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Vol.22069 頑張れ助産院4―岐阜県周産期医療協議会でのローカル・ルールの改善策

医療ガバナンス学会 (2022年3月30日 06:00)


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井上法律事務所 弁護士
井上清成

2022年3月30日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

1.妊婦救急搬送フローの改善

この3月に、岐阜県周産期医療協議会では、「妊婦救急搬送マニュアル」の一部改定を行った。それは、厚労省の通知や見解に必ずしも沿っていないローカル・ルールを改めて、厚労省の通知や見解によりよく適合するようにしたものと評してよい。
ところで、筆者自身としては、本稿は「頑張れ助産院」シリーズの第4作目である。今回は、この岐阜県周産期医療協議会によるローカル・ルールの改善の法的テクニックを紹介したい。
全国各地で同趣旨の内容のローカル・ルールがあると聞いているが、この岐阜県の実例を参考にして是非とも改善してもらいたいところである。
2.ローカル・ルールの一例

岐阜県周産期医療協議会で定められていた「妊婦救急搬送フロー」には、かつては、次のような注書きが添えられていた。
「かかりつけ医が助産師の場合は、救急隊から搬送連絡を受けた後、助産師が嘱託医療機関の医師に連絡し、嘱託医師が判断を行うものとする。」
しかしながら、その注書きは、必ずしも厚労省の通知や見解の趣旨に沿っていない。
そもそも平成25年8月30日付けの「助産所、嘱託医師等並びに地域の病院及び診療所の間における連携について」と題する厚労省通知では、「医療法第19条及び医療法施行規則第15条の2の規定により、助産所の開設者は、分娩時等の異常に対応するため、嘱託医師等を定めておかなければならないとされている。この規定については、緊急時等他の病院又は診療所に搬送する必要がある際にも、必ず嘱託医師等を経由しなければならないという趣旨ではなく、実際の分娩時等の異常の際には、妊産婦及び新生児の安全を第一義に、適宜適切な病院又は診療所への搬送及び受入れが行われるべきものであるから、関係者においては、この考え方に基づいて適切に対応されたい。」と明示されていた。また、現時点での厚労省の見解も、「嘱託を受けたことのみをもって、嘱託医師等が新たな義務を負うことがないとされており、緊急の場合は、開業助産院から普段搬送している三次周産期医療機関へ直接搬送してもらえばよい。」という趣旨のものであるらしい。
こういう次第であるから、救急搬送の場合も必ず嘱託医療機関又は嘱託医を通さなければならないというローカル・ルールは、厚労省の通知や見解に必ずしもフィットしていないのである。(ところが、全国各地で同様のローカル・ルールが今もって存在していることからして、厚労省の通知や見解が結構、知られていないらしい。つまり、厚労省の平成25年通知が普及していないのである。そういう実情であるから、厚労省としては普及のため、再び同様の通知を発出するとよいであろう。)
3.岐阜県での改善策

さて、このことに気付いた岐阜県周産期医療協議会では、「妊婦救急搬送フロー」中の「医師※が『緊急且つ高度な医療』が必要と判断」の「医師※」につき、注書きで、「かかりつけ医機能を有する医療機関が助産所の場合は、助産師と読み替える。」などという趣旨のものに修正したのであった。
この修正により、助産院(助産師)の判断で、直接に三次周産期医療機関に救急搬送できるようになったのである。(もちろん、三次周産期医療機関が昔のローカル・ルールにこだわって、搬送を拒否するのならば、それは直ちに応招義務違反〔医師法第19条第1項〕となるであろう。)
以上のようにして、岐阜県では、「妊婦救急搬送フロー」の一文を修正するだけで、旧来のローカル・ルールを改善させたのである。巧みな法文のテクニックと言えよう。
全国各地の同様のローカル・ルールについても、岐阜県の手法を参考にして、改善が図られることが望まれる。

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