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Vol.187 島根県隠岐の島を訪ねて

医療ガバナンス学会 (2021年9月29日 06:00)


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鹿児島県立楠隼高等学校2年
大塚海征

2021年9月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

1.自己紹介

私は神奈川県横浜市出身で中学1年生のときから鹿児島県の大隅半島にある楠隼中学校・高校に通っている高校2年生の大塚海征と申します。私は将来、過疎地域の救急医療に携わって多くの人々の命を救いたいと考えています。私の志望している島根大学医学部では救急医療を専門に扱う「高度外傷センター」という施設があり、そこでは日本でも導入の少ない、救急医療に関する機械や、救急医療専門の医師や看護師などのスタッフによって、日本屈指の救急医療体制が整っています。今回私は、高校2年生の春休みを利用して、島根大学医学部のある出雲キャンパスや入試の一環として行われる実習先として希望している隠岐病院と隠岐島前病院を見学しました。隠岐病院のある隠岐の島は私の祖父が生誕した場所でもあり、親戚の方に隠岐の島を案内していただくことができました。
2.隠岐の島の医療における問題点

今回の隠岐の島での旅行を通して、医療的な目線に立ってみると多くの問題点がありました。そこで、今回は特に重要だと思った点を3つ挙げ、それに対する自分なりに考えた解決策を示すことで、少しでも多くの人に地方の医療の問題点と解決策として挙げられることを知ってほしいと思い、寄稿させていただきました。

(1)私が隠岐の島における問題点と感じたのは移動手段が限られていることです。この問題は私の住んでいる大隅半島も抱える大きな問題なのですが、隠岐の島や大隅半島のように鉄道が走っていない地域では移動手段は車がほとんどです。私が夏休みや冬休みに地元の神奈川県に帰った時も感じることなのですが、都市では鉄道を利用することが多く、駅を降りた後目的地に行くまでに徒歩で行く距離が田舎よりはるかに長いです。特に東京に限っては、乗り換えでさえも階段を上っても、上っても目的のホームにたどり着かない、なんてことがざらです。
一方で田舎は職場に行くにも学校に行くにも全部自動車なので、ほとんど動かないためか、私の学校の先生方も肥満気味な方が多くいらっしゃいます。そこで自分なりに解決策を考えた結果、ある解決策が思い浮かびました。それは職場の駐車場を少なくして、週に2回は歩いて出勤する日を作り、多少の遅刻を許して、ゆっくりのんびり景色を楽しみながら歩いてきてもらうといった運動を促すような制度を作り、住民に働きかける方法です。この方法では住民自ら健康に対する意識や普段気づかない地元の自然に触れる機会を創出することができます。さらに住民自身が自らの健康状態を気にかけ、食生活や睡眠時間、といった運動以外の生活習慣に対しても意識を向けることができたならば、日本人の死因の3割を占めるといわれている、がん、心臓病、脳卒中といった生活習慣病の予防にもつながるのではないでしょうか。

(2)隠岐の島の問題点その2は、島の中のコミュニティーが非常に狭いということです。食事をしに食堂などに入ると、ある客間では、地元の学校教師の一団が打ち上げで盛り上がっていたり、はたまたもう一つの客間では、病院関係者と思われる集団が食事をしていたり、職場というコミュニティーをプライベートまで引きずる傾向があるように感じました。これは私の住む大隅半島にもある傾向です。こうしたコミュニティーの独立化は人間関係の悪化を助長することにもなりかねません。これは、こころの健康に非常に大きなダメージを与えてしまうのです。近年減少傾向にある日本の年間自殺者数ですが、新型コロナウイルスの感染拡大で増加に転じている現在、自殺の原因として最も多いのは相談できずに孤立し、一人で思い悩み、自殺をしてしまうケースです。解決策としては、職場、学校といったコミュニティーの垣根を越えた、交流の場を作ることが有効だと思います。学校行事に地域のあらゆる年代の人々を招待したり、職場に地域の学生を迎え入れたりして、異世代間の交流を図り、学校同士の交流や勤め人世代が集まる健康増進を目的とした施設を作ることで、同世代間の交流も行うことができます。

(3)最後に挙げる隠岐の島の問題点は隠岐の島のクリニックや医院といった地域の医療を支える医療機関の少なさです。この問題は私の隠岐の島に住む親戚が感じる問題点なのですが、隠岐の島には児童精神科や更年期障害に対する専門外来がなく、親戚は飛行機に乗り、松江や出雲の専門外来に通っていたそうです。これは素人である私にも深刻な事態と言わざるを得ません。この問題はもともといた医師の高齢化に端を発した問題で、医師不足が原因です。私なりに考えた解決策は医師の中にも絶対に存在する、都会に疲れ、地方へと移住することを考えている人々に隠岐の島の魅力を伝えて隠岐の島で開業してもらうという方策です。昨今の社会情勢が故に、地方へと移住することを希望する人々が非常に増えてきているので、東京で説明会を開いたりして医師への働きかけを行うことが有効だと考えています。

3.結論
インフラが十分に整っていない地域特有の医療の問題点はインフラが十分に整っていないことで起こる健康問題や医師不足、他の地域との交流が少ないことで生じる、こころの健康問題など、多岐にわたります。私は将来、地域医療に従事したいと思うので、大隅半島という過疎地域に住む医療を志す者として大隅半島と隠岐の島の医療問題についてさらに深く掘り下げていきたいと思います。

稚拙な文章ですが、最後まで読んでいただきありがとうございました。また、投稿に協力してくださった医療ガバナンス研究所の上先生はじめ研究所の皆様に感謝を申し上げたいと思います。有難うございました。

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