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Vol.163 保健所主導から医師主導への変換 -早期発見早期治療の必要性-

医療ガバナンス学会 (2021年8月25日 15:00)


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某保健所長

2021年8月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

今新型コロナウイルス感染症対策は保健所が主導している。感染者が出ると保健所に発生届が出され、保健所が入院とか自宅/ホテル療養とか決めている。そして、そのやり方は完全に機能不全となっている。

自宅/ホテル療養とは?療養という名前がついているが、現実は隔離だ。自宅/ホテルに隔離しているだけで、治療しているわけではない。ただ隔離しているだけなので、この中から悪化する感染者が必ず出てくる。そして、悪化してから入院。このようにただ隔離されて悪化した患者は、既に重症となっており、対策は限られてくる。硬くなった肺は人工呼吸器が必要、全身に回ってしまった炎症だから全身管理も必須。したがって、非常に手がかかり、入院期間も長くなる。抗凝固療法やECMOの出番となれば尚更だ。その結果、重症患者がベッドを占め、ベッドは空かず、次を入院させることが困難となり重症者が増えても対応できない悪循環に繋がっている。ベッドを増やそうとしても重症者に対応できる医療スタッフは限られているため、ベッドは増えない。また仮に増やせても、今の感染爆発ではすぐに足りなくなるだろう。これは、保健所が主導いている今の新型コロナウイルス感染症対策が重症者対策に主眼が置かれているためだ。

少し考えてみると、このやり方はとてもおかしなやり方だ。しかし、そのおかしさに気づかず、誰も変えようとはしない。

新型コロナウイルス感染症は、文字通りウイルス感染である。ウイルスが感染し、体内で増殖し、全身に炎症反応が波及して重症化し、死の危険がせまる。

ならば、ウイルスが感染し増殖するときに抗ウイルス薬を使って体内のウイルスをやっつければいい。全身に炎症が及ばないように、炎症を抑える薬を早期に投与すればいい。ウイルスが増えきった後に抗ウイルス薬を使っても無効なのは自明だ。全身で炎症が燃え盛る状況に至っての対応は困難極まりない。早期発見早期治療、つまり重症化させない治療が最重要だ。

それにはどうすれば良いか?答えは簡単。保健所主導から医師主導に戻せばいい。戻す?普通の病気は医師主導だ。最初に診た医師が検査、診断、治療に責任を持つ、これは普通に行われていることだ。早期発見早期治療のためには医師主導でなければならない。今のようにただ保健所が機械的に判断し、重症化したら入院というやり方を変えなければならない。重症者中心の対策ではなく、早期発見早期治療後の自宅療養ではない自宅治療にしなければならない。そうすれば、重症化する症例は格段に減る。

そのためには、病診連携に保健所を加えた病診保連携。更には市町村と一体となった連携が必須だ。

今新型コロナウイルス感染症は災害なみと言われている。災害時は保健所だけで対応できるわけではない。地域の医療機関や市町村、保健所の連携は必須だ。この新型コロナウイルス感染症への対応は医療が主体となる災害だ。早期発見早期治療が肝となる災害だ。であれば、医師主導でいかなければならない。そして、保健所や市町村と情報共有し、役割分担をしっかりしなければ到底乗り切れるものではない。保健所は疫学調査や濃厚接触者対策などの本来の公衆衛生対策に集中するべきだ。

早期発見早期治療後に自宅治療となった患者へは頻回に医師が電話すれば良い、オンライン診療ができればもっと良いだろう(電話だけでも診療報酬請求可能)。治療もせずに自宅に隔離された患者に防護服を着ていきなり往診に行けと言われれば、多くは躊躇するだろう。悪化しないよう治療した後の自宅治療の患者に電話でもOKとすれば、参画する診療所の敷居が下がるはずだ。そして、悪化兆候が見られれば、すぐに入院できる体制。入院と言うよりも、一晩様子を診るベッドの確保。そのような体制こそが今すぐに求められている。

注:今回は、変異株に置き換わった後の保健所の変更すべき対策や早期発見早期治療の具体的な内容に関しては割愛した。それぞれ大きなテーマであり、機会が許されれば改めて詳述したい。

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