。医師が医師としての仕事に専念でき、プライベートや家庭との時間も作れる配慮のある常磐病院、魅力的です。

他にも素晴らしい活動があるようです。今回は訪問できませんでしたが、仮装訪問診療や基礎研究施設は、ホームページやユーチューブを見る限り、地方病院としては珍しい大変ユニークな活動であると思っています。次回、また機会があれば見てみたいと思っております。研究は基礎研究だけでなく、尾崎先生や多くの先生方が臨床と臨床研究を両立させ、その成果を世界へ積極的に発信しておりました。多忙な臨床業務に加え、自らが現場で得た知見を論文という形で発信する姿は、研究は大学病院で行うことが一般的と思っていた私の常識を変えました。自らが発表するだけでなく、私のように臨床研究に興味がある学生の指導まで積極的にしてくださいます。
更に、3月30日付けで常磐病院は臨床研修病院の指定を受けたようです。この記事を呼んでくださった医学生の皆さんにも是非、地方病院の常識に囚われず挑戦し続ける常磐病院への病院見学を検討していただきたいと思っております。私の場合、突然見学することとなってしまいました。それにも関わらず、快く受け入れくれ、宿泊施設や白衣等も準備してくださり、優しくしてくれた事務方の方々にも、感謝を申し上げたいです。この度は貴重な経験をさせてくださり、誠にありがとうございました。

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