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臨時vol 16 高久通信 「たばこをめぐる最近の話題 」

医療ガバナンス学会 (2006年5月31日 13:13)


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2006年5月31日発行


たばこが様々な疾患を起こすことは疑いのない事実である。世界保健機構

(WHO)が提唱した『たばこ枠組み条約』を我が国も批准し、たばこの広告・販
売に対して様々な制約が加えられるようになった。

また、たばこの値段が1本に付き1円上がることが最近決まった。それでも欧
米諸国に比べると、我が国のたばこの値段はまだまだ安価であり、未成年者の喫
煙を防ぐためにはもっとたばこの値段を上げる必要があるという意見が多い。

妊娠中の女性の喫煙の胎児に対する悪影響については数多くの報告があり、喫
煙が不妊、子宮外妊娠、自然流産の原因となることが知られているが、妊娠初期
の喫煙によって手指や足指の先天性異常の確率が高まることが、最近報告された
※1。
調査を行ったのはアメリカのペンシルバニア大学の研究者で、2001年から2002
年にかけて生まれた680万人の新生児の記録を調べ、5,171例の新生児で手足の指
の異常(数が5指以上、融合、欠損)を認めている。このような指の先天性異常
の原因の検索の過程で、彼らは妊婦の喫煙と指の異常との間に密接な関係があり
1日の喫煙量が多いほどその確率が増加すること、すなわち1日10本で29%、11
本から20本で38%、21本以上では78%も異常の危険度が上昇することを報告して
いる。

胎児の手足の指は妊娠4週目くらいからつくられ始めるので、この時期の喫煙
が特に指の異常を起こしやすいということになる。厄介なことに、この時期では
妊婦はいまだ自分が妊娠していることに気付いていないことが多い。すなわち子
供が欲しい女性は、速やかに禁煙すべきことをこの報告が示しているといえよう。
妊娠と喫煙に関するもう一つの報告は妊婦の喫煙と新生児の体重との関係につ
いての研究である※2。この研究を行ったのは同じくアメリカのバーモント大学
の産婦人科の医師たちで、妊娠後期の喫煙が新生児の体重減少をもたらすことを
報告している。彼らの調査では、1日に喫煙するたばこの本数が1本増加するご
とに新生児の体重が27g減少するという結果であった。新生児の低体重に影響す
る因子としては、もちろん出産時の妊娠月数、妊婦の肥満度、胎児の数など、様
々なものがあるが、その一つとして喫煙が加わったことをご紹介したい。

喫煙を巡るその他の話題として、2004年にレストランを含めたすべての勤務場
所を禁煙としたアイルランドやアメリカのモンタナ州ヘレナ市で、心筋梗塞患者
数の明らかな低下が見られたと報告されていることを挙げたい。すべての勤務場
所での禁煙の励行は、間接喫煙の防止を意味している。

※1 Man, LX., et al. Plast Reconstr Surg. 117:301, 2006
※2 Bernstein, IM., et al. Obst.Gynecol. 106:986, 2005

■著者紹介
高久 史麿(たかく ふみまろ)
自治医科大学内科教授、東京大学医学部第三内科教授、国立病院医療センター院
長、国立国際医療センター総長を歴任後、平成7年5月東京大学名誉教授、平成
8年4月から現職(自治医科大学 学長、日本医学会 会長)

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