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Vol.097 置きざりにされたままの診療所のコロナPCR行政検査、なぜ変異株は調べられないのか(続)

医療ガバナンス学会 (2021年5月22日 06:00)


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わだ内科クリニック
和田眞紀夫

2021年5月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

Vol.096 「置きざりにされたままの診療所のコロナPCR行政検査、なぜ変異株は調べられないのか」
http://medg.jp/mt/?p=10296

前記事の要旨:
「変異株の検査が行われているのは感染研(東京では健康安全研究センター)と一部の民間検査会社に提出された検体だけで、コロナ陽性例の40%の症例に限られている。コロナ陽性例の全例に変異株の検査を実施しなければ地域ごとの変異株の浸透状況を正確に把握することなどはできない。
受け手の検査会社はすでに検査体制を整えているのだから、このような民間の検査体制を利用できずにいることは宝の持ち腐れである。いまや感染研傘下の衛生研だけで検査を独占的に行う体制から脱却して、民間検査会社を広く活用してダイナミックな検査網を構築すべきだ。」

この記事の中でも、現在すでに変異株の検査を実施している大手の民間検査会社があることをご紹介したが、そのうちの一つである株式会社B社の担当者に直接事情を伺うことができた。担当者の説明によれば・・・
変異株の検査は現在はN501Y変異にのみ実施しているが、インド株などの他の変異についてもゲノム解析が進んでPCRの条件等が設定されれば検査が可能となる。検査方法はゲノム解析ではなくてPCRだが変異株を同時に調べるマルチプレックスPCR を実施しているわけではなく、PCR検査で陽性となった症例に対してだけ変異株検査をやり直している。このN501Y変異の検査は、国立感染症研究所(感染研)からの依頼により実施されていて、この追加の検査に対する検査料金は感染研から支払われているので、診療所に追加で請求することはない。感染研からの依頼で実施している検査なので当初は感染研にのみ結果を報告していたが、診療所からも検査結果を教えてほしいという要望が強くなり、ファックスで結果を知らせるようになったとのこと。

すなわち、変異株検査を実施している数少ない民間検査会社も、やはり感染研の依頼で変異株の検査を実施していたのだ。それならばなぜ感染研はすべての民間検査会社に変異株の検査を依頼しないのだろうか。感染研が国の傘下にある組織であることを考えると、一部の検査会社にだけ変異株を調べさせていることは、変異株の検査を依頼されていない検査会社を利用している診療所とその患者さんにしてみれば納得がいかない。

発注元が厚労省本体や都道府県であるならばまだ納得ができるところだが、感染研という一研究機関が研究費を使って実施していることに少なからず驚かされた。そもそも感染研はその名の通り研究を行う機関であるので、民間検査会社に依頼して得られた変異株検査結果も「研究目的」に使用するのが原則である。患者さんの検体を使った研究目的の検査なのだから、本来は患者さんにこのような検査をすることを告げて同意を得て行うべき検査である。ところが、同意どころか要望が出るまでは検査結果すら知らされていなかったというのだから、このような研究が裏でひそかに行なわれていたと思われても仕方がないやり方だ。

感染研は厚労省という国の傘下の組織なのだから、こういう研究検査を実施していることをつまびらかにして、すべての民間検査会社に検査の依頼をだすべきだったであろう。そして公費を使って行う検査である以上、検査結果はきちんと広く一般に公表して多くの研究者が利用できるようにすべきである。首都圏ばかりでなくいまや日本の隅々まで変異株の侵入を食い止めようと努力している状況を考えると、変異株検査ももはや感染研が行っているような中途半端な形でなくて、都道府県が主導するきちんとした形で実施していくことが望ましい。N501Y変異ばかりではなく、さらに危険なインド株に対する検査体制を早急に確立させなければいけないことは言うまでもない。

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